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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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花咲百合 その一

 私が帰宅した時には家に撫子がいなかった。てっきり私を待ち構えているのだろうと思っていたのだけれど、そんな事は無く私の取り越し苦労だったようだ。

 このまま撫子が返ってこなければいいなと思ってみたけれど、そんな事は当然あり得ないことで、私がゆっくりする間もなく突然撫子が帰ってきた。


「お姉ちゃんにサプライズを用意しました」

「あ、朝に言ってたやつかな?」

「そうそう、そんなわけだから一緒に行こうね」

「どこに行くの?」

「すぐそこだよ。外で待ってるからさ」


 その言葉を聞いて思ったことは、きっと外に出たら前田君がいるんだろうなということだった。いつも以上に嬉しそうな撫子の様子から簡単に察することが出来るのは私が撫子の姉だからではなく、撫子の朝の発言と今の嬉しそうな顔を見れば誰でもわかることだった。

 実際に外に出ようと思って玄関から顔を出してみると、私の予想通りそこには前田君が立っていた。隣に可愛らしい女の人が立っているけど誰なんだろう?

 女の人は多分前田君の彼女だと思うんだけど、前田君に彼女がいるとしたら撫子があんなにニコニコしているはずもないだろうし、いったい誰なのか気になって仕方ない。そんな事はさておき、とりあえず前田君には謝っておこう。前田君が家に遊びに来た時も私が謝るところから始まっていたような気がするな。


「あの、妹が迷惑をかけたみたいでごめんなさい。それじゃ、私はここで失礼します」

「ちょっとお姉ちゃん。私が迷惑をかけたってどういう意味よ。それに、挨拶だけして帰るなんて失礼だと思わないの?」

「そんなこと言ったって、ここまで前田君たちを連れてきた撫子ちゃんの方が失礼だと思うけど」

「何言っているのよ。私のどこが失礼だっていうのよ。お姉ちゃんだって先輩に会いたいって言ってたじゃない。私はそんなお姉ちゃんのために先輩を家まで連れてきたんだからね。お姉ちゃんは私にとやかく言う前にお礼を言うべきなんじゃないのかな?」

「そんな、私は前田君に迷惑かけたくないって言ってるじゃない。それに、今は前田君も女の子と一緒にいるみたいだし、私にかまっている時間なんて無いんじゃないかな」

「もう、お姉ちゃんってどうしてそんな感じなのかな?」

「撫子ちゃんも私の話を聞いてくれないじゃない」

「わかったわよ。私は先輩の彼女さんとちょっと話があるからお姉ちゃんは先輩と昔話でもしてなよ。昔話って言っても桃太郎とかそういうのはやめてよね。先輩の自称彼女さんちょっといいですか?」


 前田君と一緒にいる人はやっぱり前田君の彼女だったみたいだ。それにしては前田君に彼女がいるのに撫子の様子がおかしい気がする。ちゃんと見たら前田君の彼女の方が撫子より可愛くも見えるんだけど、自分よりかわいい女の子を認めない撫子がこんなに嬉しそうにしているのは絶対に変だ。

 もしかしたら、私の知らないところで撫子は心を入れ替えているのかもしれない。自分より可愛い子がいるということを理解したのだろう。今もこうして前田君の彼女と楽しそうに話している撫子が普通の女子にさえ見ていた。

 でも、私が前田君に会いたいって言った記憶は無いけれど、これを否定して面倒くさい撫子に戻られても困るので肯定しておくことにしよう。でも、言ってはいないだけで前田君に会いたいなとは時々思っていたのは事実なのだ。


 撫子は前田君の彼女を連れて庭の方へと向かっていったのだ。私達も玄関前でいつまでも立ち話をしているわけにもいかないし、どこかいいところへ移動しようかなと考えてみた。

 私は前田君との会話に邪魔が入ってほしくないと思ってしまって、出来るだけ撫子たちから離れたいと思った。思った結果、家から少し離れた場所にある公園に向かうことにした。公園ならベンチもあるので座りながら会話も出来るだろう。前田君は私の意見に賛同してくれた。いつも否定されることの多い私はこんな些細な事も嬉しかったりする。


 久しぶりに会った前田君と何の話をすればいいのだろうか?

 私はいつもの癖で会話の初めが謝罪になってしまうんだろうなと思った。その事は我ながら面白いなと思ってしまった。


「あの、今日も妹が迷惑をかけたみたいでごめんなさい。私が何を言ってもあの子は昔から聞いてくれなくて、この前もそんな感じだったし、ごめんなさい」

「いや、それは良いんだけど。花咲さんは元気そうでよかったよ。あれから変わったことは無かったかな?」

「私は特に。前田君は?」

「僕もそんなには、彼女が出来たくらいかな」

「一緒に来た人だよね?」

「うん、そうだよ」

「よかった。前田君にお似合いな彼女だと思うよ。話したことは無いけど、なんとなくそう思うよ」

「そう言ってもらえてよかった。花咲さんはどうなの?」

「私は全然だよ。男の子とこうして話すことも無いし、最後にちゃんとこうして話したのも前田君だったような気がしてるくらいだしね。でも、彼氏は欲しいなって思うこともあるんだけど、私にはあの妹がいるからそれは難しいかもしれないな」

「花咲さんは大変だね。ちょっと言いにくいけれど、僕は花咲さんの妹さんって少し苦手なんだよね。ちょっと、強引っていうか思い込みが激しい感じがね」

「他の人から見てもやっぱりそう見えるよね。撫子は良い子なんだけど、一つの事に執着すると周りが見えなくなってしまうというか、他の事を気にしなくなっちゃうんだよね。それで前田君にもたくさん迷惑をかけてしまったし、ごめんなさいね」

「済んだことだし気にしなくていいよ。僕もあの時はちょっと困ったけど、今となっては済んだ話だからね。それに、花咲さんの意外な面も見れて良かったと思うよ」

「そう、それならよかった。実はね、前田君に会いたいなって時々思ってたんだよね。あ、でも、付き合いたいとかそういうのじゃないからさ。前田君ならわかってくれると思うけど、私って友達が少ないんだよね。それで、ちゃんと話が出来る前田君に会いたいなって思いが口から出ちゃってたみたいで、それを聞いた撫子が無理やり前田君を連れてきちゃったのかもしれないんだ。私のせいで迷惑をかけてしまってごめんなさい」

「いや、別に会いたいんだったらそう言ってくれたらいいんだけど、僕で良いんだったら喜んで来るからさ。でも、彼女を優先させてもらうから毎回ってわけにはいかないと思うけどね」

「うん、それは大丈夫。前田君が優しい人だって知っているし、撫子だって本当は良い子なんだよ。ちょっと強引すぎたところもあるけど、こうして私を前田君に会わせてくれたしね。よかったらなんだけど、彼女さんも一緒に遊びに行けたりしたら嬉しいな」

「そうだね。そのあたりもみさきに聞いてみるよ。たぶん、みさきも嫌な顔はしないと思うからさ」

「ありがと。でもね、本当に空いている時でいいんだからね。私も前田君に迷惑かけたくないからさ」

「気にしなくていいんだよ。花咲さんは他の女子となんか違うし、妹さんもアレが無ければいい子だと思うからね」

「そうなのよね。撫子はちょっとアレなだけで良い子なんだよね」


 本当は撫子の事をいい子だなんて思ってはいないんだけど、きっとそれは前田君も感じ取ってくれているはずだ。

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