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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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少女と歩く 佐藤みさきの場合

 私はすぐにでも帰りたかったんだけど、まー君とこの女がずっと何かを話しているので帰るに帰ることが出来なかった。まー君を見届けたら家に帰って電話する予定だったのに、これじゃあ私の予定が狂っちゃうよね。

 それでも、私の知らないまー君の昔の話が聞けるのはちょっと嬉しいかも。出来ることならまー君から直接聞きたかったけど、まー君はそういう人じゃないんであまり期待できないかもな。


「あ、お姉ちゃんがすぐ近くまで来てるみたいなんで、一緒に迎えに行きましょうよ。先輩の彼女さんも一緒に来てみたらいいんじゃないですか」

「そうだね。みさきも一緒に行こうよ。大丈夫、何も心配することは無いんだからさ」

「まー君がそう言うなら一緒に行こうかな。私もどんな人か気になるからね」


 何もないとは信じているんだけど、私が直接確かめてあげる必要があるかもしれないよね。まー君も大丈夫って言っているんだから問題ないと思うんだけど、少しだけ気になってしまっているし、このままだと今夜はゆっくり眠れなくなりそうだからね。

 それにしても、なんでこんなことになったのかなって思っていたけれど、今日はまー君に内緒で会いに来てよかったな。会いに来なければまー君がこの女に一人であっていた可能性があるんだからね。あれ、様子を見るだけの予定だった気がしているけど、それはどうでもいいか。


 私達は特に話すことも無く無言で女の後をついていた。さっきからまー君が私を見てくれていないことが気になっていたけれど、こんな時はあえて何も言わずに待っていることも大事なんだ。これからどこまで歩かされるか心配になってきたけど、どんどんまー君の家から遠くなっているないったいどこまで歩かされるんだろう?


 まー君の家よりも私の家の方が近くなったのだけれど、それでもまだこの女は足を止めようとしない。近くまで来ているというのはいったい何だったんだろうと思っていたら、まー君の様子が少しだけおかしくなっていた。お腹でも痛くなったのかなと思っていたけれど、その割には歩く速さは変わっていなかった。心配になって話しかけようと思っていたけれど、なんとなく話しかけにくい雰囲気になっているんだよね。こんな事なら、もっと早く話しかけていればよかったな。


「ちょっと待っててくださいね。お姉ちゃんを呼んできますから。お二人はここで待っててくれていいですからね」


 そう言って女は知らない家に入っていった。見た目が可愛らしい割と新し目なその家の表札は「花咲」と書かれていた。さっきまー君が言っていた人の苗字と一緒だけど、あの女は結局家まで連れてきたという事じゃない。すぐ近くまで来ているって何だったのよ。

 私は心が広いから気にしないんだけど、それでも少しイライラが残ってしまうよね。まー君はさっきよりも体調が悪そうに見えるんだけど、大丈夫かな?


「ねえ、まー君は体調悪そうに見えるけど大丈夫かな?」

「う、うん。大丈夫だけど、ちょっと嫌な事を思い出してしまってさ。ここまでくる道を歩いていて段々思い出してきたんだよ。普段ってこの道を通らないようにしていたんだけど、その理由がわからなかったんだよね。でもさ、あの子の後を歩いている時に、小さいころに言われた事を思い出してさ。みさきがこの話を信じるかはわからないけど、この辺りって新興住宅地として人が増えていたんだけど、それって僕たちが小さいころに急に始まったって知ってたかな?」

「私の家から割と近いから家が建っていく様子を時々見に来てたけど、そんなにこの辺って家があった印象なかったかも。今はこうして家が多くあるんだけど、あの奥の方って自然が残っているんだよね。それって、あの辺りに昔は何かの研究施設があったっていう話なんだよ。その研究施設で行われていたのが、戦争で使う予定だった兵器って噂なんだよね」

「へえ、私はそんな話を聞いたことなかったんだけど、それって有名な話なのかな?」

「唯の友達の美春ちゃんって子が言ってたんだけど、あの森の中は良くないことが起きるかもしれないから近付いちゃダメなんだって」


 まー君の口から昔の事を聞けるのは嬉しいんだけど、また知らない女の話か。でも、唯ちゃんの友達なら変な事はないよね。まー君も妹の友達には何の感情も無かっただろうしね。


「そうなんだ。私のお姉ちゃんがあの森でクワガタを取ってきたことがあったけど、あんまり変わったことは無かったと思うよ。人に寄るのかもしれなけど、まー君がそう言うならあんまり近付かないようにするね」

「そうだね。この辺に来る用事もないと思うし、意識してないとここまで来ることも無いよね」

「うん、今度の休みは二人でどこかにお出かけしようか。ちょっと遠いけど、隣町の水族館に行くのはどうかな?」

「隣に水族館なんてあったっけ?」

「水族館と言えるほどじゃないんだけど、大きいペットショップがあるからそこのアクアリウムが綺麗なんだよね。小さいころに行ってて水族館だと思い込んでたんだ。それで、今でもあそこを水族館って言っちゃうんだよね」

「なんだか、みさきの昔の話を聞けて嬉しいな。次の休みはそこに行ってみようね」


 私もまー君の話が聞けて嬉しいんだけど、出来ることなら女の子の出てこない話がいいんだけどね。

 そんな事を思っていると、家のドアが開いてさっきの女が出てきた。

 その後ろに隠れるようにして知らない女が出てきたんだけど、きっとこの女がお姉ちゃんなんだろう。私達とは別の制服を着ている高校生なんだけど、一目見て感じるような特徴も無い普通の女子高生にしか思えなかった。

 ちらっと見たまー君の横顔はいつもと変わらない普通の表情をしていた。

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