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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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克己 前田正樹の場合

 誰とも会わない予定の休みだったけれど、今日は雨が降っているので家から出る事も無いし、家族以外とは会わないまま一日が終わっていくと思っていた。唯はみさきと遊びたがっているようだけど、今から急に家に呼ぶのも悪い気がしているし、家族もみんな揃っているのでお互いに気まずい感じになってしまいそうだと思った。そんなわけだから今日は部屋に籠って読んでいない本でも読んでおくことにしよう。


 松本先輩に借りていた本を読んでいるのだけれど、途中で話のテイストが変わってしまったけれど、おおむね俺の読書欲の充足をはかることが出来た。勧められた本を読み終わるとすぐに感想を言いたくなるのは仕方ないと思うのだけど、休みの日にいきなり連絡をしてもいいのだろうか。少し迷ったけれど、間を取ってメッセージを送る事にした。本の感想を送ったのだけれど、なかなかの長文になってしまったのでめんどくさい系の人になってしまったかもしれない。


 メッセージを送ってから返事が来るまではそれなりに時間が空いていたのだけれど、松本先輩も俺が勧めた本を読んでくれていたらしい。松本先輩に勧められた本を受け取った時にたまたま持っていただけの本ではあるのだけれど、シリーズ物の四巻目だったので最初からまとめて貸したのだけれど、俺が一冊読むくらいの時間で松本先輩は四冊を読み終わったみたいだった。


 お互いに勧めたい本は他にもあるのだけれど、もうすぐ夕方から夜になるという時間でもあるし、明日はみさきと遊ぶ約束をしているので時間も無いし、月曜になったらでもいいかと思っていたんだけど、みさきと会う前に少しだけ会って本を交換する事になった。みさきに連絡しておいた方がいいかと思ったんだけど、そこまでは必要ないとも思っていた。だけど、黙って女性と会うのも気が引けてしまうのでみさきにメッセージを送っておいた。返事は一瞬で返ってきた。


 翌日、時々窓にたたきつけられる風の音で目が覚めると、天気は良いのだけれど時々突風が吹いているようで、風が窓を叩く音が少し心を不安にさせていた。


「お兄ちゃんって今日はデートなんだよね?」

「そうだけど」

「唯もついて行っていいかな?」

「ダメだろ」


 約束の時間が近付いてきていたので家を出る準備をしていたのだけれど、いつにもまして唯がやたらと絡んできていた。


「ねえ、帰ってくるのは遅くなるのかな?」

「わからないけど、暗くなる前には帰ってくると思うよ」

「そっか、お兄ちゃんはみさき先輩とのデートを楽しんでくると思うけど、唯は一人でお兄ちゃんの帰りを待っている事になるんだね」

「母さんも父さんも家にいるだろ」

「もう、わかってくれないならいいよ。行ってきますのキスをしていいからね」

「そんなことした事無いだろ」


 最近は家に居る時に絡まれている時間が長くなっている気がするし、この前は俺の部屋に入ろうとしていたので止めたのだけれど、そのうちもっと面倒な事をしてきそうで怖い。少しずつでもガス抜きは必要なのかと思って外に出ると、登校時のようにみさきがそこで待っていた。


「あれ、約束の時間ってまだだよね?」

「うん、でもね。会いたくて来ちゃった」

「ああ、俺も会いたかったけど、今日は松本先輩に本を借りる約束してるんだよね」

「そう言えばそうだったね。じゃあ、本の受け渡しの時は邪魔にならないようにどこかに行っておくね」


 そういう問題ではないと思うのだけれど、みさきはよほど俺に会いたかったのだろう。そんなところも可愛いと思ってしまった。


「ねえ、デートの前に彼女以外の女と会うのってどういう気分なのかな?」

「そうだな。今日の場合だと、どんな本を貸してくれるのかな? って感じかな」

「まー君は意外と読書家だよね。私はそんなにたくさんは読めないんだけど、そんなにお勧めがあるなら私も一冊読んでみようかな」


 俺が勧める本はそれなりに面白いのばかりなんだけど、みさきが普段読まないようなラブコメを勧めてみよう。俺もラブコメをそんなに読む方ではないのだけれど、何となく買った本は意外と面白かった。ついつい原作を追っかけていたのだけれど、アニメ化も決まったらしい。最初から知っていたわけではないのだけれど、好きで読んでいた作品がこのようにアニメ化するところに立ち会えるとは思いもしなかった。


「松本先輩との約束まで三十分くらいあるけれど、みさきは何かしたいことあるかな?」

「とくには無いけど、操先輩が来る前にちょっとあそこのお店を見てこようと思うんだ。だから、本の貸し借りが終わったらあのお店にきてね」


 みさきはそう言ってからお店の中へと入っていった。あの店は女性向けの小物とかアクセサリーが充実しているので、男一人ではなかなかに入りづらい。こんな事なら唯も連れてくればよかったと思ったけれど、そうなると話はややこしくなってしまうので諦めよう。


 約束の時間までまだニ十分くらいあるのだけれど、松本先輩は待ち合わせ場所にやって来た。お互いに軽く挨拶をしてから本を渡して受け取ったのだけれど、会っていた時間はほんの数分程度だった。俺が貸した本を大事そうに抱えて帰っていく松本先輩を見ていると、勧めた俺も少しだけ嬉しくなってしまった。


 そのままみさきのい店に向かったのだけど、なぜか窓越しにみさきと目が合っていた。何かいいものでもあるのかと思って店の中に入ろうとすると、みさきが先に外に出てきた。俺はこの店に入らなくて済んだ用だけれど、みさきは楽しめたのだろうか?


 突風に上着を煽られながらも、次はどこに行こうかと思っていると、みさきが珍しく次に行きたい場所の提案をしてきた。


「あのね、今日は天気はいいけど風が強いじゃない?」

「この風はうっとおしいよね」

「それで、ちょっと休憩できる良い場所があるんだけど、そこに行ってみないかな?」

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