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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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新しい場所 佐藤みさきの場合

 私は雨が嫌いだった。風情があるとか雨音が心地よいとかそう言ったモノは何となくはわかっていても、私自身が良いと感じることは無かった。

 それに、今は雨の日だとまー君と一緒にいても近付けないのが一番の障害だと思う。近付いているだけで何をするわけでもないのだけれど、近くにいればそれだけまー君を感じられると思うので良いのである。

 最近は他の人に邪魔されたりする事が多かったので、少しは気を使ってもらいたいなと思っていた。放課後は気を使ってもらっているように思えるけれど、部活や委員会が忙しいだけではないのかと思ってしまう。実際はそうなのだろうが、愛ちゃん先輩ならそんな事を平気でやってしまいそうなのだけれど、さすがにそこまではしないと信じたい。


「今日は何か用事があるのかな?」

「とくには無いけど、何かしたいことあるのかな?」


 まー君は他の男子と違ってあんまり人に干渉するのが好きじゃないみたいで、私に対しても距離を感じることが時々あった。私の発言や行動は尊重してくれているみたいだけど、その全てを肯定しているわけではないのだ。

 そんなわけで、今日はこの前見つけた喫茶店にいてみたいと思っていたのだ。


「あのね、今日は一緒に喫茶店に行ってみたいんだけど、ダメかな?」

「良いけど、この前行ったところかな?」

「ううん、違うところ。いつもの店ではちょっと聞かれたくない事もあるからさ」

「そうなのか。どこがいいのかな?」

「まー君の家の近くにあるところはどうかな?」

「俺は行ったこと無いんだけど、良さそうな感じだとは思うよ」


  まー君の家の近所だからって行った事があるとは限らないんだよね。出来る事ならその店の状況やセールスポイントが教えてもらえたらよかったんだけど、行った事が無いなら仕方ないよね。


「あ、ごめん。一旦財布取りに戻っていいかな?」

「いいよ。私は外で待ってるね」


 高校生活にお札は必要無いし、小銭があれば十分だったようだ。私も普段なら小銭入れくらいしか持ち歩かないのだけれど、今日は起きた瞬間からまー君と過ごすことを決めていたので、ちゃんと財布も持ってきていた。

 唯ちゃんやまー君のお母さんは捕まってしまったが最後、何も出来ずに一日が終わってしまいそうだ。


 私は堂々と入り口の前で待っていたのだけれど、唯ちゃんにもお母さんにも合うことは無かった。

 そのまままー君は出てきてくれたのだけれど、私服ではなく制服のままであった。私服も見たかったような気がするけれど、今日は財布を取って来ただけの時間しかなかったようであった。


 二人で歩いているけれど、二人っきりの時は無言の時間の方が長いような気がしていた。そのまま少しだけ歩いていると、行ってみたかった喫茶店に着いた。

 私達は促されるまま席について注文をしていた。初めての店はコーヒーだと苦いかもしれないのでココアを頼むことが多いのだけれど、家でもそんなに飲まないのに、急に気になるとソレだけになるのが面白かったりする。


「お兄さんたちはあそこの高校生かい?」

「はい、そうです」

「そうか、じゃあ、学割で同じのなら二杯までおかわりしていいからね」

「そうなんですか。ありがとうございます」


 美味しいコーヒーを淹れるには技術と経験が必要なんだろうけど、このお店はその両方を兼ね備えていると思う。歴史を感じさせる調度品の他に現代的なモノも置いてあって、何かを訓練しているといった感じではないのだ。


「それでね、まー君に聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

「俺がわかる事だったらなんでも答えるよ」


 まー君と巨乳軍団の構成員が一緒に撮った写真を探しているのだけれど、そうそう見つかるものではないのかもしれない。もし見つかったとしても今のテンションで開けるのが正解ではないかと思っていた。


「あのね、まー君の周りってさ、最初の頃に比べてさ、女の子一杯になったよね」

「ああ、最初は田中くらいしか話す相手もいなかったけど、みさきと付き合ってからは話す女子が増えたかもな」

「それでね、気になったんだけど、良いかな?」

「何かな?」


 私も気にはなっていたんだけれど偶然なんだと思う事にした。偶然集結してしまって、その転送先がまー君ってことなのかな?


「まー君の周りって、私とアリス先輩以外は皆胸が大きいんだけど、それはどう思うかな?」


 お胸の話になると、自然と視線は下がってしまうらしいのだけれど、まー君にはそれが無かった。多少は見てくれてもいいんだけど、そんな事を言っていたらあのおっぱいで挟まれてしまうのかもしれない。私の場合は挟めるだけの技量が無いので、今回はそのままにしておこう。それにしても、このパズルは少し嫌な予感がしていたらしい。


「どう思うって言われても、別に何とも思わないけれど」

「本当に?」

「ああ。前も言ったと思うけど、胸の大きいのとか興味ないんだよね」

「そうなんだ、千尋に聞いてみたら、男子は胸の大きい人が好きだって言ってたから心配してたんだけど、まー君の事は信用してるからそんなこと無いって言っておいたのよ。でも、千尋は間違ったことを言わないから不安に思ってたのよね。まー君は本当に胸の大きさに興味ないのかな?」

「興味ないけど、あの人達みたいに大きかったら見ちゃうことはあると思うよ。田中みたいに露骨に注目したりはしないけれど、みさきだって大きい犬がいたら見ちゃうでしょ?」

「私は犬よりも猫が好きだけど、確かに大きい犬がいたら見ちゃうかもしれないわね」


 私はみんなの気持ちのすべてを理解しているわけじゃないのだけれど、それでも代返してあげようかと思っていたのだ。

 それにしても、ここの喫茶店は私が通っているところよりもコーヒーのこだわりが強いような気がする。私も何がいいのかどう違うのかもわからないので、まー君のおすすめを今度試してみたい気がしていた。

 しかし、まー君の周りに胸の大きい人が出没したのも偶然なのか必然なのかわからないけれど、私の胸が小さいのも何かに関係あるのかもしれない。関係ないのだったらせめて平均くらいの大きさにはしてもらいたお。

 それに、今回はいつもの喫茶店ではなく初めての喫茶店を選んだ。それは、マスターもお姉さまたちも知り合いなので、ちょっと聞かれた話に尾ひれがついて私の家族に伝わってしまう恐れがあるからだ。


「それでね、他の人に聞かれたくない話をするんだけど」

「さっきのじゃないの?」

「ええ、さっきのはただの確認なの」


 制服の襟がだらしなくなっている予感がして、軽く直していると、まー君が私に注目していた。最近はこうして見つめ合う機会も少なくなっているように感じているので、今日は少しいい機会になったかもしれない。

 いよいよ本題を切り出すことにしようかな。


「あのね、良いかな?」


 私はまー君を手招きで呼ぶと、まー君は身を乗り出して耳を私の方に向けていた。私は少し緊張しながらも、まー君の耳元で囁いてみる事にした。


「私はまー君とキスしてみたいの」

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