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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
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デートをしよう 前田正樹の場合

 久しぶりに雨が降っていたのだけれど、雨が降っていてもみさきは迎えに来てくれていた。愛華先輩も一緒のようだけど、今日は一段と機嫌が悪いようだった。雨の日は皆テンションが低いけれど、愛華先輩は一際テンションが低いようだ。

 俺はなるべく愛華先輩を見ないようにしながらみさきと会話を楽しんでいたんだけれど、不機嫌な愛華先輩は俺たちの会話に割り込んできた。


「みさきタンは雨の日でもこいつに会えるのが楽しみみたいだよね。私もこいつがいなかったら楽しいと思うんだけど、みさきタンはこいつがいないとダメなんだよな」

「もう、私も愛ちゃん先輩が好きだけど、まー君の方が大好きなんでごめんね」

「それはわかったから言わなくてもいいけど、どこがそんなに良いのさ?」

「ふふ、それは内緒だよ」


 皆傘をさしているから適度な距離をとっているのだけれど、時々ポジションを入れ替える愛華先輩の傘の水滴が俺に向かって飛んできていた。故意か偶然かわからないけれど、俺はそんな事は気にしないのでみさきは気付いていないようだった。

 今日は校門のところで身だしなみチェックはしていないようだったのだけれど、身だしなみチェックが必要な生徒はこの学校にはいないような気がしている。どちらかと言えば、身だしなみチェックよりも挨拶運動のように思えているけれど、後で守屋さんに聞いてみることにしようかな。


「ねえ、まー君は次の休みが晴れだったら何するの?」

「俺は特に決めてないけど、みさきはどうなの?」

「私はまー君と同じとこに行こうかと思ってるよ」

「それなら二人で楽しめる場所がいいよね」

「それでもいいけど、まー君が本当に行きたい場所でもいいんだよ」


 俺が本当に行きたい場所って言われても特に思い浮かばないんだけれど、最近行ってない動物園に行ってみようかと思っていた。動物園まで自転車で行くかバスで行くかでお昼をどうするかも変わってしまうかな。


「そうだな。動物園か博物館がいいかな」

「どっちもいいね。動物園ならお弁当作って持っていけるかも」

「みさきタンのお弁当食べたい」

「愛ちゃん先輩は私達の邪魔したいのかな?」

「そんなことは無いけど、私も動物は好きだよ」

「それは知ってるけど、それなら博物館にしようかな」

「私も一緒に行きたいのに」


 動物園でも博物館でも他の場所でもいいのだけれど、みさきは二人だけがいいみたいだし、どうにかして愛華先輩には遠慮してもらわないとな。


「愛華先輩って俺の事が好きなんですか?」

「はあ? お前は何を言っているのかな?」

「ちょっと、愛ちゃんはそういう目でまー君を見てないって言ってたよね?」

「こいつの事好きなわけ無いじゃん」

「その割には俺にちょっかいかけてきますよね?」

「それは意味が違うだろ。みさきタン以外に気持ちが揺れるか試してるだけだし」

「愛ちゃんがそんな事して何の意味があるのかな?」

「みさきタンのためにやってるだけで、私は何の感情も持ってないって」

「感情が無い割には俺に過剰なスキンシップをとってきません?」

「ただの挨拶だろ、こんなん普通だろ」

「愛ちゃんはそういう人じゃないと思ってたけど、お胸が大きいと頭の中が少なくなっちゃうのかな?」

「胸の大きさは関係ないって」

「私の前で大きな胸をまー君に押し付けたりしてたよね?」

「それもスキンシップで挨拶しただけだって」

「お胸の大きい人って私の恋の邪魔をしなきゃいけない決まりでもあるのかな?」

「そんな決まりはないけど、邪魔なんかしてないって」


 これ以上愛華先輩を責めるのはかわいそうな気もしてきたけれど、もう少し怒られてもいいんじゃないかって気もしている。どっちにしろ生徒玄関に入ったら喧嘩もおさまるだろうし、俺が心配する事でもないだろう。


「さあ、愛ちゃん先輩は三年生の教室に行くし、あとは二人っきりで休みの日の予定を立てようね」

「ごめんって。私が悪かったから機嫌直してよ」

「機嫌は悪くないけど、ちょっとだけ二人で予定たてさせてね」


 みさきはそのまま一年生の教室に向かって歩き出したんだけど、俺が立ち止まっている事に気付くと戻ってきて手を引いてくれた。愛華先輩を見てみると、ちょっと悲しそうな感じに見えたけれど、アリス先輩を見かけてそっちに向かった時にはいつもの元気な感じに戻っていた。


「ちょっと意地悪し過ぎたかな?」

「別にあれくらいならいいんじゃない?」

「あとで謝った方がいいかな?」

「謝らなくていいと思うよ。今日だって一緒に迎えに行くつもりじゃなかったし、いつも邪魔されてるからね。今日は私の教室でお昼一緒に食べる?」

「みさきの教室でもいいけど、文芸部の部室に行ってみない?」

「なんで文芸部なの?」

「この前話してた時に松本先輩が言ってたんだけど、お昼ご飯を二人で食べたいときは部室にきてくれたら席を外してくれるって」

「そうなの? 前から思っていたけど、松本先輩って凄く良い人よね。私は前から良い人だって思ってたよ」

「じゃあ、お昼休みに文芸部の部室に行こう」


 松本先輩にメッセージを送ってみると、二時間目の授業が終わった時に返事が来た。昼休みに文芸部の部室にいるから大丈夫、休み時間が終わる前に鍵をかけに行くからそれまでは自由にしてていい。それをみさきに伝えると、嬉しそうな顔で喜んでいるのがわかった。


「今日は二人っきりでご飯が食べられるね」

「なになに、今日は私とご飯食べてくれないの?」

「さやかなら一緒でもいいんだけど、今日はちょっとデートの話もしたいからごめんね」

「そっか、それならまた今度一緒に食べようね。前田君はちゃんとエスコートしてくれそうだし、デートの話も今度聞かせてね」

「そう言えばだけど、たまに校門でやってる身だしなみチェックって引っかかる人いるの?」

「私は今まで見たこと無いけど、お兄ちゃんも見たこと無いって言ってたと思うよ」

「やっぱりそうなんだ。もしかしたらだけど、アレって先生が生徒と挨拶するためにやってるんじゃない?」

「ああ、言われてみたらそうかもしれないね。あの先生って挨拶するの好きみたいだけど、その後に会話するのはあんまり好きじゃないみたいなんだよね」

「ねえ、さやかも一緒にまー君とデートする?」


 みさきの提案に俺と守屋さんは驚いたけれど、この話に関係ない田中が一番驚いているようだった。


「いやいや、デートの邪魔したくないから遠慮するよ」

「私はさやかなら一緒でも楽しいんじゃないかなって思ったんだけどさ」

「私も楽しいとは思うけど、デートの邪魔は良くないでしょ。それに、二人っきりになりたいって思ってるでしょ?」

「うん、二人っきりになりたいとは思うけど、さやかの顔を見てたら三人でも楽しそうだなって思ったんだよね」

「ああ、それならだけどさ、途中まで一緒にいて、ご飯食べたら二人っきりで過ごすってのはどうかな?」

「私はそれでもいいんだけど、まー君はどうかな?」

「俺はみさきがそれで良いなら大丈夫だよ」

「びっくりしちゃったけど、みさきが楽しめるなら私は途中までご一緒させてもらうよ」

「じゃあ、俺も一緒に行っていいかな?」


 二人の会話に田中が割り込んできたのだけれど、最初から決まってたことのように二人が綺麗に拒否をしていた。俺は田中がいてもそんなに変わらないと思うのだけれど、二人は田中の事がそんなに好きではないみたいだった。

 守屋さんが途中で帰る事を考えると、動物園は少し遠すぎるように思えるので、近場のどこかでデートするのがよさそうだった。週末から来週の中頃にかけて天気は良さそうなので、絶好のデート日和になりそうだと思った。

 近所の公園でもいいし、河川敷を歩いて海まで出かけるのもよさそうだ。二人が楽しめる場所を探すのも楽しそうだと俺は思った。松本先輩に相談してみるのもよさそうだと思ったけど、たぶんそんなにいい場所は教えてもらえなさそうだからやめておこう。

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