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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第一部 日常生活編
19/108

帰宅 前田正樹の場合

「そんな話よりもゲームをしようよ」


 今はそんな誰かわからないような人が死んだ話よりもゲームをする事の方が重要に思えていた。もしかしたら、みさきはその話が気になっているのかもしれないけれど、今ここで話し合ったとしても何もわからないし、想像の範疇を越えることもないだろう。

 つまり、この場合の正解は後日知っている人に話を聞くことだと思う。二人はそれでも気になっているみたいだけど、俺はそこまで興味を持てなかったので無理矢理にでも話を終わらせたかった。


「どのゲームしたいかな?」

「お兄ちゃんってこの話にあんまり興味ないのかな?」

「興味はあるけど、今ここで話したってなにもわからないじゃない」

「そりゃそうだけど、何かわかるかもしれないじゃん」

「まー君は心当たりがあったりするのかな?」

「その人達が知っているとしても教えてくれたりしないと思うけど、詳しく知ってる人ならみさきにも心当たりあるでしょ」


 みさきは少し考えているようだけど、そこまで考えなくてもパッと浮かびそうな気がするのにな。今年から赴任している先生以外は去年もいたんだし、先生達なら詳しく知ってそうだよな。教えてくれることは無いと思うけどさ。


「思い浮かぶのは去年もいた私のお姉ちゃんかな?」

「みさきのお姉さんも去年はいたと思うけど、それよりも確実に詳しく知っていそうな人たちがいるでしょ」

「誰だろ?」


 みさきは考え込んでいるようだけれど、このままだと答えは出てこないと思った。


「去年もいたって言ったら、先生達が思い浮かばないかな?」

「ああ、それは確かにそうかも。お姉ちゃんたちが知らない事でも先生達は確実に知っていると思うしね」

「じゃあ、それは明日聞くことにして、これからやるゲームを決めないとね」


「お兄ちゃんって誰かとゲームやるの好きだよね。友達じゃなくてネットの人達ともゲームやってるし、そんなに対戦って面白いの?」

「そうだな、本当は誰かと近くで対戦した方が面白いんだけど、近くにそんな友達いないし誰でもいいから戦うのは飽きないよね」

「みさき先輩、お兄ちゃんってゲーム強いから二対一で出来るやつがいいよね」


 唯もそこまでゲームが上手いわけじゃないし、みさきもさっきのを見る限りではゲームは得意でなないはずだ。どんなゲームがきても負けることは無いと思うけど、油断しないようにちゃんと誠実に戦うことにしよう。


「まー君、わかっちゃった」

「よくネットに出てたね」

「まとめサイトとか見て調べてみたの」

「で、どんな話なのかな?」

「話ってより、勝負するなら勝てる可能性が高いやつにしないとね」


 みさきは先ほどからスマホをいじっていたんだけど、唯が持ってきた事件の話じゃなくて初心者でも勝てるゲームを検索していたのか。そんなことをしても俺は負けることが無いと思うけれど。


「まー君が持っているゲームの中で、私達でも勝てそうなのはコレかな」


 みさきが選んだのはクイズゲームで単純な知識だと俺に勝ち目はないだろう。このゲームをいつ買ったのか覚えていないけれど、こういった時には必要なゲームだと思った。


「私とみさき先輩のチームとお兄ちゃん一人のチームで対戦だね」

「それでもいいんだけど、俺が二人分操作しないといけないのかな?」

「そんなことをしたらお兄ちゃんのチームの点数上がっちゃうからダメだよ」


 結構理不尽な話だとは思うけれど、チーム戦を提案してしまったのでそれを受け入れることにしよう。二人に勝てるかもしれないけれど、そこまで二人は知識が乏しいわけでもないので、その確率は低いだろう。


「じゃあ、私とみさき先輩のチームとお兄ちゃんのチームで登録するね」

「余った一人はCPUになるので、三チームでの戦いになるのか」

「お兄ちゃんは余裕みたいだけれど、こっちにはみさき先輩もいるんで負けないからね」

「まー君には悪いけれど、私も手加減とか出来ないから正々堂々と真剣に戦おうね」


 二対一の時点で正々堂々とはかけ離れているような気もしているけれど、俺は二人との戦いにそれなりに力を出すことになった。

 俺は二人に勝つためになるべく早く答えて点数を多く獲得していたのだけれど、対する二人は問題をじっくりと考えて確実に点を取る作戦に出ていた。俺はクイズも好きなんだけれど、ミスをせずに確実に点数を取られると勝てる見込みはなかった。


 一時間ほどゲームをした結果、俺の惨敗に終わっていた。


「お兄ちゃんも知識だけの闘いだと二人には勝てないわね」

「そうだね、まー君も頑張ったと思うけれど、私達二人は意外といいコンビになるのかもね」

「いやいや、クイズなのに二人で話しながら答えを探すのは反則でしょ」

「そんなルールは無いと思うけれど、私とみさき先輩の知識を足すとちょうどよかったみたい」

「唯ちゃんと二人でまー君を圧倒してしまってごめんなさい」


 二人のその感じに少しイライラが募っていたけど、俺はゲームでむきになるのは恥ずかしい事だと思っているので抑えることにした。次はどのゲームを選ぶか俺に選択権があるはずだったのだけれど、母さんが帰ってきた事でゲームはいったん中止になった。


「あら、三人で仲良く遊んでいたのね」

「お母さんはどこに行っていたの?」

「晩御飯の食材が少なそうだったから買い足しに言っていたのよ」

「今日は何を作るの?」


 母さんがどこかに行っているとは思っていたけれど、晩御飯の食材を買い足しに行っているとは思わなかった。俺が見ている限りでも、母さんは計画的に物事を進めるのが上手で、失敗らしい失敗をしている姿を見たことが無かったからだ。

 唯が母さんの持っている袋をキッチンまで運んでいると、母さんがみさきに話しかけていた。


「正樹だけじゃなく唯とも仲良くしてくれているみたいでありがとうね」

「いえいえ、私も二人と遊んでいるのは楽しいですから」

「そのお礼じゃないんだけど、良かったら一緒に晩御飯食べていかないかしら?」


 母さんの提案にみさきは少し考えているようだったけれど、その答えはノーだった。


「お誘いは嬉しいのですが、今日は家族でご飯を食べに行く事になっているので気持ちだけ頂きます」

「あら、それは残念だわ。よかったら今度一緒に食べましょうね」

「はい、ぜひお願いします」


 キッチンから戻ってきた唯がみさきの手を握っていた。


「みさき先輩が良かったらいつでも遊びに来てくださいね。お兄ちゃんがいない時でも私は大丈夫ですから」

「ありがとうね、まー君がいない事は無いと思うけど遊ぼうね」


 クイズゲームで負けた俺は勝てるゲームを探していたのだけれど、時計を見ると夕飯の時間が近付いているようだった。


「今日はそろそろ帰ろうかな」

「もう帰っちゃうんですか?」

「うん、あんまり遅くなると約束の時間が過ぎちゃうしね」

「そっか、残念だけど仕方ないですよね」

「ごめんね。今度はゆっくり遊ぼうね」


 みさきが帰り支度をしていたので、俺はみさきの持っていた荷物を持つとそのまま一緒に玄関までついて行った。


「今日はお邪魔しました。また明日学校で会おうね」

「いや、家まで送っていくよ」

「え? 結構遠いから往復したら遅くなるし大丈夫だよ」

「家に誘ったのは俺だし、うちはこれから晩御飯作るみたいだから大丈夫だよ」

「うーん、そう言ってもらえると嬉しいし、お願いしようかな」


 俺がみさきを家まで送る事は唯も母さんも当然だと思っていたみたいだけれど、みさきだけはそうではないと思っているようだった。まだ暗くはなっていないけれど、何かあったら困る事になるし、家まで送る事に何の問題もないだろう。


「うちまでは少し遠いからまー君が帰るの遅くなると思うけど大丈夫?」

「自転車使うから大丈夫だよ。二人乗りは出来ないけれど、帰りは自転車使うからそんなに遅くならないと思うかな」

「そうなんだ。今度私も自転車で来たら少しだけ長く遊べるかもね」

「じゃあ、今度自転車でどこかに遊びに行こうか。行きたい場所とかあったら教えてね」


 俺はみさきのトートバックを自転車のかごに入れると、そのまま自転車を押しながらみさきの隣を歩いた。風は少しだけ強くなっていたけれど、歩くことの障害にはならない感じの強さだった。

 空は若干ではあるが日が傾いていて、上空を勢いよく雲が流れていた。


「自転車でどこかに行くのも楽しそうだと思うけれど、二人でゆっくり歩くのもいいかもね」

「そうだね、みさきはどこか行きたい場所見つかったかな?」

「行きたい場所はすぐには思い浮かばないけれど、したいことは思い浮かんだよ」

「どんな事?」

「あのね、まー君と手を繋いで歩きたいなって思ったの」


 その言葉を聞いて手を繋いでみようかと思って見たけれど、カゴに重い荷物を入れている自転車は片手で支えることが出来なかった。荷物が無くてもこの風だと少し難しそうではあったけれど。


「今日は色々とありがとうね。高校生になって一番嬉しい日になったよ」

「どういたしまして。明日から一番嬉しい日を更新していかないとね」

「そうだね。じゃあ、手を繋ぐ代わりにちょっとだけ繋がっていたいな」


 みさきは俺に少しだけ寄り掛かっていたのだけれど、少し大きい通りに出ると恥ずかしくなったのか、体から離れて歩いていた。


「さすがに人がいるとくっついて歩くのは恥ずかしいね」


 そう言いながらもみさきは俺の上着の裾を掴んでいた。


「これくらいなら恥ずかしくないよね」


 みさきは嬉しそうに俺の顔を見ていたのだが、夕日に照らされたからなのかいつもより顔が赤く感じていた。みさきの家まではもう少し時間がかかりそうだったので、俺はこの状況を大事に胸の奥へと刻み込むことにした。

 風は少し弱くなっていたのだけれど、上空を見上げると雲の流れる速さは相変わらずだった。

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