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ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒純愛  作者: 釧路太郎
第二部 二人だけの世界編
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変な小屋を見付けてしまった僕たち

 ここにこのままいてもみさきの男性恐怖症が治るとは思えないけれど、ここの集落は僕たちにとって居心地の良いモノだった。宿泊費に飲食代も温泉の入湯代も含まれているのでほとんどお金を使うことも無かったのだ。しいて言えば、時々買う自販機の飲み物くらいなのだが、僕は別に飲めれば何でもいいのであまりお金を使うことも無いのであった。さらに、この集落の人達はやたらと色々な物をプレゼントしてくれているということもあるので食べる物も飲み物も本当に困ることなんてないのだ。


 僕たちはまだ見ていない場所に何かあるのではないかと期待をしていたのだけれど、僕たちが望むようなものは特に見当たることは無かった。結構長い時間をかけて探してみたのだけれど、初日二日目と比べて何も見付けることは出来ず、本当にただ散歩してきただけで終わってしまったのだった。

 そうは言っても、緑に囲まれている場所を散歩するという経験はなかなか出来ないものなので気持ち良かったし、みさきと一緒に居られるという事も嬉しいことだった。


 何もない道をひたすら歩いている。みさきと一緒ならどんな場所でも楽しく過ごせるというものだ。だが、このままずっと歩いていても何もないような気さえしているのだけれど、結構歩いていることもあって今更引き返すのも違うような気もしてきた。

 やがて小高い丘を越えて少しだけ見晴らしのいい場所へとたどり着いたのだが、見晴らしがいいだけにこの先に何もないという事もわかってしまった。僕の隣にいるみさきは少し疲れているようだったので、いったんこの辺りで休憩をしようということになったのだ。


「結構歩いてたし、みさきは疲れてるよね?」

「うん、少しだけ疲れてきたかもしれない。でも、まだ大丈夫だよ」

「大丈夫でもさ、あんまり無理しないようにしないとね。みさきはお腹空いてる?」

「うーん、まだそこまで空いていないかも。まー君は空いてるの?」

「僕もあんまり空いてないかも。食べようともえば食べられるからさ、みさきが空いてたら食べようかなとは思ってたよ」

「そっか、今はまだお腹空いてないからもう少ししてから食べようね」

「そうだね。それにしてもさ、この道を真っすぐ行っても何も無さそうだよね。でも、ここに来る途中も脇道とかなかったし、このままもう少し行ってみる?」

「まー君が行きたい方で良いよ。それとも、あそこにある建物でも見に行ってみる?」

「建物?」


 僕はみさきが指をさしている方向を見て初めてそこに小屋があることに気が付いた。とても簡易的な造りで人が住んでいる様子はないのだけれど、何かをしまっておくには十分なように見えた。そんな物置のような建物だった。

 こんなところにあるのは不自然だと思うし、中に入って調べても良い事なんて何もないだろう。そう思っているのだけれど、今まで通り道を進んでいっても何もないだろうし、このまま引き返したとしてもただ散歩をしてきただけになってしまう。僕はそれでも良かったし、みさきもきっとそれでいいと思ってはいるだろう。でも、僕もみさきも上手く言葉にすることは出来ないが、目の前にある小屋を調べて見なくてはいけないという気持ちになってしまっていた。

 そして、僕はみさきと少しだけ距離を取って小屋に近付いていった。お弁当の持ったバスケットを両手で抱えて心配そうに見ているみさきを安心させるためにも、僕はその小屋の中に何があるのか確認することにした。物置のような小屋なので当然窓は無く、中を確かめるためにはドアを開けなくてはいけない。鍵がかかっていればそれまでなのだが、僕が引き戸に手をかけてからゆっくりと動かすと、ドアは僕が想像していたのと違ってスムーズに開いていった。

 開閉のスムーズさに思わず笑ってしまっていたのだけれど、中の様子を見てさらに笑いが出てしまった。


「どうしたの、何か変な物でもあったの?」

「いや、変な物しかないよ。何なんだろうね、ここで何をしているのか心配になっちゃうかも。大丈夫そうだけど、みさきも見に来る?」

「誰もいない?」

「うん、誰もいないよ。でもさ、中に入らないでここから見るだけにしようよ」


 僕はみさきの手を引いて小屋の前まで連れてきてあげた。小屋の中を見たみさきも思わず吹き出してしまったのだが、その光景を見てしまったら誰でも笑ってしまうに違いない。それくらい衝撃的な光景が僕たちの目に飛び込んできたのだ。

 おそらく、絵心のない中学生くらいの男の子が描いたのであろう女性の絵が壁一面に貼られているのだけれど、そのどれもが裸で直立不動なのだ。こんな絵を描くこと自体も謎なのだが、それを壁に貼るという行為にも何の意味があるのかわからなかった。ただ、その絵があまりにも下手すぎて僕たちは嫌らしいものを見ているという気持ちにはなれず、ただただ面白い光景を見てしまったと感じていた。


「ねえ、なんでこんなところに絵が貼ってあるの?」

「なんでだろうね。わざわざここに来て描いてたのかな?」

「どうだろう。でも、なんかここの絵って見覚えがあるような気がするのよね。なんでだろう?」

「僕は初めて見ると思うけど、そう言われれば何となく見たことがあるようにも思えてきたな」

「あ、もしかして、あの金髪の女の子の絵ってレベッカじゃない?」

「言われてみればそう見える気もするけど、金髪ってだけでそれ以外には共通点なくない?」

「いや、まー君は知らないと思うけど、レベッカの胸の下にあるホクロの位置が一緒だもん。絶対あれはレベッカだって」

「へえ、どこに胸があるのかわからないけど、確かにホクロみたいな点はあるね。でも、この絵を描いた人ってなんでそんな事を知ってるんだろう?」

「あ、よく見たら、この絵のモデルって集落の人達じゃないかな。何となく雰囲気がそれっぽい人ばっかりだよ」

「言われてみたらそうかもしれないけど、なんで集落の女の人ばっかりなんだろう?」

「なんでだろうね。それに、レベッカがいて私がいないって不思議かも」

「どうしてそう思うの?」

「だってさ、この絵の人達ってたぶん温泉に入ってるところだと思うんだよ。みんな笑顔で直立不動なのって子供が描いた絵だからだと思うんだよね。それと、温泉に入ってると思った理由は、みんな髪を下ろしてるからだよ。頭を洗った後だから髪がペターってなってるんじゃないかな」

「そう言われてみたらそうかもしれないね。あのおばさんもいつもは髪をあげてたと思うし。そうなると、みさきの絵もあるかもしれないね」

「私の絵があるかもしれないけど、何か探すのって嫌だな。気持ち悪くない?」

「確かに気持ち悪いと思うよ。でもさ、なんで写真とかじゃなくて絵なんだろうね?」

「それも気になるけどさ、なんで裸の絵ばっかり飾ってるんだろう。もしかして、誰かがお風呂を覗いてるって事なんじゃないかな?」

「それって大変な事だよね。とりあえず、この小屋の写真を撮っておいて温泉の人に相談しに行こうか。温泉の人達がこの絵を描いた人の仲間って可能性は低いと思うんだよね」

「なんでそう思うの?」

「だってさ、温泉の人が覗きとかするんだったら盗撮した方が早そうだと思ったんだよね。わざわざ自分でこんな絵を描く必要なんて無いと思うんだよ。それに、こんな絵を描いて興奮しているなんてとんだ変態だと思うんだ」

「確かに、そうかもしれないね。まー君の言う通りだと思うよ」


 僕たちが小屋の写真を何枚か撮っていると、誰かが走ってこちらに向かってくるような草むらをかき分ける音が聞こえてきた。僕はとっさにみさきと音の間に入ったのだが、僕たちの目の前に現れたのは変な男ではなく、どこか見覚えのある女の子だった。


「も、もしかして、中を見ちゃいました?」

「え、中って?」

「その小屋の中ですけど」

「うん、見たよ」

「私も見たけど、あなたはこれが何か知っているの?」

「いやあああああああああああああああああああああ」

「え、どうしたの?」


 僕とみさきも突然の出来事で慌ててはいたのだけれど、目の前に急に現れた女の子のあまりの狼狽ぶりにただただ戸惑うばかりであった。

 ただ、この小屋が何なのかこの女の子は知っているような感じだった。女の子が落ち着いたらどういうための小屋なのか聞いてみることにしよう。

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