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聖騎士と零の魔法の出会いは必然なのだろうか?  作者: 水城蒼空
始まりの草原
3/6

空がこんなにも澄んで青いのは

アドバイス感想くれると喜ぶ人です。

それをもとに努力します。よろしくお願いします!

 助けられたと自称しているミユウと言う女の子に、押し倒されている。

 正確にいうのであれば、つい数分前にファーストコンタクトをとったばかりの女の子に、押し倒された挙句抱き着かれている。


「な、なぁ。年齢、性別、職業、名前、とここに至った経緯を説明してくれ」

 どう考えても、俺はつい数刻前に殺されただけで、その前は、都内で高校背をしていただけ。

 だから当然、女の子を助けたこともなければ、あんな化け物のいる世界で引きこもり予備軍である俺が活躍できるとは思えない。

 俺の胸に顔を埋めこんでいたミユウが呼吸が当たる距離で笑った。

 押し倒されていた身体を起こすと、ミユウは俺の隣に座りなおした。

「一気に説明されても困っちゃうよ」

「じゃあ、順番にお願い」

 ミユウはクスリと小さく笑うと俺の肩に寄り添ってきた。

「じゃあ、うん。十六歳の女の子で、ミユウ……」

 この世界がどういう世界か解らないけれど、この女の子より、俺の方が一歳年上である。

 それから……

 ミユウは、風が優しく吹いた瞬間に黙り込んでしまった。

「大丈夫か?」

「えへへ、わたしね捨て子で盗人やってた。そしたら、捕まっちゃって生贄として魔王城に晒された」

 自分のことを「どうしようもないバカだよね」って悲しそうに笑って、鼻をすすったミユウは立ち上がって俺から数歩離れた位置で振り向いた。

 ミユウと会ってから気になっていたことがある。まだ、この世界の住人と会っていないけれど、それでもわかる一般人離れした美しい瞳、白銀に輝く美しい髪。

 そしてそれらとは似つかないボロボロの黒いワンピース。とはいってもただの布を被っているようにしか見えない見ずぼらしい服装。

 奴隷や、捨て子といったほうが正しい服装だが、その顔立ちは、王族や華族と言われても納得してしまう。

「ミユウ、無理してんのか?」

「っえ?」

「だから、今、俺に対して無理して笑ってんのか?」

 目の前で苦しんでいる人がいたら、手を差し伸べる善人なんて、俺はそんなにできた人間ではない。

 少しでもできていたら高校に友達が一人くらいはいたと思う。

 けれど、ミユウが変に笑っているのは気になった。

 自分を蔑んで笑うミユウの行動に悲しいと思った。

「な、何のことを言っているのかわかんない……よ……」

 ミユウは力なくその場に座り込んだ。青く光り輝く綺麗な瞳から一粒の涙がこぼれ落ちている。

 俺は知っている。何もない無力な自分という存在を。

 だから、特別な自分を信じて、何もない自分を笑い、仮想の己だけを信じていつか来る特別な自分に期待して待つだけの日々……。

 けれど、やっとであった特別な時間は呆気なく死んで今に至る。

 笑うしかない。くだらない自分という存在に。であるから……

「そうやって笑うやつ嫌いなんだよ……今みたいに泣く奴はもっと嫌いなんだよ……」

 良く知っているから、俺は自分が嫌いで、自分を蔑んで、そんな自分にあきらめて笑っている奴はこの上なく嫌い。だってそうだろ問題点が分かっているのに開き直る奴なんて、どう考えても自己中心的で、周りからしてみればただの迷惑だろうから。

「な、いて……泣いてないよ」

 腕で思いっきり目元を拭き、背を向けられた。

「ミユウみたいな奴、よく知ってんだよ。そんな生き方しかできない自分とそうさせた大きい奴らに対して、怒り、怒り怒り……そして何もできない自分が大っ嫌いな」

「違う……」

「どうしようもない自分を嫌っている奴の涙……辛かったな……わかるよ」

 ミユウは俺の言葉を聴くと涙が次から次ぎへと零れ落ちている。

 俺は今自分に対して思うことを言っただけ。

 それだけのことだが、俺と同じ目をしている奴に対して言ったセリフは考えてみれば、ただの恥さらしだ。

 自分に対して理解しないといけないことに他人を巻き込んで、かっこ悪。

 何もないただの草原。

 澄んだ青空と、新緑にもえる低い草木、そこに二人を見下ろす白い陽。

 俺はこの空間が在って良かったと思う。

 色鮮やかな世界があったら自分がみじめになると思うから……。

「ねぇ、ソラ。綺麗だね」

 初めて見たミユウの本物の笑顔。ブサイクだ。

 けれど、今まで見たミユウの表情(かお)の中で一番輝いて綺麗だ。一億の名画にだって負けていない。

「空なんて、いつでも見れるだろ」

「ううん。見れないよ」

「別に、見上げればいいだけだろ?」

 立ち上がって、空に向かって手を伸ばして見せる。

 空がこんなにも青く澄んで、この上なく綺麗に思えるのは、これから何度もあるとは思わないけれど、空の色々な姿はこれから見える。

「見上げても見えるのは岩石だけだよ」

「刑務所にでも入んのか?」

「あはは、違うよ。わたしたちイネプトレス(人間種)は空を見る権利がないんだよ」

 やはりここは俺が知っている日本、及びその世界ではないようだ。異世界に召喚されたとみて間違いなさそうだ。

 けれど、空を見る権利?

 イネプトレス……? 英語に近い言葉である。和製英語ではなさそうだし、この世界固有の言葉、その表現。

 読み方を英語に似せるとinept roceの二つを混ぜた感じだろうか?

 後者の言葉は前の言葉を前提に捻ったけれど、多分あっていると思う。レスだったら他の言葉もあるというのはごもっともだが、この二つだと、欠けると種族を合わせたものになりなんとなく意味は解る。

 もっとも、適切な単語が並んでいるとは思わない。

それに、意味だって最悪。この世界で人がどういう扱いがされているかわかる。

 ほかにも種族、知的生命体がいて見下される立場ってことだ。

「それって、どういうことだよ……?」

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