愛する人
(今日も学校を休んでしまった)
そう思い日根雪遊佐は重い体をベッドから起こし、窓の外を見た。
午前10時くらい、外では幼い子供が母親を連れて楽しく散歩をしていた。
その光景をしばらく微笑ましく見ていたがすぐに暗い顔をしてベッドに入った。次第に何十回目かわからない泣き声が聞こえてきた。
「夢香...」
彼は次第に、意識が遠のき又深い眠りにはいった。
日根雪遊佐には、愛する人がいる、いや"いた"の方が今は正しいだろう。
いつも一緒でまさに二人三脚で歩んでいた。
彼女の名前は、ニ戸田夢香。いつも元気でとても可愛い人だ。
夢香との出会いは至って普通である。同じ高校の二年生、クラスは同じではなかったが隣の組であったためすれ違う際などで顔を覚え挨拶する程度、その内たまに軽く話すなどをしていた。
ある日、遊佐が一人で帰っていたら目の前に夢香が見えた。彼女も気付いたのか、こちらに小走りで走ってきた。
「偶然だね!帰り道こっちなの?」
「うん、そうだよ」
そこから、自然に二人で他愛の無い話をしながら帰った。
その日がきっかけで、遊佐と夢香は一緒に帰ることがが多くなり次第に二人の距離は近くなった。
遊佐は、この時間が嫌ではなかっく、逆に心地よかった。それは夢香も一緒だった。
そこから二人が付き合うのは不思議ではなく、遊佐と夢香は、付き合ってからとても幸せな時間を過ごしていた。
あの日までは...
今日も学校があり、二人で登校するため夢香の家まで迎えに行っていた。
遊佐は、付き合ってからというもの学校に対しての憂鬱感がなくなっていた。家の前でいつも通りに夢香を待つ。
「今日は、どこか寄り道して帰ろうかな〜、そうだこの前できたケーキ屋に寄ろう。早く、放課後にならないかなぁ。」
そこにちょうど
「何言ってんの?遊佐。まだ今日は、始まったばかりじゃん」
と笑いながら家から出てくる夢香。付き合ってから呼び捨てで呼んでもらえることに少し嬉しさを感じてしまう遊佐。だってしょうがないじゃん。付き合いたての時は君付けだったし。いざ、夢香にお願いしてみると
「ゆ、ゆ、ゆうしゃ!」
「………」
て、噛むんだもんww
あの後、機嫌直してもらうまで結構時間かかったんだよ!そう追想していた遊佐に
「さ!行くよ」
と遊佐の隣に立ち手を繋ぐ夢香。この時、遊佐がにやけてたのはいうまでも無い。