ローンを組みました
「すみません。そんなにお金を持ってないです。」
「・・・よし。3000ゴールドに負けてやる。」
(いや、大して変わってないです。)
薬草は10ゴールドが相場だ。100ゴールドを出すと、それなりの食事もできる。3000ゴールドは学生には大金だ。確かに商品は魅力的だったが、学生がポンポン買える金額ではない。
「心配するな。学生はローンが使える。」
俺の心配を察したのか店員が言ってきた。
(ローン?確か後払いで金利を取られるやつだよな。よけい悪いじゃん)
「心配するな。学生のローンは金利0だ。」
「いえ。金利の前に3000ゴールドが無理です。」
「バイトをすれば、すぐたまるさ。」
(また変な単語が出てきた)
「バイト?。何ですか、それ」
「そうか、まだ知らないのか。学生になると、冒険者ギルドに登録できる。すると、依頼を受けることができるようになる。それで学生は金を稼ぐんだ。学費を稼いでいるやつも多いぞ。そうしないと、あんな装備は買えんだろ。うちの一番人気だ。」
といって、一本の剣を指さす。立派な剣が飾られている。
鋼の剣 10000ゴールド
と値札についている。
「心配するな。上手くすれば、明日の補講で3000ゴールドくらい稼げる。」
(補講で金が稼げる?何言ってんだ?)
半ば押し切られる形で、俺は購入することになる。しっかり、ローンの証書のサインをさせられる。確かに金利0%返済期間1年と書かれている。
「まあ、騙されたと思って、明日はさっき言った装備で行ってみろ。」
(さっき言ってた装備には弓矢があった気がする。剣術の補習なんだが・・・。)
カストールに買い物が終わったことを告げると、「待ちくたびれた」と一言言われ、外に出ていく。俺もカストールについていく。お腹が空いた。
となり食堂につくと、美味しそうなにおいがしてくる。二人とも席に着くと50ゴールドの学生定食を頼む。
「なあ、薬草を買うつもりできたんだろ。なんであんなに時間がかかったんだ?」
もっともな質問をされる。俺は事の顛末を説明する。
「なんだよそれ。騙されたんじゃないのか?3000ゴールドって。この定食の60倍の値段だぞ。」
カストールは笑いながら、いまきたばかりの定食を指さす。確かに晩飯60日分と考えると、すごい出費である。ただ、買ってしまった以上、店員の言葉を信じるしかない。
「まあ、なんだ。がんばれ。・・・っていうか、ここの定食旨い。」
といい、カストールは食事に夢中になる。
(こいつ、ぜんぜん心配してないな。)
まあ、物自体が悪い物でもなさそうだし、バイトができるなら頑張れば、1年で3000ゴールドなら返せるはずだ。「今更心配してもしかたない、」と思い、食事を口に運ぶ。
「・・・旨い。」
俺も夢中で食べ始める。おそらく俺もカストールもここの常連になりそうだ。カストールはお代わりを注文している。
(こいつ、まだ食うのか?)
俺は少しあきれ顔でカストールを見ると、あることに気づく。
「悪いけど、俺、先に帰るは。明日朝が早いし。」
「あ、そうか。俺はもうちょっと食べてから帰るわ。」
俺は席を立つと代金を支払う。ついでに持ち帰りようのパンがあったので、購入する。明日の朝食にいいと思ったからだ。帰路の途中に、入学受付で受け取った新入生のしおりのことを思い出す。帰って明日の準備をし、時間があれば、読んでおこうと思った。