購買所
購買所は学生課の横に併設されていた。さきほど、入学受付の時には気づかなかったが、かなりの大きさだ。店に入るとすごい種類の商品が置いてある。村の雑貨屋よりも種類がありそうだ。
文具用品や薬草類はもちろん、ロープやランプといった探索で役立ちそうな物、武器、防具などもある。使い道の分からない商品も多数おいてある。
「いらっしゃい。初めて見る顔だね。新入生かい?」
店員が声を掛けてきた。
「はい、ブレットといいます。」
「ブレット君か。丁寧にありがとう。品ぞろえにびっくりしただろう。今日は何を買いに来たんだい。」
カストールは「付き添いです。」と言って、中に入っていく。
「えっと、薬草がほしいんですが」
「薬草?誰か怪我かい?」
「いえ、明日の朝、補講を受けるんで念のために持っていこうと思って。」
「さっそく補講かい。入学式は明後日だろ。優秀なんだな。」
と言って、薬草を持ってくる。
(補講を受けるのに優秀?何言ってんだ?)
俺が疑問に思っていると、店員ははっとした顔をする。
「そうか。すまんすまん。意味がわからないよな。この学校では補講を受ける奴は向上心の高いやつばかりだからな。まあ、すぐに意味はわかるさ。」
と笑いながら肩を叩く。
「おわびだ。毒消しはプレゼントだ。他に何かいるかい。」
店員は尋ねてきたが、そもそも何をするかわからないので、何がいるのかもわからない。
「すみません。剣術の補講みたいなんですが、他に何を準備したほうがいいですか?」
「そうだな・・・。今年の新入生は学生寮だよな。薬草、毒消しは当たり前として、あとは水と食料、予備の武器もいるかもな。」
「水に食料?それに予備の武器ですか。」
「ああ。寮母はペコラさんだろ。あの人ならたぶん必要だ。普段何を使ってるんだ?」
(なんでペコラさんがでてくるんだ?)
「剣はショートソードです。弓の方が得意ですが。父の手伝いで狩りをしていたので。」
「弓がメインで、サブがショートソードか。狩りをしていたなら、解体用ナイフは持っているな。それなら、武器はその3つでいい。」
そう言うと、店員はぶつぶつとつぶやいている。何か考えているようだ。
「そうだ、収納魔法は持ってないよな。道具袋は持っているか。」
収納魔法とは持ち物を異空間にしまえることのできる生活魔法である。とても便利な魔法だが、使える人は少なく、使えてもLvが低いとあまり物が入らず使い道がない。実は俺は収納魔法Lv1を使うことができた。Lv1だと手さげポーチぐらいしか物が入らないのでほとんど使用していなかった。
「収納魔法はLv1なら使えます。道具袋は持ってないです。」
「何、使えるのか。すごいな。ちょっと待っていろ。」
というと、店員は奥に入って行く。しばらくすると、いくつかのアイテムを持って帰ってきた。
「いいか。収納魔法には薬草と毒消しと保存食と水を入れとけ。収納されている間は痛まない。そしてお前にぴったりの道具袋がこれだ。」
と言って、小さな道具袋を出す。
「本当は矢も収納魔法のほうがいいんだが、Lv1では無理だ。そこでこの道具袋だ。矢筒を装備しても邪魔にならずに背負える。」
なるほど、たしかにこの袋は便利そうだ。
「袋の中は2つに分かれている。小さい方はタオルとかを入れとけ。大きいほうには怪物の素材が入ることになる」
(・・・ん?怪物?)
「ほんとうは応急処置キットとか入れといたほうがいいが、あれは高いからな。」
「ということで、道具袋小と携帯食料2つと薬草2つで3120ゴールドだな。毒消し1つと水筒はおまけだ。」
いつの間にか携帯食料2つと薬草2つになってる。
それにしても3120ゴールドか・・・。