友に助けられた
もうすぐ時間だ。俺はアリエットの所に向かった。もうすぐ魔人と相対するのだ。突然、足が重くなった。これは恐怖、それともプレッシャー?師匠はすぐに俺の異変に気付いたみたいだ。
「ブレット、緊張するな。と言っても無理だな。大丈夫か。」
師匠に声を掛けられるが耳に入らない。まるで暗闇の中を歩いているようだった。足取りがどんどん重くなる。呼吸が苦しくなっていく。
「ブレット。終わったらお前とアリエットの婚約パーティーを開くからな。楽しみにしていろよ」
誰かの声が耳に入ってくる。・・・婚約パーティー?まだ、そこまで話は進んでないぞ。誰だ。そんなことを言う馬鹿は?少し視界が広がった。
見るとそこにはカストールが立っていた。いつもの面白がっている表情ではなく真剣な表情だ。
「おっ。緊張が解けたみたいだな。頑張れよ親友。」
カストールの言葉で緊張が解けていくことを自覚する。さすが持つべきものは親友だ。
「ああ。パーティー楽しみにしてるからな。」
俺が言い返すと、カストールは驚いていたが、「お前がそんなことを言えるようになるなんてびっくりだ。」と言い、笑顔で見送ってくれる。
カストールの横にはルナールがいた。
「アリエットのこと、よろしくお願いします。」
彼女はそういうと俺に敬礼する。俺は「ああ」と一言答えると敬礼を返す。
次はエーゼルが話しかけてきた。
「今回は君たちの盾にはなれなくてごめんね。次の冒険では一緒に行こうね。」
「その時は前衛任せたぞ。」
「うん」
俺はエーゼルと拳を合わせる。
「どうやら、今回は落ち着いてるみたいだね。」
メナートが話しかけてきた。
「あの時は悪かったな。手間をかけさせて。もう大丈夫だ。」
「そうみたいだね。お姫様の救出、頑張れよ。」
そして俺たちは握手をする。
この街に残っていた同級生は全員ここに来てくれていたようだ。イブー、リオン、アクィラ、アードラとも短く言葉を交わした。
「師匠、お待たせしてすみません。行きましょうか。」
俺の足取りは軽くなっていた。プレッシャーや不安を感じないわけではないが、小さくなっていた。そしてそれ以上にやる気、高揚感などを感じていた。
「お前、いい仲間にめぐりあえたな。」
「はい。」
俺は自信をもって答えた。
教団の館の地下に向かう階段まで来ると、凄まじい冷気を感じた。階段が凍りついている。前回来た時は会談は凍っていなかったはずだ。
「あの後、徐々に凍ってきた。この辺の氷は触っても問題ない。行くぞ。」
俺は師匠と一緒に階段を降りていく。地下に到着すると儀式の準備が整ってた。すでにチーニョ先生は来ていた。他にも10名の魔術師が待っていた。
「小僧、やっと来たね。どうやらプレッシャーに押し潰されなかったようだね。」
チーニョ先生だ。俺は師匠から精霊の短剣を受け取るとしっかり右手に持つ。そして、左のポケットの中にムートンさんがくれたポーションが二本あることを確認する。
俺は師匠の方を向いて頷く。準備は出来ている。覚悟も決まっている。
「よし。おさらいだ。まず、ブレットをアリエットの精神世界に送り込む。ブレットはアリエットと合流して、氷の封印を解く。封印を解いたら、どんどん魔人を弱体化していってくれ。外部班の半数は封印が解け次第、封印の魔法を使い再封印を行い、復活までの時間を稼ぐ。もう半数はアリエットとブレットの体の警護だ。いいな。」
全員が頷く。そして師匠が作戦開始を宣言した。




