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戦時体制

「チーニョ殿、確認したい。アリエットが死んだ場合、封印はどうなる。」

師匠が真剣な顔でチーニョ先生に尋ねる。

「相手が終末の魔人ならあっという間に封印を解いてでてくるだろうね。」

チーニョ先生は力なく答える。

「判った。これより、フィリップス伯の名において戦時体制を宣言する。敵は終末の魔人だ。これより討伐作戦を決行する。冒険者、および冒険者学校の職員、生徒は一時私の配下となる。」

師匠がどんどん周りに指示を出していく。王都への救援要請。街の全市民の緊急避難。終末の魔人討伐の準備などであった。

「いいか。市民の避難に当たって、騎士団の護衛は無理だ。学生に護衛の任を与えろ。カーネ、細かいことは頼む。」

「王都に救援要請をしろ。転移魔術師を使え。状況説明にはペコラお前がついて行け。あと、ルナルド・エルダーの娘が入学していたな。一緒に行って父親の説得をさせろ。」

ルナルド・エルダー。冒険者学校の卒業生で現近衛騎士団団長でルナールの父親だ。近衛騎士団は少数だが精鋭だ。来てくれると大きな戦力になるはずだ。

「魔術師たちは館を囲むように戦略的魔方陣の設置を急げ。」

「そして、ブレット。お前が一番重要だ。」

えっ。俺。

「お前はアリエットの精神世界に行って、封印ではなく魔人の分離弱体化をしてほしい。」

「分離弱体化ですか。」

「ああ、初代が魔人との戦いの最中に編み出しと言われている。」

「いや、俺には無理じゃないですか。魔法は苦手ですし。」

「大丈夫だ。初代も魔法は苦手だったそうだ。それにこれは魔法ではない。」

・・・魔法でない。

「精神世界に行って、魔人を切り刻んで小さくするだけだ。」

魔人を切り刻む?そんなことができるのか?

「待ちな。精神世界には武器は持ち込めないし、物理攻撃はほぼ効果がないよ。」

チーニョ先生が反論する。

「判っています。普通の武器は無理ですが、伯爵家には精霊の短剣という魔法武器があります。これは精神世界に持っていくことが可能です。」

「そんなもんを持っているのかい。だが、決定力に欠けるんじゃないのかい。」

「大丈夫ですよ。ブレットには魔力付与を仕込んでます。何とかなるはずです。」

「そういうことなら、いい方法がある。小僧、簡単な封印術を教える。切ったそばから封印していきな。」



タイムリミットまで1時間となった。そろそろ氷の棺を溶かさないとアリエットの命が尽きてしまう。

「ブラディボ、国王に話は通したけど、すぐには無理みたい。準備やらで少し時間が掛るそうよ。」

「伯爵様、父の説得には成功しました。精鋭100名を先発で率いていく、とのことですが、おそらくたどり着くには、後2時間は掛ると思われます。」

「ブラディボ、住民の避難は終わったわよ。生徒はそのまま住民と待機させているわ。現在、この街に残っている生徒は実力がF以上が20名程度よ。」

「魔方陣の設置は終わりました。いつでも結界、攻撃魔法、なんでも可能です。」

どんどん準備が整ってくる。騎士団、冒険者の配置も完了したようだ。俺の修業は・・・まだ続いている。

「この下手くそ。なんで、初級の封印魔法もおぼえれない。」

だんだんチーニョ先生の先生の言葉使いが荒くなってきている。

「うんとね。ブレット君は放出が苦手だから、できてないだけで?」

他の魔法の先生がフォローを入れてくれる。

「そうであることを祈るよ。小僧、ぶっつけ本番だけど、がんばるんだよ。」

そろそろ作戦開始時刻だ。俺はアリエットの元に行かないといけない。

「ブレット君、まだいるかい?」

この声はムートンさんだ。

「ムートンさん。どうしたんですか。」

「良かった。間に合ったね。とりあえず、マジックポーションを渡しておこう。精神世界では魔力がないと何もできないからね。」

そう言ってポーションを渡してくれる。俺はそのポーションを一気に飲み干す。

「あとね。このポーションも渡しておく。君とアリエット君の二人分だ。」

そう言って黄金に輝くポーションを二本手渡してくれた。

「このポーションは?」

「魔人が封印から解き放たれたら、間違いなく真横にいる君たちの肉体にダメージがいくからね。回復用ポーションだよ。前に言ったよね。腕ぐらいなら生やすことができるって。これはそのレベルのポーションだよ。飲んでもいいし、傷にふりかけても効果があるよ。」

そういえば、言っていたな。冗談かと思っていたが。本当だったとは。

「ありがとうございます。」

「気にしないで。僕にはこれくらいしかできないから。ブレット君、死なない様にね。」



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