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終末の魔人

「小僧、いいかい。まずは氷の封印魔法の解除の仕方だよ。これは簡単だ。精神世界にある結界の核を炎の魔法で溶かせばいい。」

 チーニョ先生の講義が始まった。

「炎の魔法ですか。アリエットは使えましたっけ?」

 確かアリエットは使えなかった気がする。使えるようになったのだろうか?

あの娘(アリエット)は氷の魔法以外使えないよ。小僧、お前が使うんだよ。」

「えっ、俺、火の矢(ファイアーアロー)も使えませんよ。」

「使えない?そんなはずないだろ。魔力はそこそこあるし、魔力を炎に転換するのは難しくないだろ。」

 俺は火の矢(ファイアーアロー)を使ってみせる。やっぱり、炎どころか煙も立たない。

「どうやら、魔力放出ができないみたいだね。・・・あんた、ブレットって名前だったね。」

「はい、そうです。」

「13点の子かい。」

 ・・・やっぱり魔法系の先生の中では俺の13点は有名なんだ。

「心配いらないよ。精神世界に行ったら、魔力を放出する必要はないからね。なにしろ肉体がないからね。魔力を火に変換し、念じるだけで魔法は放つことができるよ。次は封印魔法の練習だね。」

 封印魔法か。いままでに習おうと思ったこともない魔法だ。

「氷の封印魔法はかなりレベルの高い封印魔法でね。それと同レベルの封印魔法ってなると、小僧、お前が単独で使うのは難しい。あの娘(アリエット)とペアで使う封印魔法を教えるよ。」



「アリエットが封印した存在が判りました。」

 封印魔法の練習が始まってすぐ、教団の館を調べていた冒険者から連絡が入った。

あの娘(アリエット)は何を封印してるんだい。」

「それがですね。・・・おそらく終末の魔人ではないかと・・・。」

「終末の魔人だって。なんでそんなもんが。」

 チーニョ先生が声を荒げる。

「教団の施設から終末の魔人復活の計画書が出てきまして。魔人の核を手に入れた、と記載があったんですが、それが見つからないので・・・。」

「それであの娘(アリエット)が宿主にされたと・・・。もう一度施設中を探しな。」

 チーニョ先生は怒鳴ると、冒険者は慌てて引き返していく。


「小僧。もし、終末の魔人なら作戦は中止だよ。」

「なぜです。」

「簡単なことだよ。お前では再封印ができないからだよ。終末の魔人なら最上位の封印魔法でないと封印できない。お前には使えないだろう。」

 チーニョ先生は座り込むと俯いている。泣いているようだ。よほどアリエットを可愛がっていたんだろう。終末の魔人。名前は聞いたことがあるが神話の中だけだ。本当にいるのかどうかも怪しいはず。

「そんな魔人、本当に実在するんですか?」

 俺の質問にチーニョ先生は答えなかった。

「間違いなくいる。」

 答えたのは師匠だった。師匠の表情もかなり厳しいものだった。

「初代フィリップス伯が魔物に攫われた姫を救い出した、という話は知っているな。」

 この話は有名だ。この功績により冒険者だったパレッソは姫と結婚しフィリップス伯となる。

「実はな。この話は嘘だ。」

 えっ。嘘!どういうことだ。

「実際に姫をさらったのは人間だ。おそらく教団の基となった組織だろう。そして、この時も、姫を宿主として終末の魔人の復活が画策されていたんだ。」

 知らなかった。そんなことがあったのか。

「その時、初代フィリップス伯の手により魔人の核は国王に献上された。その後、国王は国の危機を未然に防ぐとして、魔人討伐作戦を実施した。当時の王国騎士団精鋭1000名、宮廷魔術師筆頭とその一門、当時の冒険者のS級約10名にA級50名。更には他国の勇者2名、大神殿の神官100名が参加したらしい。」

 そんな話、聞いたことがない。だいたい、その戦力なら小さな国なら征服できるはず。

「結果は散々だった。魔人は討伐できず再封印するしかなかった。こちらで生き残ったのは1割にも満たなかったらしい。戦場となった平原は現在、死の平原と呼ばれている。」

 1割にも満たなかったって、惨敗じゃないか。しかも、死の平原って怪物(モンスター)しか住んでいない魔境のことだよな。



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