攫われたアリエット
「ルナール。大丈夫か?」
俺は急いで下に降りるとルナールのところに行く。ルナールは壁にもたれ掛けて座り、お腹を押さえてうずくまっていた。
「私は大丈夫です。それよりも、アリエットを助けてください。」
「何があったんだ?」
「アリエットが何物かに襲われて、連れて行かれました。阻止しようとしましたが、不覚をとりました。」
「どんな奴だ?」
「灰色のフードを被った男です。街の中に入っていきました。」
俺はその言葉を聞くとすぐに追いかけていた。体が勝手に動いていた。街に入ると人々が普通に生活していた。
「すみません。灰色のフードを被って、女の子を抱えた男をみてないですか。」
俺は近くにいた人に聞いてみた。流石に人ひとりを抱えていたので目立ったようだ。
「そいつなら、向こうに行ったぞ。」
俺はお礼を言うと言われた方に走っていく。少し行ってまた尋ねる。
・・・
・・・・・・
すぐに目的地は判明した。街一番の商人の屋敷だ。目撃情報からアリエットがここに攫われたのは間違いない。だが、俺がここに侵入するのはまずい。間違いなく俺が侵入罪で捕まる。どうしよう。迷っていると後ろから声を掛けられた。
「ブレット君だったかな。どうしたんだい?」
振り向くと白髪の男が立っていた。どこかで見たことがあるが、思い出せない。誰だったっけ?
「えっと、どちら様ですか?」
「街の冒険者ギルドのギルド長だよ。先週、ギルドであったでしょう。あの時はごめんね。」
先週のギルド?・・・ああ、カーネさんに怒られて、減給された人か。
「ああ、あの時の」
ギルド長は一瞬顔をしかめる。辛い記憶のようだ。しかし、すぐに真剣な顔に戻る。
「で、何かあったのかい?」
「実は・・・」
俺はアリエットが攫われたことを伝える。
「うーん。それはまずいね。この屋敷は表向きは「商人の屋敷」ということになっているが、教団のアジトではないかという嫌疑がかけられていているんだ。それで儂が見張ってたんだ。」
「教団のアジト!それではアリエットは」
「落ち着け。表向きは商人の屋敷となっている。教団のアジトであるという証拠もない。屋敷に踏み込んで見つかったらお前が犯罪者だぞ。」
「ではどうしろと?」
こうしている間にもアリエットの身に危険が及んでいるかもしれない。そう思うと俺は気が気でなかった。
「落ち着け。今、言っただろ。見つかったら犯罪者だと。それなら、見つからなければいい。」
何を言っているのか分からなかった。いや、もしかして・・・。
「察したようだな。潜入や隠密のスキルは持っているかい?」
やっぱりそうだ。潜入するんだ。
「潜入スキルは持ってないです。隠密のスキルはLv3ですが。」
「できれば、潜入のスキルは必要なんだが・・・」
ギルド長が困っていると、不意に後ろから声を掛けられた。
「お困りのようだね。僕が力を貸すよ。」
振り返るとそこに立っていたのはメナートだった。金髪長身で街を歩くと非常に目立つ背格好なのだが・・・。
「君は潜入や隠密のスキルは持っているのかい?」
「ええ、潜入、隠密、気配遮断もLv4ありますよ。」
得意げに言っている。それにしても、潜入するにはすごい有用なスキルだ。
「確か、ブレット君は罠解除をブラディボに教わってたね。
「はい。Lv2ですが」
「それでは君たち二人で潜入するんだ。気を付けたまえ。ギルドは今のところ手助けできん。潜入して、アリエット君を探すんだ。後、教団のアジトである確たる証拠があったら、ギルドも動くことができる。見つけたら知らせてくれ。今、この館の中にいる人数は10名前後だ。儂らがずっと見張って確認しているから間違いない。」
こうして、アリエット救出作戦が始まった。




