補講のお知らせでした
ペコラさんが立ち去ると、生徒達はお互いに自己紹介を始めた。これから一緒に学ぶ仲間なので、早く親しくなっておきたかったからだ。
(そういえば、あの二人は)
と入学受付で見かけた金髪の少女と赤毛の少年を探す。エルダー家のご息女と思われる金髪の少女の周りには、すでに人だかりができていた。近づけそうにない。赤毛の巨漢の少年の周りも人だかりができている。
(またの機会にしよう)
おれは諦めて、他の新入生と友好を深めることにする。
俺は20人くらいの新入生と話したが、一人を除いて、全員平民出身だった。一人騎士の子供がいた。どうやらこの学校に入学する生徒は平民出身者が多いみたいだ。貴族や騎士で冒険者を目指す人は王立冒険者学校に入学するらしい。フィリップス冒険者学校は敬遠されるようだ。理由は簡単だった。訓練が厳しいからだ。例年100人が入学して、3年後の卒業時、わずか20人程になってるらしい。今年の合格者は50人なんだが、一体何人卒業できるんだ。
かなりの時間が経ち、周りの人影もまばらになってきた。今日はこれくらいにして、部屋に戻ろうとした時、掲示板が目に入った。確か1枚貼ってあったはずだ。俺は掲示板を確認する。
ブレット君へ
明日、朝6時に特別補講を行う。
10分前までにこの掲示板前に集合。
その他の希望者も参加可。
内容 剣術の基礎及び戦闘の基礎
修得スキル 剣術Lv2
各自補講の準備を行っておくこと
(・・・俺への補講の知らせだったか。)
俺はため息をつきながら部屋に戻った。
「ブレット、お帰り。どうだった?」
部屋に戻るとカストールも帰ってきていた。
「20人くらいは話したけど、特待生達とは話せなかったな。」
「俺はリオンとは少し話せたぜ。ルナール・エルダーとは無理だったけど。」
「リオンってどんな奴だ?」
「ああ、あの赤毛の奴。試験官をぶっ飛ばした。すごくいい奴だったぜ。今度、話してみろよ。」
「ああ、機会があったらな。ところで、ルナール・エルダーってやっぱりあの金髪の少女のことかな?」
「みたいだな。」
カストールによると、話題でよく上がったのが、やはり主席のルナール・エルダーと特待生の3人、リオン、メナート、イブーだった。攻撃魔法が使えるということでアリエットの話題も少しは上がったそうだ。
そして、もう一人、魔術13点、筆記100点の俺の話もちらほら上がったらしい。どうやら、奇異の目で見られているようだ。
「そういえば、特別補講、明日の朝みたいだな。」
「ああ。6時からだ。希望者も受けれるみたいだけど、一緒に受けるか?」
「俺は遠慮しておく。街を探索したいから。」
「だれか他に受ける奴がいると思うか?」
「いないんじゃないか。朝6時だぞ。しかも、この学校の補講は厳しいって噂だし。」
「だよな。一人さびしく受けてくるよ。」
「感想よろしく。俺も街でいい店があったら教えてやるよ。」
カストールは明らかに面白がっている。
(薬草と毒消しぐらい準備したほうがいいかな)
俺はふと思い、荷物を見てみた。父親の教えで狩の時は必ず薬草と毒消しを携帯するようにしていた。何かあった時の備えは必要だ。荷物を見てみると、薬草は切らしていた。
「カストール。今から購買所に行くけどどうする?」
俺は暇そうにしているカストールに尋ねた。
「購買所?そうだな。俺は用事はないけど、暇だし行くか。確か、横に食堂もあるだろ。ついでに晩飯にしようぜ。」
カストールは地図を見ながら答えた。
(晩飯?もうそんな時間か。)
窓の外を見ると、太陽が沈みかけ、空は赤色に染まっている。そういえば、お腹も空いてきた。
「そうだな。」
こうして、俺たちは購買所へと向かう。