入寮しました
学生寮の外観は古い木造建築で3階建ての大きな建物であった。ところどころ、オーラのようなものも見える。おそらく何かしらの魔法が付与されているのだろう。
学生寮の中に入るとすぐに大きな部屋になっていた。どうやらエントランス兼談話室として使われているようだ。四隅には小さなテーブルと椅子が置かれ、中央にも大きなテーブルと椅子が置かれている。正面の壁には、大きな暖炉があり、その横に掲示板が設置されている。
「あなた達、新入生よね。私は寮母のペコラよ。よろしくね。」
赤毛の華奢な女性が手を振って近づいてくる。細身だがしっかりと鍛えられているのが服の上からでもわかる。動きにも無駄がなく、ただ歩いているだけなのに美しさも感じる。
「ブレットです。よろしくお願いします。」
「カストールです。よろしくなお願いします。」
「ボクはアルエット。よろしくお願いしまーす。」
俺たちはそれぞれ挨拶をする。
「とりあえず、3人とも荷物を部屋に置いてきて。えっと、ブレットとカストールは2人とも205号室ね。あっちの階段から上がって、2階の3番目の左の部屋ね。アルエットは101号室ね。そこの扉を入ってすぐの部屋ね。もう少しで全員集まると思うから、荷物を置いたらすぐに戻ってくること。分かった!」
ペコラさんは矢継ぎ早に指示を出す。逆らってはいけない、と感じた俺たちはすぐさま指示に従い、自分の部屋を目指す。
「ブレット。ペコラさんから何かオーラのようなものが出てなかったか?」
「俺も感じた。」
二人の直感は正しかった。二人は後にペコラが元ベテランの冒険者で、現在は鬼教官であることを知る。
二階に上がるとすぐに205号室の扉を見つける。扉を開けて中にはいると8畳ぐらいの部屋に二段ベットと収納棚が2つ、小さな机と椅子が2つずつあるだけだった。必要最低限の家具とスペースのみがある部屋だった。
(狭い)
これが二人の共通の感想だった。とりあえず、荷物を置くと2人は急いで談話室に戻った。
「皆、揃ってるわね。今から寮内での規則とかを教えるので、覚えておいてね。」
ペコラさんは暖炉の前に立つと話し始めた。皆、直立不動で聞いている。おそらく新入生のペコラさんへの印象は全員同じなのだろう
「この学生寮だけど、食堂とかお風呂はないから、外で済ませてね。あるのは、個室とこの談話室だけね。」
(風呂を外で?)
「談話室は勝手に使ってもらっていいわ。そこにある掲示板は、学校からの連絡に使うので、各自定期的に確認してね。後は同級生同士連絡を取り合うのにも使っていいわよ。」
と暖炉の横の掲示板を指さす。掲示板には早速何か貼ってある。後で確認しておこう。
「次に君たちの部屋割りについてね。それは私が勝手にやったから。変更したければ当事者で話し合って、私に報告してね。ただし、君たちは未成年だから男女相部屋は禁止です。もちろん、そうゆう行為も禁止だから、するならばれない様にね。」
(ん?ばれない様にね?)
「今年の新入生は50名で、内、女子は10名です。女子の部屋はそこの扉の向こう、101から105の5部屋ね。106~120は使用禁止ね。」
と言って、左側の扉を指さした。
「男子の部屋は2階ね。階段を登った先の201から220の20部屋がありから。3階にも同じように部屋が20部屋あるけど、使用禁止としね。」
と言って、階段を指さす。
「特別な規則とかはないから、周りに迷惑を掛けないように一般常識的なことは守ってね。何か問題が起きた時は自分たちで話し合って解決してね。」
「何か質問とかある。」
とペコラさんは笑顔で聞いてきた。その笑顔が逆に怖いのは俺だけだろうか。
一人の生徒が恐る恐る手を挙げて質問をする。
「あそこのシャワー室は使えないんですか?」
確かにシャワー室と書いてある。
「あっ。そういえば、あったわね。使っていいわよ。ただし、男女共用だから、気を付けてね。他には?」
他の生徒が手を上げる。
「門限とかもないんですか。」
「当たり前じゃない。夜間訓練とか夜間補講とかもあるのにそんなのあるわけないでしょ。」
(夜間補講?なんだそれは)
ペコラさんは周りを見渡すが、誰も質問しようとしない。
「質問はないみたいね。まあ、何かあったら私は管理人室にいるから聞きにきてね。」