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教師は伯爵だった

 30分後、カーネさんは帰って来た。汗はかいているが息は乱れていない。あのスピードで走ったのに息が乱れていないとはどんな心肺能力だろう。


「ごめんね。遅くなって。先方と話がついたから。」


 先方?話がついた?どういうことだろう。


「ペコラが、無理やり頼んだみたいで、話が上手く相手に伝わってなかったみたいなの。仕事が忙しくてここで指導するのは無理だから、ブレット君が来てほしいって。必要なものはあっちで用意するから手ぶらでいいそうよ。」


 そういうと、カーネさんは歩き出した。俺はついて行く。どこまで行くんだろう。ついには学校の外に出ていく。


「あのカーネさん。どこに行くんですか?」

「だから、ブラディボのところよ。」

「そもそもブラディポさんって誰なんですか。」

「入学式で会ったでしょ。ブラディボ・フィリップス。伯爵よ。」


 えっ!伯爵?俺は伯爵様に直々に指導を受けるのか?そういえば、この道は伯爵家へ続いていたはずだ。


「あの、伯爵様が教えてくださるんですか?」

「そうよ。彼が人に教えれるかは疑問だけどね。彼は天才肌だから。」


 どうやらカーネさんは伯爵と知り合いのようだ。指導を頼んだということはペコラさんも知り合いなのだろうか。貴族である伯爵と。


「どういう関係なんですか?」

「関係って?・・・ああ、私とペコラとブラディボは冒険者時代にパーティーを組んでいたのよ。もちろん学校も同級生よ。」


 そういうことだったのか。だから伯爵を名前で呼び捨てにしているんだ。そういえば、伯爵は現役時代Aランクの冒険者だったはず。ということはペコラさんもカーネさんもAランクの冒険者だったのか?確かにペコラさんの実力はでたらめだったな。


 伯爵の館につくと門兵の人が快く応対してくれた。カーネさんは「伯爵によろしく伝えてください。」と言うと帰っていった。俺は門兵の人に連れられて訓練所らしきところに連れていかれた。そこには見覚えのある人物が立っていた。うん、確かに伯爵だ。

 門兵の人は深々と頭を下げると持ち場に戻っていった。帰り際にボソリと「死ぬなよ」と呟いていった。どういうことだ。

 俺は伯爵の顔を見ると慌てて跪く。突っ立っていたら、不敬罪と言われてもしかたない。その姿をみた伯爵はため息をつくと俺を立たせて言った。


「お前さ。礼儀とか考えてたら修業とかできないぜ。もっと気楽にしていいって。お前ペコラの弟子だろ。」

「いえ、伯爵様。そういう訳には・・・」

 言い終わる前に、俺は頭を手頭で叩かれた。いつ叩かれたのか分からなかった。いや、それよりもいつ近づかれたのかも分からなかった。

「お前さ。頭堅すぎ。とりあえず、特訓中の礼儀と必要以上の敬語は禁止な。後、俺のことは先生と・・・。いや、先生はいやだな。よし。師匠と呼べ。」

「あの・・・」

「いいな」

 有無を言わさぬ圧力を感じる。俺は承諾せざる得なかった。

「わかりました。師匠。」

 その言葉を聞くと師匠は満足そうに微笑んだ。

「で、お前はどんな冒険者になりたいんだ?」

「弓主体の後衛でパーティーのサポート役になりたいです。」

 俺は師匠にギルドカードを見せると、昨日決めたことを伝えた。師匠は俺のカードを見ると不安そうに俺の顔を見る。

「おい、2週間で一人前にしてくれとペコラに頼まれたが、本気で鍛えていいのか?かなり無理しないと間に合わないぞ。」

「・・・がんばります」

 俺は覚悟を決めて答えた。そして地獄の補講が始まった。



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