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板前長

「すみません。スペシャル定食のような能力(ステータス)付与をしてくれる料理の作り方って教わることができるんですかね?」


 俺の言葉を聞いた途端、店員の顔色が変わった。


「えっ、板前長なら教えることができるけど、君、本当に習いたいの?」


 なんだか嫌な気がする。この流れはきつい修行が付いてきそうな気がする。だが、ここで「NO」というのはどうだろうか。


「ちょっと気になりまして。」


 俺は言葉を選んで恐る恐る答えた。店員も俺が察したことを察したようだ。


「昔は、授業で教えていたらしいけど、きびしくてほどんどの生徒が修得できなかったみたいだよ。それで人気がなくてなくなったみたいなんだ。」


 これは教わってはいけないパターンだ。俺の警戒警報がサイレンを鳴らし始めた。「そうですか。それじゃ。」と帰ろうと後ろを向くと初老の料理人が立っていた。


「お前か、見習いになりたいって学生は。」


 どうやら板前長に捕まったようだ。板前長は白髪で口にひげを蓄えている小柄な男だった。だが、腕の太さは俺より太いんではないだろうか。しかも、全身から出ているオーラは半端ない。逃げることもできそうにない。


「はい、もしよろしければ・・・。」


 俺は板前長の圧力の圧されて恐る恐る答えた。板前長は俺を値踏みするようにじろじろみている。できれば、断ってください。本気でそう願っていた。気がつくと先ほど話していた店員はいなくなっている。逃げたな。


「よし、ちょっと試してやる。着替えてこい。」


 俺は店の更衣室の案内させられると、スタッフ用の制服に着替えさせられた。案内してくれた人が「ご愁傷様」と言って去っていった。

 着替え終わると俺は調理場に来ていた。「ここにあるものを使って、なんでもいいから一品作れ」と言われた。俺は基本的にほとんど料理をしたことがない。家では母親が作っていたし、学校ではここで食べていた。唯一あるのは父親と狩りに行ったときに作っていたスープぐらいである。獲物を解体した時に残った骨でダシをとり、切れ端の肉を具材に使ったスープである。父親は猟師伝統の料理だ、といっていた。

 他にレシピを知らない俺はこのスープを作ることにした。隣でウサギを捌いていた人のところに行き、骨と肉の切れ端を分けてもらう。猟師が野外で作るお手軽スープである。

 20分後、スープは完成した。俺は板前長にスープを運ぶ。周りからは憐みの視線が突き刺さる。板前長はしばらく俺のスープを見たあと、スープに口を付ける。俺はびくびくしながら感想を待つ。


「おい、お前はライム村出身か?」


 突然の質問に驚きながら「はい」と答える。なんでわかったんだ?不思議に思っていると、板前長が笑いながら答えてくれた。


「このスープはライム村近辺の猟師伝統料理だろ。基本に忠実に作っている。・・・よし、合格だ。」


 ライム村はかなり小さな村だ。そこの一郷土料理を知っているなんて、この人どれだけ料理に詳しいんだ?俺は感心せずにはいられなかった。


(・・・ん、合格???)


 今、合格と言わなかっただろうか。周りを見てみると、みんな驚いている。


「合格なんですか?」


「ああ、基本に忠実にこのスープは作られている。丁寧に作った証拠だ。味はイマイチだが、そこはどうでもいい。冒険者に味を求めても仕方ない。」


 やっぱり味はまずかったんだ。ちょっと複雑な感じだ。


「心配するな。能力付与のスキルを修得するころには調理のスキルも上がってる。とりあえず、週2回、授業が終わったら、ここに働きに来い。合間を見て教えてやる。まあ、頑張れ。」


 こうして、週二回の地獄のアルバイトが始まるのだった。



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