入学手続き
俺は合格発表の掲示板の注意欄を見つける。
注意 合格者は本日中に学生課にて入学手続きを行うように
俺はカストールと一緒に学生課に向かう。学生課は本校舎一階にあった。すでに多くの合格者でごった返していた。正面の受付には列が出来ている。俺とカストールは列の最後尾に並ぶと周りを見渡してみる。その中に一際目立つ少女がいた。
ストレートの金髪で肩の下あたりまで伸ばしていた。まだ幼い顔立ちだが、ちょっと凛々しくもあった。身長が高く他の合格者より頭一つ高い。体は引き締まっていて、服の上からでもよく鍛えられているのが分かる。そして、肩には紋章(盾とその右横に二本の縦線)が付いている。彼女が貴族であることを示している。
「なあ、ブレット。あの娘の肩の紋章、エルダー家の家紋だよな。」
「エルダー家?近衛騎士団団長の?」
「確かそうだよ。」
そういえば、主席合格者の名前がルナール・エルダーだった気がする。おそらく彼女だろう。周りの合格者も彼女が気になっているようだ。皆、彼女を好奇の目で見ている。当の彼女は気にすることなく凛として立っている。
もう一人目立つ新入生がいた。赤毛で200近くの筋骨隆々の男だ。いかにもパワーファイターのような体格だが、その動きにはしなやかさも見て取れる。
「カストール、見てみろよ。凄い体格、強そうだな。」
「ああ、あいつか。剣術の試験で試験官を気絶させた奴だ。」
「あついがそうだったんだ。」
俺は見ていなかったが、確かに剣術の試験で試験官が受験生に倒されて交代した、という話はあった。受験生の一撃で吹っ飛ばされ、後ろの壁に激突したらしい。全くどんな馬鹿力だよ。
しばらくすると、自分の番がきた。俺は係員の前に進んでいき、挨拶をする。
「受験番号103ブレットです。よろしくお願いします。」
「ブレット君。合格おめでとう。ご両親の同意書と入学金は持ってきているかい?」
俺は事前に両親から受け取っていた同意書と入学金を係員の人に渡す。係員の人はそれらを確認すると小さく頷く。
「確かに受け取りました。こちらの書類にサインをしてください。それで入学手続き完了です。」
俺は係員が指さしたところにサインをしていく。係員はそれを確認すると一枚の書類と冊子を俺に渡す。
「入学手続きの完了の書類と新入生のしおりです。入学式は明後日なので、それまでにしおりは読んでおいてください。」
係員が何かを思い出したように続ける。
「そういえば、君は特別補講ありだったね。」
「・・・はい。特別補講ってなんですか。」
「君は試験点数は合格ラインにいっていたんだが、実技試験の点数がちょっと低かったので授業についていけるように補講を行うことにしたんだよ。」
「なにをするんですか。」
「単なる実技指導だよ。授業についていけななかったら困るだろ。連絡は担当教官からあるから。」
「わかりました。」
「そうそう。ここが君たちが生活する学生寮の場所ね。」
といって一枚の地図を手渡してきた。学校の地図のようだ。学生寮は学校の敷地の端にあった。かなり大きな建物だ。手書きで「オレオール」と書かれている。
「オレオール?」
「君たちの学年寮の名前だよ。他にもグランツとスプレンドーレがあるから間違わないでね。」
「3つもあるんですか。」
「うん。グランツは去年入学の学生、スプレンドーレは一昨年入学の学生が暮らす学生寮だね。」
「わかりました。」
「今日中に入寮してね。」
こうして、入学手続きは無事に終わった。