キスは・・・なかった
その後は何もなく、俺たちは学校の正門に辿り着いた。時刻はすでに深夜になっていた、すでにギルドは締まっている時間だ。
「悪いが二人とも、明日朝一番でギルドに報告だ。7時にギルド前に集合だ。」
「わかりました。」
「了解でーす。」
俺たちは答えると学生寮にむかう。今日はいろいろなことがあって、とても疲れた。先ほどの戦闘を見る限り、アリエットは大丈夫だと思う。明日、それとなく尋ねてみようと思う。とりあえず、今は眠い。学生寮の前に着いたとき、アリエットが話しかけてきた。
「ねえ、ブレット。心配かけてごめんね。君が側にいてくれて良かったよ。」
アリエットの声には不の感情は感じられなかった。力強さも感じる。どうやら、冒険者を続けようと決意したのは間違いないようだ。良かった。
「ボク、もう少し頑張ってみるよ。冒険者は小さい時からの夢だから。昨晩は、励ましてくれてありがとう。これからもよろしくね。」
「こちらこそよろしく。それじゃ、お休み。」
心配事が一つ片付いた。俺は寝ようと寮に入ろうとすると、アリエットに呼び止められる
「あの・・・」
アリエットはうつむいてもじもじしている。しばらくすると、彼女は小走りに俺に近づいてくる。
(このシチュエーションはもしや)
一昨日の夜のことが思い出される。一昨日は頬にキスだったが、今回はもしかして、・・・。期待に胸が膨らむ。
・・・
・・・
???
アリエットは下を向いたままうつむいたままだ。
(緊張しているのか?ここは男の俺からいくべきか?)
などと考えていると、後ろから声を掛けられる。
「二人とも早かったね。ところで、ここで何をしてるのかな?」
振り向くとニコラさんがニコニコしながら立っていた。目は・・・笑ってない。
(なぜここに?)
「寝ようとしたら、寮の外に怪しい足音がしたから来てみたのよ。で、何をしようとしてなのかな?」
(足音。まじかよ。そんなに音は立ててないはずだか?)
何か言わねば、とおもうのだが、言葉がでない。ペコラさんの無言のプレッシャーが俺を襲う。
「ブレットには、補講中にいろいろ助けてもらったんで、お礼を言っていただけですよ。」
アリエットが慌てて答える。
(流石、アリエット。うん、嘘は言ってない)
「…分かったわ。そういうことにしておくわね。前も言ったと思うけど、するときはばれない様にね。」
(やっぱり、ばれなきゃいいのか・・・)
それを聞いたアリエットは顔を真っ赤にしている。
「ところで、どうして1日早かったの?明日帰ってくる予定って、カーネから話が来てんだけど?」
俺は教団のことペコラさんに伝えた。ペコラさんがびっくりする。
「本当なの?…嘘を言っても仕方ないわね。いい。分かってると思うけど、このことは他言無用よ。私はクヴォレに会いに行くから、あなたたちはすぐにちゃんと寝るのよ。」
そういうとペコラさんは走っていく。かなりのスピードだ。あっという間にいなくなった。
「びっくりしたね。いつの間に回り込まれたんだろ?」
アリエットがつぶやく。たしかに、ペコラさんは俺の後ろから声を掛けてきた。寮の扉は俺の前にある。部屋にいたと言っていたから、俺たちが気づかないうちに回り込まれたのだろう。
「ペコラさん、熟練の冒険者だからね。」
俺が言うと、アリエットも同意する。
「それじゃお休み。また明日ね。」
アリエットはそういうと寮の中に入っていった。俺は一人残される。
キスは・・・なかった。




