大暴れ馬
ババリアからの帰り道、俺たちは馬車にのって移動していた。森に西側の道をかなりのスピードで走り抜けている。この速度なら今日中に学校に着きそうだ。左を見ると北の森が広がっている。あの鬱蒼とした森だ。一晩あの森で過ごしたのだ。今考えると、よくあんな場所で一晩過ごせたな、と思う。
しばらく進んだところで、馬車が止まった。御者が大声をあげている。外に出ると、一匹の大きな馬が行く手を遮っていた。体長3メートルくらいの黒い馬だ。普通の馬と違い足が異常に太かった。おそらくこれが大暴れ馬だろう。
「森から突然こいつが出てきて・・・」
御者は怯え切っている。大暴れ馬と馬車との間にはまだ、10メートルくらいの距離があるが、完全に見つかっている。これは戦うしかないだろう。
「やれやれ、時間がないのに。俺が倒す。」
クヴォレ先生が前にでていく。おそらく先生なら一瞬で倒すだろう。
「まあまて、譲ちゃんと坊主はこいつの討伐依頼を受けてんだろ。せっかく出てきたんだし、やらしてやったらどうだ?」
トローさんが提案する。
「だが、今は時間がないし、それにアリエットは・・・。」
クヴォレ先生は口ごもって、アリエットの方を見る。アリエットは下を見ている。
「細かいことを気にしすぎなんだよ。嬢ちゃん。いや、アリエット、それとブレット。どうする。」
(俺は戦ってみたいが、アリエットはどんなんだろう。)
などと考えていると、
「ボクは戦いたいです。」
アリエットは顔を上げるとはっきりと宣言する。よく見ると強く握った掌は震えてりる。やはり怖いのだろう。だが、目には不安の色は感じられない。
「俺も戦いたいです。」
後は先生が許可するかだ。先生は考え込んでいる。
「ほう、克服したか。よし、がんばれ。」
トローさんは先生を無視して許可を出す。
アリエットは「はい」と答えると、前に出る。
(いいのか?)
俺もアリエットに続いて前にでる
。
「いいか。大暴れ馬はすばやい。まずは足を狙え。ジグザグに走ってくるから、できれば、多方向からの攻撃がベストだ。」
トローさんがアドバイスをくれる。多方向からの攻撃か。難しいな。俺の弓では無理だ。弓はまっすぐしか飛ばない。
「ねえ、ブレット。ボクが魔力を溜める時間を10秒稼いで。」
「わかった。」
俺が答えると、アリエットは魔力を溜め始める。それに気づいた大暴れ馬がこちらに攻撃態勢をとる。突っ込んでこられたら、たぶん2~3秒で距離を詰められる。俺は大暴れ馬に矢を放つ。狙いは奴の1歩目の着地地点だ。まだ、スピードに乗ってない今ならなんとかなる。重要なのはタイミングだけだ。それは、今までの狩りで鍛えている。矢は狙い通り、着地点に刺さり、それを避けようとして、バランスを崩す。俺は急いで次の矢を射る。狙いはもちろん、トローさんに言われた足だ。この矢はきれいに命中する。あまり効いてない気がするが、気にしてはいられない。俺はどんどん矢を射っていく。奴はどんどん距離を詰めてくる。
「氷の嵐」
残り2メートルくらいの時にアリエットの魔法が完成する。大暴れ馬の周りを無数の氷の矢が多い突き刺さっていく。一瞬で勝負はついた。
「ほお、氷の嵐か。いい呪文だな。」
トローさんは感心している。クヴォレ先生の方を見ると見つからない。「あれ、いない」と思ったら、後頭部に衝撃が走る。
(痛い)
俺が痛みで蹲る。アリエットの悲鳴も聞こえる。
「バカモン。俺の許可なく戦うな。」
どうやら、クヴォレ先生の拳骨のようだ、それにしても痛かった。げんこつだけなのに・・・。アリエットは向こうで「体罰反対。」といって蹲っている。
「まあまあ、いいじゃないか。討伐できたんだし。」
「トロー。お前がけしかけたんだろうが。」
「あれ、そうだっけ?」
トローさんがとぼけると、クヴォレ先生はため息をつく。
「全く・・・。まあ、二人ともよくやった。」
こうして俺たちは大暴れ馬討伐の依頼をクリアできた。




