カストール
(特別補講?)
俺が困惑していると、後ろから声をかけられた。
「お前も受かったみたいだな。これからよろしくな。」
振りむくと黒い短髪に褐色の肌の少年が立っていた。筆記試験で隣の席に座っていたカストールだ。彼は笑いながら手を差し出してきた。
カストールとは気があってすぐに友達になれた。同い年ということもあったが、最大の要因は、境遇が似ていたからだろう。彼は漁師の息子だったが、やはり冒険者に憧れていた。11歳の時に親を説得し、「1度だけ」と約束を取り付けていた。俺と違うのはそれから1年間しっかり対策をしてきた、という点だ。
「ああ。こちらこそよろしく。」
俺はカストールと固く握手をした。
「それにしても、お前の点数はすごいな。筆記の100点もすごいけど、魔術13点ってどうやったら取れるんだ?」
「うるさい。昔あった魔法使いの冒険者に言われた通りにやっただけだよ。」
俺はふてくされながら答えた。実際には言われた通りには出来ていなかった。その魔法使いは「掌に魔力を集中し、火の玉を生成して、的に当てれば合格できる」と言っていた。親切にもその冒険者は練習に1度だけ付き合ってくれた。その時は小さな火の玉がひょろひょろ、っとできた。「練習すれば、できるようになる」と言われていたのだが、それから何度やっても火の玉はできなかった。良くて煙が出た程度だった。
今回も、掌に魔力を集中し火の玉を作ろうとしたが、やっぱりできなかった。煙もでなかった。よく考えれば、よく13点もよくとれたなとも思う。
「まあ、良かったじゃないか。合格できたんだから。」
カストールは笑いながら言った。
俺はカストールの結果を探すと、真ん中あたりに名前を見つける。
受験番号104
カストール
剣術 60
魔術 35
筆記 75
総合 170
魔術35点、すごいな。どうやったんだろう。
「なあ、どうやったら、35点取れたんだ?」
「指先から火を出しただけだよ。」
と言って、カストールは指先から火を出す。着火の魔法と呼ばれる魔法だ。生活魔法の一つだ。生活魔法とは日常生活に使用される魔法で、この世界のほとんどの人が使用できる。もちろん俺も使用できる。
「なあ、それ着火の魔法だよな。」
「ああ。そうだけど。」
カストールは当然とばかりに答える。
「魔術の試験って、生活魔法でも良かったんだ・・・。」
俺の言葉にカストールは呆れている。よく考えれば当たり前のことだった。この世界で攻撃魔法などを使える人はほとんどいない。魔術単独の試験がある時点で、生活魔法が採点基準に入ってないとほとんどの人が合格できない。
「それにしても、筆記試験の100点もすごいな。他に満点の奴なんていないぜ。もしかして、カンニングでじゃないよな。」
「するか。したらばれるだろ。まわりにあれだけの監視がいたんだぞ。」
筆記試験中、何人もの試験官が監視をしていた。カンニングをする人が多いのだろうか。
俺の筆記試験で満点を採れたのは村長のおかげであった。村長は元貴族で、「自然と触れ合いたい」と言って王都から引っ越してきた変わり者であった。最初は気味悪がられていたが、とても頭が良く、物知りだったため、すぐに村に受け入れられ、いつのまにか村長をさせられていたような人物だ。
彼の家には数百冊の本があり、村長に気に入られていた俺は、いろいろな本を無理やり読まされていた。おかげで村2番の知恵者になっていた。もちろん1番は村長である。
「なあ、ずっと気になってたんだが、特別補講ってなんだ。」
「さあ、俺も知りたい。」
疑問も残ったが、とりあえず合格することができた。




