初デート?2
店を出ると、薄暗くなってきていた。食堂からは良いにおいが漂ってきている。実技の授業の後なのでお腹も空いている。
「アリエット、せっかくだし食事でもして帰らない?」
「おっ。今度こそデートのお誘いですね。ゴチになります。」
と言い、店に入っていく。
(奢るとは一言も言ってないんだが、まあいっか。)
店内はまだ空いていた。窓際の席に座ると、アリエットはメニューを開く。
「ねえ、ブレット。明日からきびしい補講になるわけじゃん。今日は美味しいものをいっぱい食べよーよ!」
「ああ、そうだな。」
俺は何気なく答えると、アリエットは目を輝かせて、注文する。
「すみません。スペシャル定食くださーい。」
(スペシャル定食?なんだそれは)
俺がメニューを見ると、定食の一番上にひと際大きな文字で書いてある。
明日のきつい補講を乗り切れ
スペシャル定食 300ゴールド
(300ゴールド!学生定食の6倍!)
アリエットの方を見ると、ニコニコしてこちらを見ている。この笑顔は反則だ。断れない。
「・・・はあ。俺もスペシャル1つ」
俺は観念して、同じものを注文する。かなり高いがこの前の巨大豚の報酬があるので問題ない。
「いやー。すごく気になってなんだよねー。この定食。」
「確かに300ゴールドってすごいな。」
「いや、そっちもだけど、明日のきつい補講を乗り切れってセリフも気にならない?」
確かに値段に目がいっていたが、明日、森超えの補講が始まる俺たちにはちょうどいいメニューかもしれない。
しばらくすると、料理が運ばれてきた。量が多いわけでもなく、高級食材が使われているようでもない。
「明日、補講があるのかい?」
厨房で調理をしていたコックの一人が話しかけてきた。
「はい、クヴォレ先生の補講です。」
「クヴォレ先生か。君たち入学したばかりだろ。・・・まあ、頑張れよ。」
(クヴォレ先生ってそんなに厳しいのか?)
「ねえ。コックさん。それより料理の説明してよ。」
アリエットは料理が気になって仕方ないようだ。
「そうだったな。この料理は消化吸収が良くて、腹持ちもいいんだ。栄養バランスも良くしてる。補講中はどうしても保存食がメインになるから、少しでもパフォーマンスが落ちない様にバランスを考えて作ってる。値段が高いのは、手間がかかるのとちょっと魔法の食材も入ってるんだ。」
「魔法の食材?」
「簡単に言うと食べることでしばらくの間、補助魔法がかかるんだ。今日のには疲労軽減の効果があるんだ。まあ、味わって食ってくれ。味の方も自信作だ。」
コックは調理場に戻っていった。
「学生定食より断然おいしい。」
いつの間にか食べ始めていたアリエットは絶賛している。俺も一口食べてみると、確かにとってもおいしい。この肉なんて、とろけるような柔らかさだ。かかっているソースもいつもよりコクがある気がする。
「こっちのスープもおいしいねー。」
「ほんとだ。」
何気ない会話がさらに食事を美味しくしている気がする。
(アリエットと二人でちょっと豪華な食事。うん。これは間違いなくデートだ。)
俺は至福の時を過ごした。
俺は食事を終わる会計を済ませる。二人分610ゴールドを支払う。
(610ゴールド?そういえば、アリエットのデザートが1皿多かった気がするな。まあいっか。)
外に出るとアリエットが満面の笑みで待っていた。
「ごちそうさまー。美味しかったね。」
「そうだね。また、食べに来ようね。」
「おや、またまたデートのお誘いですか?」
アリエットはまたまた俺をからかってくる。流石に少しは慣れてきた。仕返すか。
「うん。そうだけど、嫌だった?」
自分でもびっくりするようなセリフを言ってしまう。
(かなりすごいセリフを言ったな)
急に恥ずかしくなり、顔が赤くなる。アリエットの方を見ると、彼女も顔が赤くなっている。
「嫌じゃないけど、ボクみたいなお転婆でいいの?」
何かいつもと違ってしおらしい。
「いや、あの、アリエットだから誘ったというか、あの、その。」
俺は予想外の展開で混乱している。そんな俺を見てアリエットが笑いだす。
「ボクでよければ喜んで。いつでもゴチになりまーす。」
いつものアリエットに戻っていた。俺はいまだに混乱している。
(うん。いつもの俺だ)
その後は、何気ない会話をしていると、学生寮に帰り着いた。アリエットは俺の元に駆け寄ってくると、俺の頬に口を付ける。
(今のはキス!)
「今日は楽しかったよ。明日は頑張ろーね。」
そういうと彼女は寮の中に入っていった。




