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合格者発表

 ブレットは緊張していた。今日は合格発表の日である。地方からの受験であるため、彼は試験前日からずっと学校近くの宿に泊まっていた。荷物も持ってきており、合格すればそのまま入寮、不合格なら荷物を持って、故郷に帰らねばならない。


 筆記試験は自信があったが、実技ははっきり言って全く自信がなかった。弓術なら自信があったのだが、試験科目にはなかった。剣術は型をいくつか習った程度で実戦経験はなかった。魔術に至っては、素人同然であった。

「実技が悪いと筆記試験が良くても不合格になる」という噂を試験後に聞いたときは頭が真っ白になった。あれから2日間、食事も碌に喉を通っていない。


 ブレットはフィリップス伯領の東端に位置するライム村の出身である。この村には「初代フィリップス伯が冒険者の時に魔物の大群から村を守った」という伝説も残っていため、冒険者を志す子供は多かった。彼もその一人であった。12歳になると、彼は親に相談し、一度だけ受験を受けることを許可されたのだった。


 彼は喜んですぐに受験申請を出してしまった。当然、試験対策の勉強などは全くしてなかった。ただし、彼は6歳から狩人である父親の手伝いをしていた。そのため、弓の腕前はかなりのものだった。さらに、山での探索の方法、野外活動の仕方などはきっちり仕込まれていた。更に、暇なときには村長宅を訪れ、貴重な書籍を片っ端から読んでいた。旅の冒険者や神官がやってくると、積極的に話を聞いていたりもした。その結果、冒険者として必要なかなりの知識を得ていた。


 ブレットの足取りは重かった。試験結果発表は冒険者学校校門に張り出されるらしい。泊まっていた宿から学校までは10分程度の距離だったが、倍以上に感じられた。試験に落ちても死ぬわけではない。元の生活に戻るだけだ。そして父親の後を継いで狩人になるだけだ。それが決して嫌なわけではない。父親のことは尊敬していたし、狩人という仕事は好きだった。だが、小さな時から夢見ていた冒険者への道が一瞬とはいえ見えたのだ。それが閉ざされていくのはショックだ。


(なぜ、受験を来年にしなかったのか。)


 後悔が後を絶たない。まわりの受験生は自分より2~3才年長に見えた。みんなしっかり対策をしてきたのだろう。何も考えず受験申請した自分の愚かさを呪った。


 ブレットが校門に着いた時、すでに発表されて時間が経っていた。周りには泣いている受験生が多かった。彼らの泣き声が心に重くのしかった。意を決して掲示板を見てみた。


 主席合格

 受験番号 23 ルナール・エルダー

 剣術 100

 魔術 97

 筆記 95

 総合 292


 一番上には主席合格の生徒の名前が張り出されていた。


(292、なんだよ。その点数は。剣も魔法も一流かよ。)


 確か入試は200を超えれば高得点だったはず。俺はため息がでる。


 特待生

 受験番号 1 リオン

 剣術 100

 魔術 55

 筆記 73

 総合 228


 受験番号120 メナート

 剣術 80

 魔術 75

 筆記 72

 総合 227


 受験番号 77 イブー

 剣術 45

 魔術 100

 筆記 81

 総合 226


 (特待生か。ここも俺には関係ないな。)


 さらに下の方を見ていく。


 (ない)



 (・・・ない)



 (・・・・・・ない)


 諦めかけたその時、一番下に自分の名前を見つけた。


 受験番号103

 ブレット

 剣術 40

 魔術 13

 筆記 100

 総合 153

 ※特別補講有り


 受かっていた。


「やった。合格だ。」


 俺は思わず叫んでいた。半ば諦めかけていたため、嬉しさもひとしおである。

 これでスタートラインに立てる。冒険者への道が開かれたのだ。


(見間違いじゃないよな、)


 俺はもう一度掲示板を見上げた。


 受験番号103

 ブレット

 剣術 40

 魔術 13

 筆記 100

 総合 153

 ※特別補講有り


( ・・・・・・?)


 (特別補講?)


 なんだそれは。



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