入学式
今日は晴れの入学式だが、俺は筋肉痛で動くのも辛い状況だった。これほどの筋肉痛は久しぶりである。昨日は気づかなかったが、相当無理をしていたようだ。
「ブレット、大丈夫か?」
カストールが声を掛けてくる。こいつの場合、心配しているのではない。面白がっているだけだ。
「なんとか。」
俺は必死に階段を降りて、談話室にたどり着く。今日は入学式だ。遅刻するわけにはいかない。入学式は第一遊技場で行われるらしい。
(まずいな。このままては間違いなく遅刻だな。)
カストールは先に行ってしまったようだ。あの薄情者め。
(これは遅刻どころかたどり着かないかな)
俺が諦めかけた時、後から声を掛けられた。
「カストール君の言った通りね。全身筋肉痛だって。」
カストールはどうやらペコラさんに知らせてくれていたようだ。一応、心配もしてくれていたようだ。ペコラさんは俺に近づくと体中の筋肉を触っていく。
「大分熱を持っているわね。これは、筋肉痛と言うよりは筋筋膜炎ね。」
「何ですか。それは?」
「まあ、筋肉痛のひどいもの、って感じね。とりあえず、このポーションを飲んでね。」
ペコラさんは俺に一本のポーションを差し出す。青色の不気味な液体が入っている。
「炎症を一時的に抑えるポーションよ。不味いけど、噴き出さないでね。」
俺は一気に飲み干す。口の中にいままで味わったことのない味が広がる。
(確かに不味い。)
「どう?体が少しは楽になったでしょ。」
確かに痛みが少し減ってきた。先ほどのだるさが嘘のようだ。
「薬で無理矢理抑えているだけだから、しばらく運動はだめよ。入学式が終わったら医務室に行って、ちゃんと診察を受けてね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「いいのよ。・・・あっ、そうだ。薬代は100ゴールドね。医務室で払ってね。」
(・・・お金を取るんだ。)
痛みが少し残っているが、動けるようになった俺は、無事に会場にたどり着く。
「おっ!大丈夫そうだな。」
カストールが声を掛けてくる。俺はカストールにペコラさんに知らせてくれたことを感謝する。カストールは照れくさいそうに笑っている。
しばらくすると、入学式が始まった。きっと退屈な式が始まるのだろう。式の進行表によると、まずは学校の経営者であるフィリップス伯爵から始まり、その後来賓客の挨拶が3人ほどある。そして、新入生挨拶と続き、校長の挨拶で終わる。
(長くなりそうだ)
フィリップス伯爵はまだ若く、28歳だそうだ。24歳まで冒険者をしていたが、父親の急死により跡を継いだらしい。冒険者としては超一流でAランクまでいったそうだ。冒険者のランクはIから始まりA、さらにはSと10段階に分かれている。Aランクの冒険者など一握りだ。しかも、24歳でAランクになっているのは相当の実力である。フィリップス伯爵はゆっくりと壇上に上がっていく。
「我がフィリップス家は代々冒険者の育成に力を注いできた。そして、冒険者の力により我が領内は発展してきた。君たちにも期待する。以上。」
(・・・・・・えらく短いな)
続く来賓客の挨拶も短い。その次の来賓客も・・・。どうやらフィリップス伯爵の挨拶が毎年短いので、来賓客の挨拶も短くなっているようだ。
新入生代表はやはり主席のルナール・エルダーだった。彼女の挨拶も短かった。おそらく、事前に注意があったのだろう。そして最後に校長先生が壇上に立つ。やっぱり挨拶は短かった。
なんとも味気ない入学式であった。式の時間はおよそ40分程度であった。6人もしゃべっているのに・・・。




