西荻改名作戦
新宿駅で山手線から総武線の三鷹行に乗り換えた。
そんなに急ぎではないので帰りは三鷹行に乗って、できれば座ってくる。
今日もうまい具合に座れて、眠ってしまった。おきたら荻窪駅を出るところだ。
眠った姿勢が悪く、ちょっと首をひねって、背中を伸ばした。
もう西荻の駅に入ってきた。
あれ?いつもより速いんじゃないか。
ワーッ、西荻を通過してしまった。
この運転手、特快か何かと間違えてるんじゃないか。
しかし、スグに次のホームが現れた。
こんなところにホームがあったっけ?
いつの間にかホームが2つ続いていて、新しくでてきたホームには東立川と書いてある。
電車は東立川の方のホームに止まって扉が開いた
降りていくと、いつもと違った光景で、改札は入口出口とも3つある。
あまり気にせず真ん中の改札から出た。
するととつぜんどこからか報道関係の人が現れてインタビューしてきた。
「今どこの改札をご利用になられましたか。」
「どこって、ふつうに真ん中の改札から降りてきただけですけど。」
「真ん中ということは、東立川という駅名に賛成ということですね。」
「何ですかそれは。だいたいホームの位置がいつもと少し変わっているようでしたけど、
あれは何なんですか。」
「分かりました。主力の方がおしている東立川に賛成ということですね。」
「何なんですか、さっぱり分かりません。」
「あっ、左側の改札から入る人がいるようです。でも入ったら出てきてしまいました。
もう一回、左側の改札から入るようです。
ちょっとお話が伺えそうです。
あなたは、左側の改札を利用されたので、西荻窪のままで改名しないというグループですね。」
「そうです、西荻窪のままでいいので、左側の改札で何度も出たり入ったりしてカウントを稼いでいました。
駅名を変えるとなると、それにともなって変更することが多いので、
私のような個人経営の店舗ではとてもついていけません。」
「駅名変更といっても、そう簡単ではないようですね。
ありがとうございました。」
「もう少しお話を伺ってみましょう。
今度はお子さん連れの若奥様の集団です。7、8人いるでしょうか。
あっ、お話が伺えるようです。
真ん中の改札をご利用になられるようですね。
皆さん、東立川改名案に賛成ということですか。」
「テレビの方ですか。いやだ、お迎えだけなのでちゃんとお化粧してないわ。
西荻窪って同じ杉並区の中でも高円寺とかとくらべるとおしゃれじゃないっていうか
おやじが昼間っから飲んでるイメージがあるので、まず街の名前から変えたいわ。
せっかく新しいマンション街に住めたので、子供のためにも安全で清潔なイメージにしていきたいわ。」
「ありがとうございます。
右側の改札は利用者が少ないようですが、どのような意見のかたでしょうか。
ようやく一人利用者がいるようです。お話を伺ってみましょう。
右側の改札を利用されるようですが、駅名変更についてどのような意見をお持ちでしょうか。」
「ちょっと今のところ支持者が少ないようですが、ピンク荻窪とか桃荻窪とか、
色と組み合わせて、親しみやすい駅名に変更しようという案です。」
「ピンク荻窪ですか。。。かなりインパクトのある駅名ですね。
支持率はどのくらいですか。」
「いままでに3名です。
間違って改札を通ってしまった人もいると思うので、現状では支持者は1名か2名でしょう。」
「ありがとうございます。がんばってください。
現状、東立川のホームは、若干吉祥寺寄りに、西荻窪のホームと続けて作ってあります。
もし駅名の変更が決まった場合は、ホームの位置はもとの西荻窪の位置に戻されるかもしれません。」
「バス乗り場の位置とか変更して欲しくないわ。変更されると慣れるのに大変。」
「いや、現状のバス乗り場が安全で分かりやすいとは思えないな。
この際だから思い切って分かりやすいバス乗り場センターに変えた方がいいんじゃないか。」
「同じ駅名変更賛成派でも詳細ではいろいろ異なっているようです。」
「なんにしろピンク荻窪にだけはなって欲しくないな。だれだあんなの考えたのは。」
「一応、有名なプランナーのかたにお金を払って考えて頂いた案のようです。」
「バカなんじゃないか。」
「ちょっと、ご意見も熱くなってきたようですので、このへんで一度本部へ戻したいと思います。
ご協力ありがとうございました。」