019.出来る女性の衛兵
オレは、4人組のBランクの冒険者クラン『ドラゴンバスターズ』のメンバーだ。
名前は、クラウン、クランの中では斥候や罠を解除するシーフをやっている。
オレたちの一生を決める試験…………冒険者ギルドと専属契約を結ぶための試験を受けている最中に紅一点のセリアがファイヤードラゴンにやられて、回復魔法を掛けて貰いに王都に戻るところだ。
お姫様抱っこといきたいが、背中をバッサリとファイヤードラゴンの爪で斬られたので、傷を上にして、肩に担いでダンジョンの入り口まで戻ってきた。
ダンジョンの入り口が以前より広がっているので、今まであった扉の横に蹴ればすぐにでも壊れそうな木の塀を立てただけだ。
「ど、どうされたんですか?」
ダンジョンの扉を守っている冒険者ギルドの職員がかなり慌てた感じで声を掛けてきた。
「ファイヤードラゴンが入り口まで来ている。それに仲間がやられたんだ。仲間の治療と応援を呼びに王都に向かうので馬を貸してくれ。それと、仲間が万が一逃げてきたときのために、ダンジョンの扉を封鎖せず、そのままにしておいてくれ。どうせ相手はファイヤードラゴンだ。扉を閉めていても、すぐ突破されるだろう」
オレのセリフで冒険者ギルドの職員は少し混乱していたようだが、空を仰いでから、すぐにギルドで確保している馬の方に走っていった。
混乱して時間を掛けるより、すぐ動いた方が少しは安全だと思ったんだろう。
逃げ出さないだけ賢いな。
まぁ、ファイヤードラゴンがはぐれになったら、逃げるとこなんて、ありはしない。
オレらみたいな、冒険者ならまだしも、ダンジョンの扉を守っている冒険者ギルドの職員が逃げ出したとなれば、命が助かったとしても、『職場を放棄して逃げ出したモノ』みたいな称号が付いて、今後、ろくな仕事に就けなくなるだろう。
そんなことは、オレでも想像はできる。
入るときに気付けば良かった。
そう思いながら、ダンジョンの入り口の方に目をやる。
今、考えると、ファイヤードラゴンがダンジョンから出られるように、入り口が広がったんだろう。
馬を3頭連れて、冒険者ギルドの職員がやって来た。
「私は、ギリギリまで、ここにいます。簡単に職場放棄したら、無事済んだ時に、解雇されちゃいますからね。ささ、ケガをしたのはセリアさんでしたっけ、馬に乗せるの手伝いますよ。ですから、無事済んだときはフォローして下さいね」
恐怖で震えるのを我慢している冒険者ギルドの職員に手伝ってもらいながら、セリアを馬に括り付けた。
「ああ、分かった。それと、すぐ戻ってくる」
そう言って、王都エリス東門に向かった。
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王都エリス東門に着いて、どうやって衛兵に応援を頼めるかと思案しながら、衛兵がいるところに向かおうとしたら、身なりの良い女性の衛兵が走ってやって来た。
「馬に乗ったままで申し訳ないが、怪我をした仲間を…………」
セリアの命に関わることだったが、残念ながら最後まで、セリフを言わせて貰えなかった。
「ケガ人がいるのだから、礼儀については追及しない。それと、すまない。今日は回復魔法使いが不在なんだ。それより何があった?」
いや、最後まで言わせないことで、少しでも時間を節約しようとしてくれているようだ。
「ダンジョンの進化が終わって、ファイヤードラゴンが入り口まで来ている。仲間が押さえてくれているが、はぐれになる可能性が高い」
オレも簡潔に答える。
「分かったありがとう。おい、この冒険者を通してやれ。ここで、ちんたらして、ケガ人に死なれたら、一生恨まれるぞ」
冗談っぽく言っているが、かなり真面目な表情だ。
「疑わないのか?」
念のため、聞いてみる。
「そのキズ跡。ファイヤードラゴンにやられたと聞けば納得出来る。それより、早く行け、仲間を助けたいんだろ?」
見たまんま出来る系の女性の衛兵だ。
こんなところで、衛兵をやっているのが勿体ない。
王城勤めでも、それなりにやれそうだ。
「恩に着る」
頭を下げて、馬を走らせる。
「お前たち、戦闘準備だ。訓練じゃない。実戦だ。敵は、ダンジョンのはぐれになる可能性のあるファイヤードラゴンだ。逃げるなんて、選択肢はない……………………」
声が聞こえなくなってきた。
後ろを振り向かない。
あの女性の衛兵に任せておけば大丈夫だろう。
オレは、今、出来ることをするんだ。
男の約束を守るために……………………。




