011.王子さまの苦悩
ぶくま、評価ありがとうございます。
王位継承権第96位 シャルル・クリス・フランベルジュ。
それが、オレの立場であり名前だ。
初代国王の血を継承する10ある王族の家名のうちのひとつ『クリス家』が今は『フランベルジュ』を名乗っている。
ただし、お爺さまが王位を失った後は、『フランベルジュ』を名乗れなくなるだろう。
『クリス家』の中では、王位継承権第96位のオレが一番王位継承権が高いんだ。
若い頃、王位継承権第1位だった親父が、その時に王位を継承していれば良かったがが、今は寄る年波には勝てず、今はオレの方が強くなっている。
『クリス家』再興のために、オレも頑張っているが先は見えている。
国王であるお爺さまの直系なのに再興と言う言葉を使わないといけないのは、オレが不甲斐ないからだ。
本当に不甲斐ないが、姉さんは嫁に行ってしまったので、年の離れた妹のシャルロットに、力が強い婿を捕まえてくれるのを期待するしかない。
が、シャルロットは、昔、助けられたと思い込んでいる筆頭宮廷魔法使いの息子にゾッコンなんだ。
どう考えても、筆頭宮廷魔法使いのフレイムマスター卿が影から手助けしたんだろう。
男に産まれてきたら良かったと言われているマンゴーシュ公爵の娘であるエルダ嬢が苦戦していた『はぐれモンスター』に勝てる子供なんているわけないのに、お爺さまもシャルロットの言うことを鵜呑みにして、その子を王国に呼び寄せたんだ。
保護者であるフレイムマスター卿が王都エリスに在駐するのは防衛面では安心だが、フレイムマスター卿の火魔法以上に、シャルロットがお熱を上げるのは分かりきっている。
実子ならまだしも、血の繋がっていない養子…………ただ、種族はハイエルフらしいので将来性はある。
魔法使いとしてはな。
でなきゃ、筆頭宮廷魔法使いが養子にするわけないだろう。
でも、選りに選って魔法使いの息子とは…………婚約者と言う立場なれば、王族一武闘会に参加出来るようになるが、王族一武闘会では、魔法は御法度。
魔法が強くて、多少身体能力があったとしても、上位入賞は難しいだろう。
本来、『クリス家』としては、優勝を狙わないといけないんだが、他人任せにして…………いや、妄想でも上位入賞を目標してしまうとは、本当に情けない。
そんな情けない兄としては、惚れた相手に嫁いで貰いたいが、『クリス家』の跡継ぎとしては、政略結婚の駒として、泣いて貰うしかない。
力こそ全て、闘いがあるところには、率先して立ち向かい、力を国民に見せつけなければならないんだ。
他の国では知らないが、剣聖フランベルジュ王国では、強くなければ王族の一員として認められないのだ。
守られなければならないのは女子供だけで、王族の男子たるモノは守られる立場でなく守る立場であり続けなければならない。
そのためには、王城でぬくぬくしているのではなく、日々、身体を鍛えておかなければいけないんだ。
王族一武闘会…………王位継承権を決めるだけではなく、賞金もバカにならないのだ。
一般には公表していないが、観戦料の半分を順位によって賞金として振り分けているんだ。
その賞金は大事な収入源のひとつでもあるが、ここ最近のクリス家は恩恵にあずかれていない。
王子であるオレが、こうやって現場で働いて稼がないといけないくらいだ。
身体も鍛えることが出来て一石二鳥な職場でな。
ここは、剣聖フランベルジュ王国、王都エリス東門。
この王都エリス東門を守る衛兵たちの隊長がオレの役目となっている。
それなりの給金は貰えるが、出世の望みが全くないほど、活躍の場がなく閑職に近いが、訓練する時間だけはある。
この職場を希望したのはオレだが、隊長になったのは、お爺さまの力だと言うことは公然の秘密だ。
王都エリス東門と港は水路で繋がっていて、その水路経由で水揚げされた水産物が運ばれて来る。
今日は、鯨も運ばれてきた。
肉はうちの食卓………………いや、ノーコメントだが、経済効果がある鯨油はいろんなギルドが喜ぶだろう。
そして、『クリス家』以外の王家が恩恵にあやかるだろう。
そう、『クリス家』以外の王家が恩恵にあやかんだ。
『クリス家』以外がなっ!!
べ、別に悔しくなんかないんだぞっ!!
こほん。
お、王都エリス東門には他の役割もある。
通称、ダンジョンズゲートと言われるように、ダンジョンの門。
この道の先には初心者から中級者向けのダンジョン『アウトサイド』がある。
そして、その先には膨大な未開拓の森がある。
そうなんだ。
すぐお金になるダンジョンまでの道はなんとか開拓できたが、その先はまだ手つかずになっている。
開拓すればお金になるのは分かっているが、利益が出るまで数百年単位で掛かるだろう。
数百年後の利益のために、野生のモンスターを相手にしながら、拠点を作り、開拓していく?
どれだけの人員とお金が必要になるんだろう?
王国も、そんな道楽みたいなことは出来ないので、森を開拓していくより、平地を開拓するほう選んでいるんだ。
目の前に広がっている綿花や麻の畑のようにな。
「シャルル殿下、冒険者クラン『ドラゴンバスターズ』のクラウンなるモノがお目通りを願っております」
オレに声を掛けてきたのは、アレッタ・パモール。
代々クリス家の家令を務めてくれているパモール家の次女だ。
オレの従者として付き従ってくれている。
「アレッタ。ここでは、かしこまる必要はないし、何度も殿下は止めてくれって言ってるだろ。で、要件は? そのクラウンと言う冒険者は、なんて言っているんだ?」
元貴族で冒険者で成功したヤツらが入門受付で行列が出来ているときに、並びたくないから融通を利かせて欲しいって言ってくることがある。
クラウンって名前は聞いたことないし、そう言う話なら、アレッタが適当にやってくれている。
冒険者がオレに会いたい?
理由なんか思いつきもしない。
まぁ、考えても仕方がない。
その答えは、すぐに分かるからだ。




