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010.冒険者ギルドの受付のお姉さん

 あたしはリゼル。

 俗に言う冒険者ギルドの受付のお姉さん。


 王都エリスに5つある冒険者ギルド。

 その中で、ダンジョンに一番近い冒険者ギルド王都エリス東営業所…………通称、ダンジョンギルドで働いているの。


 王都エリス東営業所は、ダンジョンへの入場手続きがメインのお仕事。

 もちろん、他の営業所同様に素材の買い取りもやっているわよ。


 ダンジョンへの入場手続きは、専用の魔道具で、冒険者カードにチャージするだけ。

 現地のダンジョンの入り口でもやっているんだけど、効率化のため、入場料は大銀貨1枚(100ペッタン)の1日入場フリー券をチャージのみ。

 で、ここ、王都エリス東営業所でチャージすると、11日分の入場フリー券で大金貨1枚(1,000ペッタン)だから、1日分お得なの。


 そう…………あたしのお仕事は、この11日分の入場フリー券のチャージと初めてダンジョンに入る冒険者たちへ注意事項を説明することね。


 後は、新規冒険者登録。


 最近、カウンターでの新規冒険者登録の受付は少ないんだ。

 冒険者になるほとんどの子が冒険者科がある学校へ通っているからね。


 冒険者科に通う子は、冒険者ギルドへの登録が必須。

 何故かと言うと、新規冒険者登録時に貸し出す冒険者カードを実技授業が始まる前に所持していないといけないからなの。

 冒険者カードを持っていると、本人の適性にあった魔法やスキルを覚えることが容易いし、覚えた能力を熟練度の範囲だけど目一杯使えるからね。

 そして、授業ではその覚えた魔法やスキルの熟練度を上げていって、最低限、冒険者として生きていけるようにするの。


 冒険者ギルドのサービスの一環と言うより冒険者ギルドの作業の効率化を目的として、冒険者科に通う新入生は、まとめて冒険者の説明と新規冒険者登録をして冒険者カードを渡すのよ。

 ひとりひとり説明や登録をするより楽だからね。

 生徒の方もわざわざフライングで冒険者登録をして、依頼を受けないといけないくらい切羽詰まった生活をしているわけではないから、学校で冒険者登録するまで登録しないのが当たり前だと思っているみたい。


 だから、今は冒険者ギルドでフライング登録するのは切羽詰まった生活をしているってことと思われるんだ。

 そんな理由で、普通はフライング登録なんかしないんだよ。


 これらを含めて、学校で冒険者登録するのは、冒険者科が出来てからの伝統行事みたいなモノだから、もう王都の常識になっているんだ。


 そんな世の中の事情で、あたしの仕事の新規冒険者登録は、冒険者科がある学校での出張登録がほとんどだね。


 ちょうど、1週間後に入学式があるから、その後に忙しくなるわけだ。

 各営業所で学校を割り振るけど、結構な人数を登録することになるから大変なんだよ。

 本当にあたしの平穏を脅かすくらい忙しくなるから、王都エリス東営業所と専属契約している冒険者クランにも応援を頼むんだけど、ついこないだ、あたしの平穏を乱すかのように冒険者を辞めて引退しちゃったんだよ。



 でも大丈夫、今日、新しく専属契約する予定の4人組のBランクの冒険者クラン『ドラゴンバスターズ』が採用試験中で、合格したらその4人に応援を頼むんだ。

 採用試験は、Bランクの冒険者クランには、楽勝の難易度だから合格間違いなし。

 ふふん、あたしの平穏は守られたのも同然よ。



 今となっては学校で冒険者登録する子が多いけど、それでも、冒険者ギルドのカウンターで冒険者登録をする人もいるんだ。

 ほんとに希なんだけどね。

 新しく王都に流れ着いてスラムに住み着いた星の巡り合わせが悪い子くらいしかいないんだよ。


 これも、長い間、国がスラム対策をして来た成果が出てきているからなんだ。

 国が補助金を出してくれるから、小さい子でも出来る仕事の依頼料に補助金を上乗せ出来て、真面目に仕事をすれば、生きていくことが出来て、もっと頑張ればスラムから出て行けるようになるんだ。

 王都エリスいっぱいいたそう言う子も、すでに親になって、子供を学校に通わせれるくらいには、立派になっているのよ。



「あ~~退屈~~~、ヒマで死んじゃいそう」



 あたしの職場である今日の王都エリス東営業所は人がごった返すほど絶賛大盛況中なのよ。

 残念だけど、絶賛大盛況中なのは、併設している酒場だけなの。


 ダレも来ないカウンター業務のあたしは超ヒマなの。


 ダンジョンの入場フリー券をチャージしに来た冒険者たちがダンジョンに入れないと知ってそのままお酒を飲んでるのよ。

 普通の酒場はまだ営業時間になっていないから仕方ないよね。


「リゼル~~、ヒマなら、こっちの酒場の手伝いする~?」


 声を掛けてきたのは、ガウッサ。

 部門は違うけど、冒険者ギルドの職員の同僚だ。


「いやよ~。あ~、客のおごりで満足するまで呑んで良いのなら手伝うけど? ザーン村のミードで我慢するよ」


 1杯、白金貨1枚もする美味しいって噂のハチミツ酒。

 他人のお金で満足いくまで呑んでみたいよね。


「ザーン村のミードって、一番高いお酒じゃない。まぁ、客のおごりで良いのなら、私は構わないけど♪」


 そう言って、客の冒険者たちを見回すガウッサ。

 みんな、ガウッサと目を合わさないようにそっぽを向き出した。


「ざ~~んねん。底なしのリゼルに奢るのは、みんなイヤだって。お酒くらい自分のお金で呑みなよ」


 ガウッサはケラケラと笑っている。


「いやよ~。他人のお金で呑むお酒が美味しいんじゃない」


 お酒は奢って貰うモノで、わざわざ、自分でお金を出してまで呑みたくないわ。


「ザーン村のミードは、自分のお金でも美味しいわよ」


 生産者不明で、生産量が少ないザーン村のミードは予約してもなかなか手に入らないらしい。


「美味しいってことは、噂では知ってるわよ。噂ではね。じゃあ、ガウッサ、あたし抜きで頑張ってね~。あ、そうそう、ダンジョンの安全確認は今やって貰ってるから、明日にはヒマになるわよ~」


 ダンジョンが入れないのは、2年ぶりのダンジョンの進化がやっと終わったとこなので安全性が未確認なんだ。

 入れるようになるのは、進化後のダンジョンの安全確認が出来た後。

 安全確認が出来ていないダンジョンは、さすがに危ないってことで冒険者ギルドのルールで決まっているのよ。


 で、今回、ダンジョンの安全確認にいってるのは冒険者クラン『ドラゴンバスターズ』。

 そう、冒険者クラン『ドラゴンバスターズ』の採用試験は、ダンジョンの安全確認なんだ。

 ソロのCランクの冒険者でも、最下層までいけるダンジョン。

 前回のダンジョンの進化でも、そんなに強さは変わっていなかったから、今回もダンジョンの強さはそんなに変わらないだろうと言うのが専門家の意見だった。

 それでも万が一のことがあったらいけないから、ダンジョンの安全確認の安全マージンの余裕を見て4人組のBランクの冒険者クランなら余裕だろうってことで、ギルドマスターが、採用試験に決めたんだ。



「あ~~ヒマだよ~~~」



 明日、通常業務に戻るまでの退屈な時間を満喫しよ~っと。

 でも、面白いことないかな~~~。



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