第39話 ドラゴンが出た!
「順調ですね、公爵様。これだとお昼過ぎには丘のてっぺんについていますよ」
「気を抜くんじゃない。魔物のエリアにいるときは、何が起きても不思議はないんだからな」
冒険者としても一流だった公爵様の言葉は重い。
まだ冒険者になって2年のダニエルにはしっかりと響く。
「あれは何でしょう」
「どれどれ」
上空の遠くに見える影を差しながらダニエルが聞く。
目を細めて公爵様が答える。
「おい。あれは・・・飛竜だ」
「ええっ、飛竜って。ドラゴンじゃないですか?」
「低位とは言えドラゴンの一種だ。こっちに向かってくるぞ」
「僕らでは手が出ないですよね」
「やばい!戻るぞ」
飛竜がどこへ向かっているのかは分からない。
しかし、もしクリスが襲われたら、どうしようもない。
今は、戻って6人が集結しておくべきだ。
「あれ?公爵様。ダニエルも。どうしたんですか?」
戻ってきたふたりを見てクリスが聞く。
「レオンとコルネリアも後から来る。6人集結するんだ」
「なぜですか?」
「あれだ!」
もう、形で分かるほどになった飛竜が上空で回っている。
「わっ、飛竜!」
「そう、飛竜だ」
レオンもコルネリアも追いついて6人が集まった。
「襲ってくるんでしょうか?」
「たぶんな。こちらに気づいているのは確実だ」
このあたりに出る魔物なら、ひとりでも撃退できる公爵だが、飛竜となると話が違う。
ドラゴンを倒したときの剣は今、持っていない。
今、装備している剣では、飛竜の厚い鱗皮を突き刺すのは困難だ。
「レオン、火の魔法で撃退できない?」
「やめておけ。却って狂暴になるだけで倒せはしない」
実戦経験が一番多い公爵でも、このメンバーで飛竜を撃退する作戦はみつけられない。
「襲ってきたら、俺が受ける。他のメンバーは支援攻撃を頼む」
作戦というより、気合で対応するつもりらしい。
話しぶりからして、確実に撃退できるという感じではない。
「絶対絶命のピンチね。こんな時こそ、ガチャ師の本領発揮ね、公爵様」
背負っていたピンクのナップザックを下ろし、ボタンをはずし中身を出す。
「なんだ、それは?」
「これはね。携帯版ガチャ樹よ」
地下牢の時に使っていたガチャ樹を改造して携帯できるように改造したのだ。
「飛竜に対応できるアイテムを出すわよ」
「おおっ、そんなことが!ぜひ、ドラゴンキラーの大剣を頼む」
「何が出るかは、引いてみてのお楽しみよ」
ぴかっ。ころころころ。
《龍使いのペンダント:☆☆☆☆☆》
「わーい。なんかすごいのが出た」
「なんだ、それは」
「ペンダントの様ね。私が装備してみます」
クリスが首からペンダントを掛けると身体が熱くなってくる。
「おおーっ。なんかすごいパワーが来たわ」
「もしかして、飛竜がいう事を聞くの?」
「そうかも。やってみるね」
ペンダントを両手で握りしめて、飛竜に向かって叫ぶ。
「いう事を聞いてっ」
すると、飛竜がぐるっと回って急降下を始めた。
クリスに一直線で向かってくる。
「うわっ、ダメじゃないっ」
まさに絶対絶命の危機が訪れてしまった。




