第四十五話:戦争が終結したそうです。
2年間、それはそれは辛い時間を過ごした。
あのクソギルド会計係の言う通り、“順調”なペースできっかり2年かかったのだ。
毎日毎日これでもかと言うくらい襲ってくる大量の雑魚蛮族をなぎ倒し、魔力切れをおこし、飯を食べたら死んだように寝て、寝たりないのを無理矢理起きて、朝食を食べたら大量の雑魚蛮族を......。
長く、苦しい、戦いだった......。
アルニカちゃんは途中で何分で何体倒せるかというチャレンジをひたすらしていた。
弱いのをなぎ倒すのも悪くなかったようだ。
ユグルくんは新しい毒とかを試してたけど基本的には死んだ魚の目で蛮族を倒してた。
あ、でも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけいいことがあった。
私は魔力の量が増えた。アルニカちゃんはいかに効率よく殺す方法があるかを学んだ、ユグルくんは一対多の対処法を覚えた。
そしてみんな軽く社畜化した。
「お疲れ様でした!2年間ありがとうございました!」
会計係がにっこりとわらって私たちを労う。
当の私たちはげっそりとしていて、終わったことの安心感もあってすごく眠たかった。
「では、クエスト成功報酬である金貨1000枚です。受け取ってください。」
さすがに2年間休まずこきつかわれた対価はあったようだ。疲れすぎて脳みそが働いてないがひきつった笑みで受けとる。
「しばらくは休まれるおつもりで?」
「あぁ、もちろん。2年間やり遂げたし、1年くらい休んでも文句は言われない。」
それにお金もたんまりあるから、休んだところで支障はない。
もう、一秒でも早く今は家に帰って眠りたい。そしてごろごろしたい。
「壁ももうすぐ出来上がりますし、大分ここら辺の治安も回復したので、いいかもしれませんね。あ、そういえばあそこにある酒場で~~~~~」
なぜか会計係が世間話を始めた。【威圧】で黙らせたいのを我慢して聞き流す。私たち早く寝たい、でも話長い。
「はっ、引き留めてすみませんでした!では、ありがとうございました!」
やっと解放された。私たち無言で足早に家に戻るとたっぷりのお湯で体を流し、さっぱりするとすぐにベットに潜り込み、重たいまぶたをそっと閉じた。
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『こっちくんなよ!魔女子!』
どんっ、と突き飛ばされるのは幼い頃の私。
せっかくの眠りなのにこんな悪夢なのか。と、ため息をつく。
『やーい、お前の家、ほんとは魔女の家なんだろ!毎日怪しい薬とか作ってるんだろ!』
もちろんそんなことはない。父も母もただの共働きだ。
では、なぜ魔女子なのか。
理由は、同居している祖母のせいだ。
祖母はどれだけ注意しても魔女のような格好をして杖をついて家の周りの植物に水やりをし、更に通行人と近隣住民には文句と理不尽な言葉を投げつけ、男尊女卑で生きている。
『女の子は髪が長い方がいいに決まっている。男みたいに短くする必要はない。』
そう言って私の髪を短く切るのを許さなかった。
『男と遊ぶのかい?お前は女だろう、男のように走り回っていたらみっともない!』
そう言って外で遊ばせず、一人でままごとをするしかなかった。
『友達と遊びたい?女の友達なぞ、結婚のライバルだ!遊ぶなんてけしからん!』
小学生からずっとそれでいじめられていた。
けれど、理解してくれる女の子達が励ましてくれていたおかげで、理不尽な祖母の言い分もがまんできた。
両親も祖母の異常さに気付き、引っ越して祖母を置いていった。
住所などは教えたものの、祖母の家にはけっして帰ることはなかった。
おかげで、私は「普通」の高校生生活を送り、卒業後の進路を決めたまさにそのときだった。
いきなり祖母がやって来て
『女が大学に行く必要はない。ほら、お前にぴったりの婿を見つけてきてやったよ。』
そう言って自慢げに祖母が見せた見合い写真には、ひどく醜い豚のような男が写っていた。
どこかの御曹司らしく、容姿のせいで結婚が難しかったが、嗅ぎ付けた祖母が私の写真を見せ、勝手にお見合いをしたらしい。
吐き気がした。
この女はどこまで私の人生を踏みにじろうとしたら気が済むのだろう。
言いなりにならなかった娘の代わりに、孫を使おうとするなんて。
さすがに母も父も激怒し、即座に相手の家に連絡を入れ、すぐに解消させた。
祖母は怒り狂っていたがそれ以上に私たち家族の怒りを買ったのだ。
そして祖母は追い出した一週間後、脳卒中でポックリと逝ったのだ。
『魔女』はたくさんの遺産を残して死んだ。
学費を払ってもまだまだ余るくらいに。
だけど豪遊はしなかった。毎日両親は働き、私は学校に通った。そんな普通の日常を過ごしていたら、転移した......。
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「ん......」
「おはよぅ、シキミ......」
目を覚ますと、ギュスくんがベットのなかに潜り込んでいた。
「ギュスくん」
「ん?なぁに?」
幼い寝ぼけ眼でギュスくんはこっちを見る
「あのね、いくら疲れてる私を起こしたらいけないって無言で入ってくるのはやめようか。」
「んん......ごめん、気持ち良さそうに寝てたから......。」
そういって、ぎゅっ、と私を抱き締める。
「一緒に寝る?」
「んゅ、寝る......」
再び二人でまどろむ。
今度は、悪夢を見ることはなかった。
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気分スッキリの朝を迎えた日、ひとつのニュースが飛び込んできた。
戦争が終結し、ペイギア教国が敗北、ヴァルク帝国に吸収されたそうだ。
それと、もうひとつ。
国々のお偉方が集まって何やら会議をするそうだ。
だから、私はこう言った。
「ねぇ、盗み聞きしたくない?」
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