第四十三話:冒険者はとどまらない
「ガルルァアッ!!!」
「シノノメ!そっち行ったよ!」
ユグル君の挑発攻撃で標的が私に向かう。
「オッケー。」
私は杖を構えて魔力を練り上げつつ、迫り来る牙と爪を回避する。
やぁみなさん、シキミさんだよ!今日は冒険者としてポイズンウルフ狩りをしてるよ!こいつらは名前の通り毒まみれの狼をめちゃくちゃ大きくしたって感じの蛮族だよ!魔物にも似たようなのがいたなぁ......。
「っと、感傷に浸ってる場合じゃなかった。スパーク!」
「ギャンッ!」
こいつらは毒こそ厄介だけど、それが水分たっぷりなのか雷系の魔法が良く効く。スパークは中級魔法だけど、私の杖にかかればそれで威力は十分なのだ。今のは上位魔法のボルトスパークではない、スパークだ。......なんちゃって。
「エリン、毛皮とかよろしく。」
「かしこまりましたわ。」
アルニカちゃんは慣れた手つきで解体しはじめる。毒はこいつが死ぬと無毒化する。でも、人体とかに入った毒とかはどうしようもない。解毒薬を飲まない限り死ぬだろう。
ここは依頼主の牧場近くの森。最近ポイズンウルフが現れたから討伐してほしい、というのが今回の依頼だった。
牧場の柵の中では、脅威が去ったと確信したのかヤギたちが安心して草を食んでいる。今回は報酬にヤギの肉とチーズとミルクついてるからね。難易度事態は低いけど受けちゃった。アルニカちゃんとユグル君には怖い顔されたけど......。
シキミさんは牛乳好きだったけど、嗜好品扱いだからヤギミルクにハマったんだよ!あぁ、牛乳ほしい......。
牛乳、飲みたい......。
「終わりましたわ。毛皮と牙と爪。あと、頭を剥製にするのが貴族の間でブームらしいので切り落としておきました。」
「ナイスエリン。それじゃ、依頼主に報告しに行こう。」
森、といっても牧場近くで戦闘したから迷うことはない。私たちは依頼主に戦利品を持って報告しに行った。
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「おお、ありがとうございます!これでポイズンウルフに悩まされて眠れないということがなくなります。ささ、昼食がまだなら是非一緒にどうですかな?」
「ありがとうございます。是非ご相伴に預からせていただきます。」
「うむ、うむ。お主らは礼儀正しく、よくいるAランクの高慢ちきとは違うのぅ。」
Aランク、それは試験なしでもいける魅惑のランク。その頃には名も売れていてそれを盾に傍若無人の行いをするやつらもいる。
......もちろん、処罰されるが落ちたとしてもまたAには何もなしで戻ることができるため、処罰を厳格化する必要があるという声も上がっていたりする。
「それでは、質素なものではありますがどうぞお食べください。」
おじいさんはにこにこしながら私たちの昼食を持ってきてくれた。黒パンにヤギのチーズを溶かしてのせたものと、新鮮なミルク......。これだけでも、このおじいさんにとってはごちそうだ。
というか、金持ちなのが私たちなだけなので、むしろこれが基本なのだ。
「ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、コカトリスとバジリスクの肉をどうぞ。食べきれないくらいあるので......。」
「な、なんと。それはそれは......。」
おじいさんは喜んで受け取ってくれた。肉類なんて滅多にとれないもんね。
そうして優雅な昼食を済ませ、私達は依頼主と別れを告げ、ギルドに向かった。
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受付嬢さんに討伐成功の報告をする。
「シノノメです。ポイズンウルフの討伐、終わりました。」
「お疲れ様です。今回のポイズンウルフ討伐の成功金である銀貨500枚......なんですが、依頼主さんから金貨を1枚渡されています。ぜひまた頼みたいので、だそうです。」
んん、おじいさん優しい......ありがとう......。
「次は、剥ぎ取りの査定ですね。こちらで行いますので素材をお渡しください。」
差定にはAランクで銀貨150枚が必要だが、査定後は買い取ってくれるのでそんなにショボい素材じゃない限りは元が取れる。ので迷うことなく毛皮と牙と爪、そして頭を渡した。
「それでは、しばらくお待ちください。査定が終わり次第呼び出します。」
というわけで酒場で飲む。水を。
は?酒?飲めないしのみたくない。不味かった。
アルニカちゃんもユグル君も不味かったらしく飲むのをやめた。
ので三人で水をちびちび飲む。
みずおいしい
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「お待たせいたしました。ポイズンウルフの毛皮、牙と爪、そして頭ですが、どれも最近減っていて需要があるので、三倍くらいしても売り切れます。」
「へ?需要、そんなにありましたっけ?」
「はい。......実は、噂であったペイギア教国とヴァルク帝国の戦争が実現したため、防具や武器の売れ行きが跳ね上がって......。では、こちらが査定額を差し引きしたぶんである金貨49枚と銀貨500枚です。」
「ありがとうございます......。」
なーんか、空気がピリピリしてたと思ってたけど、やっぱり始まってたのか。
昨日の今日だけど、噂になったからおっぱじめちゃえってどっちかが思ったんだろうなぁ......。
そうなるともうちょっと離れた方がいいな。
今日帰ったら相談するか......。
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夜。
そう、夜。
酒場も閉まる夜。
そっと私達は国を......出ません。
無理です。
城門閉まってます。
バレたら犯罪者へゴートゥーです。
ではなぜ起きているかというと、深い意味もありません。
ちょっとホームシック擬きにでもなってるのだろうと勝手に考えてます。
とりあえず、次に行く国への移動は私たちだけにする予定です。
ギュスくんの寝顔をぼんやり眺める。
子供っぽいあどけない寝顔......かわいい。
ちゃんと大きくなるまで、私が守らなきゃね。
と、自分にプレッシャーを与えつつ、オフトゥンを無理矢理頭から被ったあと、すべての思考を放棄して眠りに落ちることにした。
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