第三十二話:Fランク冒険者
今日も今日とて薬草探し......はぁ。
まさか最低ランクのFには薬草探ししか無いなんて思ってもなかったよ......まあ、こうして外でサボりながら集められるのはいいけどさ......。
ユグルくんとアルニカちゃんはとっくに飽きて取っ組み合いをしている。周りからみれば殺しあいにも見えるが、いたって健全に技を磨きあっているだけだ。
春になると冒険者を志願する人間は多いらしく、近所の薬草採取ポイントは本当の初心者がたくさんいたから私たちだけこっそり蛮族も出やすい場所だが質のいい薬草が採れる場所に来ている。今採っている薬草はヒーリングポーションの基礎となるカンゾウ。あっちにもある薬草だけど、それがどうポーションになるのやら......。
「クッソ!またかよアルニカ!」
「また、とはなんですか?ちゃんと見極めれないあなたの不手際でしょう?」
「んだと......?」
おっと、また喧嘩しそうになってる。なかなか思うように動けなくてイライラしてるのはわかってるけど、やめてほしいなぁ。
「バインド」
「「!」」
即座に雷魔法のバインドを放って二人の動きを止める。
「アクア」
「ぶっ!」
「きゃっ!」
水魔法で頭を冷やしてやる。これでもう十回目だ。
「......十回目だよ、アルニカ、ユグル」
「も、申し訳ありません......」
「悪かったよ......」
二人がしゅんとしたので許す。が、そろそろ本気で上がらねばならない。
「そろそろ上がって蛮族討伐をしたいよねぇ。」
「そうですね。体が鈍って仕方ありませんわ。」
「俺も、もやもやする。」
そんなことをぶつぶついいながらカンゾウを見つけては採って見つけては採って......。
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お昼になって、私達は川辺で休んでいた。魚もいるので竿を作って釣りをする。今日の晩御飯を増やしたいしね!
「きゃああーーっ!!」
せっかくの釣りの時間を楽しんでいたのに、悲鳴で魚が逃げた。あぁ、晩御飯......。
「近いな」
「ユグルくん、距離は?」
「そうだな、5mってところだな。」
「よし、行こう。」
悲鳴をあげた理由は恐らく蛮族か獣に初心者が襲われたから。獣なら肉か皮がてにはいる。売ればお金になるし、晩御飯にもなる。よーし!今晩はステーキだ!え?さっきから晩御飯の話しかしてないって?当たり前じゃん!食料はたくさんあった方がいいの!
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「ひ、ひぃ......」
杖を持った女の子が、蛮族に囲まれている。
ちぇっ、外れか。蛮族は倒してもいいけど、私達が倒したってバレると困るから埋めるしかない。
金にもご飯にもならないつまらない相手だ。
ん、よく見たら男の子が倒れてるな......。女の子をかばったがために瀕死なんだな?
姿を見せるまでもないから、さっさと倒して回復魔法を......げ、目があった。
「た、助けてくださいっ......」
女の子の助けに蛮族が反応し、こちらに向き直る。
「目を閉じて!何かあるまで目を開けないで!」
襲い掛かる蛮族の攻撃をかわしながら女の子に指示する。女の子はすぐに言うことを聞いて目を閉じた。
よーし、これで目撃者はなし。手でアルニカちゃんとユグルくんに指示を出して即座に蛮族を蹴散らしてもらう。
ここにいるのはゴブリンやボガードといったザコしかいないから、アルニカちゃんもユグルくんも舐めプして片付けた。
「跡片付けをよろしく。私はこの子と話す。」
読唇術でアルニカちゃんとユグルくんに伝え、私は女の子へと歩み寄った。
「もう大丈夫だよ。」
「ふぇ、ほ、本当ですか......?」
「うん、追い払ったから。」
「あ、ありがとうございます......。」
安堵の表情を一瞬浮かべるが、すぐに青ざめて半ば叫ぶような声を出した。
「わ、私のパーティーの一人が、じゅ、重傷で......!!」
「わかってる。早く連れていこう。」
私はすぐに倒れていた男の子を抱える。幸い血が止まっていて、息は浅いがしているところを見ると無事なようだ。
と、そこにアルニカちゃんとユグルくんが戻ってきた。
「あ、自己紹介がまだだったね。私達は【クンツァイト】って言うFランク冒険者。私はリーダーのシノノメ。こっちはエリン。男の方はジョエ。」
「わ、私達は【小さな翼】です。私はヒーラーのユアです。私を庇って倒れたのは幼なじみのペイツです......。」
ユアちゃんたちは、同じように薬草採取をしていたが運悪く蛮族に遭遇。他の人が逃げるなか逃げ損ねて追いかけられたらしい。
そして、ペイツが倒された直後に私達が来たと......。
「ちゃ、ちゃんと救命証明書を書きますね!」
救命証明書。それは命を救われた人間が命を救われたことを証明する紙。命を救った相手に冒険者ランクアップへのポイントや、お金がギルドから送られてくるシステム。昔は不正を働くやからもいたそうだが、今は不正をしようとすると紙が黒く溶けて灰になってしまう魔法がかけてある。
書くことが義務ではないが、書いた方が両者共に気分がよくなるので、書く方がいいとされている。
「ありがとう、ユアちゃん」
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ユアちゃんが救命証明書を提出し、瀕死だったペイツくんは即様にヒーラーとポーションで治してもらっていた。
私達は薬草採取の報告をするために受け付けに行くと、受付嬢さんに薬草を渡す。
「これ、今日のぶんです。」
「あら、おつかれさま。ところで、救命証明書を受け取ったけど、ポイントか金銭、どちらにしますか?ポイントなら昇格、金銭なら銀貨500枚です。」
「ポイントで。」
「かしこまりました。では、昇格おめでとうございます。」
そう言って、受付嬢からEランクギルドカードとランクアップ報酬の金貨一枚を差し出した。
私は代わりにFランクギルドカードを返却する。
そして、懐に金貨一枚とギルドカードを大切にしまった。
ひゃっほう、これでやっと蛮族討伐とかに参加して、暴れまくれるぞ!!




