第三十一話:ほとぼりが覚めたので冒険者になる。
ダンダリオン共和国についてからは毎日忙しかった。
まず、家の購入。中心部を狙って商人と徹底抗戦。ごねたり指摘したり反論されたりしながらも、値段を金貨250枚まで落とすことができた。最初の値段は750枚。ふふ、ほとんど先生のお陰だけどね。
ちなみに、ここでの貨幣は基本的に硬貨だけだ。金貨と銀貨、それと銅貨の3つ。銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨1000枚で金貨1枚の価値がある。金銭面での問題はなにもない。魔王の財産のほとんどを私のマジックボックスに突っ込んであるからだ。マジックボックスって言うのは、空間にあるほぼ無限収納が可能な箱だと考えておいてほしい。なかは時間停止の効果もあるから、食料もかなり詰めてある。
そんなこんなで家具を買い足し、食器を買い、衣服を......としているうちに1年が経った。
魔王討伐の騒ぎは消え、何となくの日常が戻ってきた。ある者は蛮族を討伐し、ある者は畑を耕し、ある者は物を売り......それが人間の生活サイクルである。
私たちもそれにならい、1年間は近所の畑を手伝い、商品の買い出しやらをしていたが、半年くらいたった頃におきた変化だけは見逃さなかった。
それは、ちょうど冬が猛威を振るっていた頃で、アルニカちゃんが買い物から帰ってきた日だった。
その一言は私たちを怒らせるのに十分だった。
「非合法ではあるが、人間の貴族や一部の王族で魔族を奴隷にして飼っている。」
そう、今までなら絶対にあり得ないことだ。奴隷は奴隷落ちした人間にやらせるのが基本で、誇りある魔族は奴隷を選ぶくらいなら死を選ぶことのほうがほとんどだ。タブーではないが、魔族を奴隷にしたところで人間の奴隷と代わらないから、わざわざ逆襲されやすい魔族なんかを奴隷にするのはよっぽどの変態かネジが足りてない奴だろう。
「して、奴隷にされていたのは」
「......ど、奴隷にされていたのはバルバロスの女性です。」
「......!!」
奴隷になるくらいなら死を必ず選ぶ魔族が奴隷になっている。アルニカちゃんの観察の結果、首につけられた魔法道具で自害を不能にし、反抗しようにも命令に従うようになっているらしい。
残念ながら、その人を救うのは不可能だと悔しい思いをしながらも決定した。
せっかくここまで来たのに、今台無しにしてしまうと元も子もない。
そのあとも、奴隷にされた魔族を見かけたが、公にしすぎると国にしょっぴかれるようで、コソコソとその魔族をつれていることがよくあった。
そのたびに私は確実にそいつをぶちのめす方法を頭のなかで何度も試したりした。
ストレス解消になっていいよ。おすすめ。
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さて、季節は巡りほとぼりも覚めたので、いよいよ冒険者ギルドで登録するため私とユグルくん、アルニカちゃんの3人で【猫の尻尾亭】に訪れた。【猫の尻尾亭】の中は冒険者ギルドにネコカフェを足したような建物で、私はうっかり猫をモフモフしまくってしまった。
うん。うっかりだよ?
あ、受付はさっさと済ませたよ。
パーティー名を考えてる最中なんだけど猫が膝に乗ってきて邪魔してくるから考えられなくても仕方ないよね!もふもふ!
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アルニカちゃんとユグルくんにげんこつで怒られたので真面目に考えます。
うーん、宝石の名前でもつけようかな?この世界に宝石がどれくらいあるかはわからないから、先生の知識を借りて片っ端から名前をあげてみることにした。
「ルビー......ダイアモンド......サファイヤ......」
さすがにぱっと思い付く定番の宝石はここにもあるらしい。
「タンザナイト......ムーンストーン......ペリドット......」
先生は世界の宝石を全部知っているから、適当に答えない。
すでに25種類言った気がする。それに、ブルースピネルとか宝石の前に色がついている物を抜けば40種類くらいじゃないかな?あと10種類くらいしか......
「アンバー......ソーダライト......クンツァイト......」
「シキミさん、今なんと?」
「え?クンツァイトだけど......」
クンツァイト。別名カッター泣かせの宝石。それほどまでに研磨は難しいものだそう。
それと、クンツァイトは放射線を照射されピンクを濃くして売られることが多く、見分けもつかないからトレーサビリティのもの以外は人工着色と判断しないといけないそうだ。宝石自体はとってもきれいなピンク色をしている。
「クンツァイトと言う宝石はございません。」
「なら、それにするかぁ。」
と言うわけで決定!クンツァイト!聞かれたら適当に答えておけばいいか。異国の花の名前とか、そんな感じで。
ギルドに申請書を届け、申請費の銀貨5枚を支払ってはれて冒険者となった。
依頼は明日から受けれるらしい。
楽しみだなぁ......!




