第二十九話:魔王城陥落
私たちは、すぐさま更衣室へ向かい着なれた服をしまって、ボロボロの服へと着替えた。
肌触りがいい服から、ごわごわチクチクの服へと変わった。
うう、なれてないぶんなんだかかゆいな......。
そんな感想を一人思っていると、同じようにボロボロの服を着たアルニカちゃんとユグルくん、先生とギュスくんも更衣室から出てきて似たような感想を漏らしていた。
これからの方針だが、まずは適当な場所から魔族領を出てリィン王国から離れた国へ行き、身を隠す。ほとぼりが覚める一年後に情報収集のために私とアルニカちゃんとユグルくんで冒険者になる。しばらくその国で活動して、それなりに強くなったふりをしたら国を転々とする。そして機会をうかがう。時期が来れば魔王城を取り戻して返り咲く。完璧。
でも、失敗は必ずどこかで発生する。それは仕方ない。だけど、やり直しは効かない。その失敗は即座に潰して無かったことにしないとギュスくんや魔族の滅亡に関わってくる。私は深呼吸して、目の前にいるみんなを見つめる。
「これより、人間の国への逃亡を開始する」
「「「「はっ」」」」
ギュスくんは言わなくてもいいんだよ?
「我々は奴隷として扱われ、この隙に命からがら逃げ出した人間とする。私とアルニカ、ユグルは腹違いの姉弟とする。ユーギアとギュスは親子だ。」
ギュスくんの変化にあわせて先生が親っぽく変化する。このほうがギュスくんの負担にもならないし、先生にとっていろんな姿になるのは苦ではないからね。
「目標は、ダンダリオン共和国。この国の辺地ではなく、なるべく中心へ住むことにする。」
「それはどうしてだ?」
ギュスくんが疑問を口にする。
「辺地へ住めば変わった人たちだと覚えられる。そして、その時に次期魔王がいなくなったとしたら怪しまれやすいだろう?」
「......確かに。人を避けてる時点で少し怪しまれますね。」
ギュスくんはそういうのすぐわかるよねぇ。
「まず、魔族領を出たらリィン王国を避け、ヴァルク帝国も迂回する。蛮族が出やすいようだが、我々の相手ではないからな。リィン王国は私が召喚された場所だ。万が一顔がバレたらヤバい。ヴァルク帝国は行ったことはないが隣国だからな。道中の足は私のアンデットどもにしてもらう。」
「主、それでは魔力が持たないのでは?」
従者だからその辺よくわかってるなぁ、アルニカちゃんは。
「あぁ、それなら安心してくれ。みんなの恩恵のお陰で魔力はほとんど使わないんだ。」
「かしこまりました。」
「さて、そのあとの事はまたおいおい話す。そろそろ勇者たちが来るからな。さっさと離れていこう。」
私たちは、外へ出るとゾンビクモを召喚して食料や寝袋を背中にのせる。小さくても、力持ちのかわいいやつだ。ちなみに有志だが、ずっとお供すると決めたらしく、杖によって昔の自我を残している。まあ、ほぼ召喚状態だ。気にしてない。
ゾンビクモ......クモちゃんは荷物をもらうと自分で安定する場所に乗せて、仲間に縛ってもらう。そうやって次々と縛り終わると、準備ができたのかこちらに向けて腕を一本あげて合図する。
「では、これより移動を開始する。」
「水分や食料がなくなった場合は私アルニカにお申し付けください。」
「休憩は魔王城が......陥落したと報告が来たら、だ。」
「......」
空気が重たくなる。だが、事実なのだから仕方ない。
「ギュスくんは私の前に乗ってもらう。では各自ワーウルフに乗って。」
私たちを囲むようにワーウルフを配置し、クモ達はその後ろについて行く。
私たちは魔王城を振り返ることなく、まっすぐに魔族領の外を目指した。
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その夜、魔王城が勇者によって制圧されたことを知らせに、ゾンビカラスが戻ってきた。
幸いその頃には魔族領を抜けていたから、徒歩になっていた。そっとカラスを消して、皆に事実を伝える。これからは夜に松明などを着けずにゾンビワーウルフを疾駆させ距離を稼ぐ。そして、三日後にはダンダリオン共和国に到着する。
私たちは、休憩のために水を飲み、気付けに干し肉をかじりつつ、夜の荒野を駆けていった......。




