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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

後味悪いけど、それでも聞きたいの?

作者: 綾瀬紗葵

 夏のホラー企画参加作品。

 今年は短編として合計7作品上げる予定です。

 こちらは6作品目。

 猟奇描写があります。

 また倫理的に色々と問題のある話です。

 あくまでも、創作の世界での出来事です。

 お読みの際は自己責任にて宜しくお願い致します。

 また、タグを見て苦手意識を感じた方は読まない方向でお願い致します。



 ジェットコースター事件の真相究明のためのインタビューに応じて欲しい?

 ご苦労様。

 よく、私まで辿り着きましたね?

 随分無茶されたでしょう。

 フリーのジャーナリストだから、潰されてもいいって?

 その、心意気は買いますけど……報道できなかったら、意味ないじゃないですか。

 っていうか、たぶん、できないと思いますよ。

 記事、買ってくれる新聞社も出版社もテレビ局もいないでしょうね。

 自費出版でも、SNSで流す手もある、ねぇ?

 それだと、妄想としか認識して貰えないと思うけど……。


 まぁ、いいか。

 関係者以外で、知ってる人間が一人ぐらいいても。

 覚悟はいい?

 本当に?


 後味悪いけど、それでも聞きたいの?


 そう。

 じゃあ、話すわね。


 父の実験はご存じ?

 え!

 知らないの?

 えー。

 じゃあ、話すの止めようかしら。


 私のこと、どうやって知ったの?

 元スタッフさんから?

 あーなるほどね。

 そっちからか。

 口止め、したんだけどね。

 口止め料も払ったんだけどね。


 誰から、聞いたの?

 ふーん。

 教えてはくれないんだ。

 いいわよ、別に。

 調べれば解ることだから。


 え?

 追求するわよ。

 約束を破ったんですもの。

 口止め料の返金は必須ね。


 幾ら払ったって?

 ふふふ。

 こちらの質問に答えてくれない、貴女に。

 話す義理はないわ。


 取りあえず、父が何をしているかはご存じ?

 ええ、そうね。

 老人性痴呆症に関する権威って言われているわ。

 薬の開発にも携わっているのよ?

 結構な金額の資金を提供しているの。

 祖父母が痴呆症だから、身につまされているのよね。

 出資しているホームに入れるだけで、子供としては一度も会いに行っていないけどね。

 子供としては、ね。


 ……まぁ、ね?

 そうやって、お金を出しているから、当然実験とかにも口を出しているのよ。

 っていうか、契約書に盛り込んだらしいわよ。

 自由に口だしさせろってね。


 あの、実験は。

 ジェットコースターを使った実験はね。

 昔の記憶を呼び起こさせる刺激を与えたことによる、脳活性化を精査する目的……だったかしら。

 正確じゃないかもしれないけれど、そんな感じ。

 難しい専門用語を並べ立てられるから、今一つ解りにくいのよ。


 とある、老人施設に掛け合ってね?

 その頃は、資金繰りに四苦八苦していたらしい裏野ドリームランドに話をつけたらしいわ。


 遊園地=昔の楽しい記憶。

 ジェットコースター=刺激的な体感。

 

 ってな感じだったらしいわよ。

 お化け屋敷と迷ったらしいけど、お年寄りには刺激が強すぎるんじゃないかって、ジェットコースターになったんですって。

 結果的には、お化け屋敷の方がマシだったんじゃないのかしらね。

 お化け屋敷なら、ショック死しても、まさか、全員死亡はしなかったでしょう。


 全員死亡って情報はなかった?

 まぁ……そうでしょうねぇ。

 当時は判断が難しかったと思うわ。

 それでも、流れた情報に統一性はなかったわよね?

 何で? って思う間もなくく、報道規制が引かれちゃったから、貴女もそこまで拘っているんでしょうし。


 24名乗りのジェットコースター。

 私は一番後ろの席に乗ったわ。

 最後は一番前になったけど。

 事故が起きた時は一番後ろだったわね。

 よく、見えたわよ。

 本当に、よく、ね。


 動き出してね?

 登り始める時、がたん! って音がしたの。

 それはいいのよ。

 実験っていうことで、何度か試した時にも、同じ音がしたから。

 

 でもね、その後。

 すぐに、がたたたたたっ! って、大きな振動があったの。

 今までは一度もなかった振動よ。

 私は、念の為と思って合図をしたの。

 止めて下さいって、あらかじめ決めていたサインを送ったわ。


 それなのに。

 係の人は無視。

 父に至っては、笑顔で手を振り返してきたのよ。

 

 上がっている最中も、ががががっ! がががががっ! って明らかに問題がある異音が鳴り続けているのよ。

 私以外は、初めて乗る人達だったから、緊張して気がついてもいなかったみたいだけどね。

 後ろ振り返って、今度は手で大きく×を作って、最後の警告をしたのに。


 父は同じように手を使って、○、って返したのよ。


 父はね。

 知っていたんだと思う。

 むしろ、事故を計画したんだと思う。

 選ばれた老後施設は、かなり、評判が悪かったから。

 

 その老後施設、どんな症状でも受け入れるって、ホームページに書かれていたわ。

 おかしいでしょう?

 普通は、結構細かく制限しているのよ。

 何か問題があった時のためにね。

 ここまでは、っていう境界線をきっちり決めておくの。

 表向きはそこまでしてなくても、裏ではちゃんと暗黙の了解ってものが存在する。

 だけどその施設は、全くそういった基準を設けていなかったの。


 しかも、定員数30人で、常に空きがあるのよ。

 安価で有名だから、すぐに埋まるはずなのにね。

 それだけ、亡くなる方が多いってことでしょう?

 

 そして、ジェットコースターは天辺まで上ったわ。

 後は下るだけ。

 三カ所、頭が下に来る場所があって、そこはなんともなかった。

 一番スリルがあるって評判が高かった場所も問題はなくて、私は疑心暗鬼が酷かったかな? って頭の片隅で思った。


 次の瞬間だった。


 がごっ! って何かが外れる音がして、二人の人が飛んだわ。

 続けざまに、がごっ! ががごっ! ががががっ! ってね。

 立て続けに音がして、その都度人が飛んだの。

 合計で八人はジェットコースターの席から落下したわね。

 

 ジェットコースターはそれでも止まらなくって。

 必死に席にしがみついた人がいたにも関わらず、引きずりながらスピードを落とすことなく走ったわ。

 

 席にね、しがみついてた人。

 私の目の前の席にしがみついていたのよ?

 途中で、視界が真っ赤になって。

 ジェットコースターが、やっと止まってハンカチで目元を拭いたら。

 まず最初に、その男性の姿が目に入ったわ。

 下半身が千切れて、何が起こったんだ? って、きょとんとした顔の男性の姿が。

 

 シートは血だらけで、私も血だらけで。

 隣に座っていた人は、楽しいのです。おかしいのです。怖いのです。楽しいのです。おかしいのです。怖いのです。面白いのです。楽しいですか? って、そんな感じの言葉をずうっっと呟き続けていた。


 死亡したのは、下半身喪失した男性。

 それから、落下したうちの三人。

 一人は頭部破裂で即死だったらしいけど、後の二人はかなり悲惨だったみたい。

 死亡確定したのは、何日も、何十日も経ってからだったらしいから。


 その日は、本来休園日でね?

 スタッフとその家族ぐらいしかいなかったから、事件は表沙汰になるはずじゃなかったの。

 テレビ報道までされる事件になったのは、被害者の家族にまっとうな人がいて、密告したんだと思うわ。

 だって、警察が入ったの、三日後だったもの。

 

 事故の次の日と、その次の日。

 遊園地は開園していた。

 さすがに、ジェットコースターは調整中にしてあったけどね。


 事故の後、父は嬉しそうにデータを整理していたわ。

 今度は、事故が起こらないデータも欲しいなって、言っていたから。

 やっぱり最初から事故は計画されていたのよ。

 実の娘である、私を乗せた上で。


 私も、何回も、何十回も、何百回も、何千回も、何万回も、事故の話を強要されたわ。

 警察に、じゃないわ。

 父親に、よ。

 警察の尋問はなかったわね。

 たぶん、他の被害者もなかったと思うわ。


 被害者にインタビューしたんでしょう?

 おかしいと、思わなかった?

 これで、生きているって言えるの? って。

 そう感じたでしょう?

 死んだ方がマシだったって、思うわよねぇ。

 特に周囲の人間は。


 皆、事件のせいで痴呆が絶望的に進んでしまったから、辻褄の合わない話ばかりだったはずよ。

 貴女にした話は、全部。

 痴呆が悪化した時に語られる妄想だったの。

 真実の欠片が、もしかしたら僅かに含まれているかもしれない。

 でもね。

 事実ではないから、全員言っている事が違うのよ。

 当たり前じゃない。


 そうそう、最後にね。

 私。

 父に、若年性痴呆症って、言われているの。

 老人性痴呆症の権威と言われる父に。


 ね?

 ……後味、悪かったでしょう?



 ざまぁがない!

 書き上げて衝撃を受けました。

 

 誰が、何処まで、正常なのか。

 

 を突き詰めて頂けると、後味の悪さが倍増になるかと思います。

 

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