探しもの
反撃することは、大切だよね。
『私は私。何者でもない。貴方は貴方しかいない』
どこかで聞いた臭いセリフを思い出した。心は1ミリも鳴かない。
いや、別にこれを聞いてなにも思わない理由ではない。この言葉が胸に刺さった時もあった。たしか、中学生の時、初めてこの言葉を聞いて「このままの私でいいんだ」って喉を枯らして泣いた。
でも、今となってはただの綺麗事でしかないと思う。
クーラーのきいた部屋で私は目をつぶり一つ伸びをした。
「私が私なんてごめんだ」
静かな部屋にか弱い声が響いた。そして、苦しくなった。泣きたくなった。叫びたくなった。こんなに汚い私なんか私じゃなければいいのに。誰にも見て欲しくない、誰も見てくれない。
私が必要とした貴方は私から離れたけど、私の中の貴方は消えないまま。
「あー。寂しい。」
私が貴方ならいいのに。私は手を伸ばしクーラーの温度を1度下げ、枕にぐしゃぐしゃになった醜い顔を埋めた。
〝ねぇ〟
下から聞こえるお母さんの声。私はそれに返事はせず、繋がる言葉を待った。
〝休みの日くらい遊びに行きなさいよね〟
いらだちに増されたいらだち。うるさいな。ほんとうるさい。そのくらい自分で決めるよ。てか、遊ぶ相手いたらとっくに遊びに行ってるし。
・・・なんて友達がいないのは自分のせいなのに。その時の感情だけで反発して、虚しいやつ。別にもう独りなんてなれたからいいよ。
あぁ、喉乾いた、私は思い体を起こして空気がべたべたと張り付く1階に下りた。
冷蔵庫を開き、りんごのジュースをコップにあけすぐさま自分の部屋にこの暑い空気から避難しようとしたとき、あいつと久しぶりにあってしまった。最悪、瞬間に思った。
久しぶりに見た兄は相変わらず私を見下した。
「お、かえり」
「・・・」
無視かよ。とは言えず、大人しく二階へいこうと一歩踏み出した。
「お前さ、あいかわらずブスだな」
私は笑った。頬をあげた。あぁ、涙が出そうだ。どれだけ努力してると思ってるんだよ。辛い。辛い。生まれ変わりたい。
えへへ、私は笑って自分の部屋へ駆け込んだ。
くそ、くそくそくそくそくそくそ。くそ。
背中からずりずりと壁つたいに地面に下がっていく。悔しい。
ただ、人を傷つけるだけの言葉。だれかのためになる訳でもない。何のために私に言ってるんだろうか。
そして、私はスマホを手に取った。
Twitterを開く。よし、打てた。
「兄、うざい。くそ。」