元婚約者来襲
「こんなに働いているのにお給金が安い」
「自炊すれば貯金できるのかなあ」
「明日から自炊する?この料理、再現できるかな」
お城で働く可愛い女官さん3人組。明日もご来店お待ちしています。
「いらっしゃいませ・・・殿下!」
「久しぶりだな。食事を頼む」
「かしこまりました」
「アレクは領地に帰るらしいな。ロバートは王都の騎士団に入って顔も出さない」
「弟は跡継ぎですし、ロバートは忙しいのでしょう」
「この店には顔を出しているらしいじゃないか」
「相変わらず耳が早いですね。お待たせしました。カボチャのニョッキ、カブとサーモンのクリーム煮でございます。」
「懐かしい、母ちゃんの味に似てきたじゃないか」
「兄貴、それ誰かに聞かれたらまずいから」
「今、お前だけだから良いだろ」
「それでカンナちゃんとは仲良くしているの?」
「最近喧嘩が増えちゃってさ、あれ、倦怠期ってやつ?」
「ノーコメントですわ!あーあ、せっかく兄貴のお嫁さんになれると思っていたのに」
「あの時は悪かったな。ついつい遠慮のない怒りを向けてしまった」
「一発殴らせろ!」ぱこっ!!
「オヤジにも殴られた事ないのに!」
「ガ○ヲタか!」
「この椅子赤く塗ろうぜ!客の回転率が3倍速くなるぞ」
「そんなわけないでしょ!」
今世の婚約者は前世では兄貴だった。
初めて会った時には懐かしくて嬉しくて…なのに年々残念になっていく。
兄貴の嫁になるのも悪くないと思っていた。二人きりであれば遠慮なく話せるし、見た目はキラキラ王子様だし、性格だって多分マトモだ。
ただし、口論になる度に「俺は親を看取って、孫の顔をみてから死んだのだから尊敬しろよ」と言い出すところはキライだけど。