顔合わせ
「ベルに似合うのはやっぱり赤かしら、このピンク色も良いわね」
「青や、黄緑色もさわやかでいいわ」
固まる私を前ににこやかに結婚式の衣装について語る、お母さまとウォルフのお母さま。
昨日、営業後の夕食屋に弟が両親を連れてきた。
【家出した、彼氏と同棲していたら親がやってきた←イマココ】
というスレタイで大手掲示板に投稿したい気分だと思いつつ出迎えた。
カウンターに弟、ウォルフ、両親が座る。食事を出す。
今夜のメニューは、タラの開きの揚げ物、さやえんどうとカブが入ったトロミ付きコンソメスープかけ。
ウォルフと両親の顔合わせは和やかに進んだ。
「人がいる場所では必ず物の動きが発生する。貴族が滅びても商人は滅ぶことはないだろう。商人の嫁になるというのなら喜んで送り出すぞ」
とお父様が言うと
「ベルはなんでも器用に熟すけど、面倒な事を押し付けられやすいのよねえ。貴族の世界では生き辛い子だと思ってたわ。ウォルフさん、娘をよろしくね」
とお母様が続ける。
むしろ商人の嫁、推奨でした。
まあ、今から国内の貴族探しても、良い人が見つかる可能性は無いですし。
たとえ反対されたとしても、ウォルフと別れるつもりは無いですが。
「ウォルフさんなら年齢のつり合いもとれるし、性格も悪くはないですからね。腹黒い所はありますが、純粋すぎる姉さんを守ってくれるなら反対はしませんよ」と弟。
弟、フィルターかかりすぎ!純粋じゃないし…前世と年齢合わせたらアラフィフ。
「ところで結婚式はどうするんだ?」と父に聞かれて
「えっと…届けを出すだけでいいかなぁ」と答えたら
「はぁ?何言ってるの?」…ウォルフ、父、母、弟の声がハモった。
結婚式とか、結婚式とか恥ずかしい。
ドレスも令嬢時代に来ただけでおなか一杯です。
ウエストを過剰に締め上げる窮屈なコルセットとか、
クジラの骨とかを使ってフンワリさせたドレスとか
なんの拷問でしょう。
その日のうちに、ウォルフの実家のルーデル商会に拉致され一泊の後、
商会内で両家の顔合わせと、結婚式の打ち合わせが行われた。
婚約期間40日を置いて6月に結婚式を行う事になった。




