まあ、いっか
港町マルセオから王都まで駅馬車6日間の旅。
ウォルフさんと一緒に王都に帰ってきた。
旅の途中で、今までの事を彼に話した。
彼は何も変わらなかった。
家族との縁を切った事を話したら、俺が新しい家族になると笑ってた。
王都についたら、新しい王太子妃の噂で持ち切りだった。
「新しい王太子妃候補は年上の未亡人だって?」
「なんだか地味な人らしいね。前は清楚で可憐なお姫様だったのに」
「あら、年上の女房は金のわらじを履いてでも探せというわよ」
否定的な物からやや好意的な物まで様々だ。
夕食屋に着くと、弟が店の前を掃き掃除していた。
ロバートから連絡を受けて、そろそろだろうと待っていたらしい。
すぐに窓を開けて風を通し、3人で手分けをして掃除をする。
明日から夜の営業を始める。今後に向けて、パン職人の募集もかけておく。
湯を沸かして、交代でたらいで行水をする。
王都より温泉のある地方を選んだロバートの気持ちもわかる。
今夜は有り合わせの物で調理をするしかない。
オーブンで干物の魚を焼く。
ワカメとミョウガのスープを塩コショウで味付ける。
パンは間に合わない。チャパティー的な感じにする。
粉と水とオリーブオイルを混ぜてこねて少し寝かせて、伸ばして焼く。
今夜の食卓が寂しすぎる。男2人はこの量じゃ絶対足りない。
店の前に馬車が止まる。代わりに出迎えた弟が固まった。様子を見に行くと
「よお、アレク、ウォルフ久しぶり。イザベルは」と王太子とオリビアさんが現れた。
「こんにちは。久しぶりね」とオリビアさんに肉と野菜と豆腐が入った籠を渡された。
自由過ぎるだろ!と思ったが食材は有り難く頂戴する。
鍋に火をかける。昆布と豆腐を入れる。
ゴマのすりおろし、刻みミョウガ、塩、レモン汁、有り合わせの調味料を準備する。
鶏肉を焼いて、程よい大きさに切る。
野菜をスティック状に、レモンとオリーブオイル、塩で作ったドレッシングをかける。
「美味しい、食材を持ち寄って手早く作って温かいうちに食べる。最高よね」とオリビアさんが言う。
「この人、姉さんより強い。逆らえない感じがする」と弟がぶつぶつ言っている。
「俺を尻の下に敷き続けてるからな。良い嫁だろ」と殿下が続ける。
「問題はこれからなのよ。最初の印象が悪いんだもの。後悔はしてないけど」とオリビアさんが艶然と笑う。
これからの事を話し合い、食事が終えたらみんな帰っていった。
後片付けをしていたら「まだ寝ないのか?」とウォルフさんが後ろからギュッと抱き着いてきた。
振りほどいて振り向くと、ニコニコしている。
ウォルフさんがいて良かったと思うのは、一人になって寂しいせいなのかな。
まあ、いっか…と思った。




