以心伝心
「旗を献上したら、王太子をオリビアさんの民宿まで案内する羽目になった」
とウォルフさんが話す。
ウォルフさんは、教わった温泉宿を全制覇し、最後に訪れたリズミクの温泉民宿で女将のオリビアさんに会った。
王宮に品物を納品する事を話したら、オリビアさんから王太子に渡してほしいと一枚の旗を託された。
「旗ですか?手紙とかではなくて」
「旗だよ。温泉までの道筋に不思議な模様の旗があっただろう。あれだ」
王宮に品物を納品するとはいえ、ただの一介の商人だ。
王太子に会える伝手は無い。
納品した物も王宮の職員が管理するものであり王太子に渡るわけがない。
と思いつつ、駄目元で納品物に旗を加えて提出した。
「よくそんな得体のしれないものを納品しようと思いましたね」
「カン。オリビアさんは信用して良い人だと思った」
数日後王宮に呼び出され、行ったら王太子殿下がいて、やたらと屈強な騎士団に囲まれ、早馬に乗せられ、オリビアさんの宿まで案内させられた。
王太子殿下がオリビアさんを宥めたり、謝ったり、口説いたりするのを横目に、
同行した騎士団の仲間とも打ち解け、
精神的疲労を癒さねばならぬと温泉三昧の生活を堪能していたら、
殿下に突然呼ばれて、港町にいるイザベルさんに手紙を渡すよう依頼され、
郵便馬車に乗せられた。
「でもイザベルさんが君だったとは、探さずにすんで良かったよ」
「知っていて来たんじゃないんですか?」
「馬車旅の疲れを癒したかったんだ。美味しい料理と君の笑顔で。」
何はともあれ、ウォルフさんが兄夫婦の一番の犠牲者なようです。
「お世辞を言っても何も出ませんと言いたいところですが、迷惑代としてお納めください」
辛口の白ワインと、塩辛のオリーズオイル和えを出す。
「この店でお酒を飲むのは久しぶりだ。爺さんは元気かな。」
「ここで酒屋をしていたお爺さんですね。元気ですよ。」
時々ルークさんと一緒にやってきます。
塩辛のオリーブオイル和えはお爺さんのアイデアです。
「王太子に返事を出さなくてもいいのかい?」
「旗、一枚で話が通じる2人にアドバイスする事はありません」
「それもそうだな」とウォルフさんが笑う。
ロバートも降りてきた、旅で温泉フリークになった二人は意気投合したようだ。
裏の小屋で夜遅くまで飲んで、そのまま泊まり込み、朝になったら温泉に向かったらしい。
朝寝坊を決め込んでいたらクリスに起こされた。
「ベル、大変よ。お客さんが来ているの」




