アーモンドの花
「花見に行きたい!」とロバートが言い出した。
リンさんの農場の先、丘を上がっていくとアーモンドの並木があるらしい。
お昼ご飯を籠に詰めて、3人でお出かけ。
丘を登る途中からアーモンド並木が広がる。
桜の花に似た満開の白い花が、海の青によく映える。
「アーモンドの実を砕いて、魚にのせて焼いたら美味しい。」
「ケーキやクッキーに入れてもいいわね」
アーモンドの利用法を考えながら歩く私とクリス。
花より団子である。
丘の上でお弁当を広げる。
タラのから揚げとタルタルソースを、カラシマヨネーズを塗ったパンにはさんだ物。
ジャガイモの薄切りをカリカリに揚げて、パセリと塩を振りかけた物。
フィッシュバーガーにポテトチップスである。
ロバートに火を起こしてもらい、錫の鍋で湯を沸かしミントティーを入れる。
満開の白い花、風に乗ってひらひら舞う花びら
アーモンドの花って桜に似ている。桜餅食べたいな~と思いにふける。
ロバートが動いた。真面目な顔をしてクリスの前に立つ。
ひざまずき、クリスの手を軽く握り、話しかける。
普段はクールなクリスが赤い顔をして、うなずいた。
プロポーズ!リア充め!けしからん!祝ってやる!!
ロバートが訴えるかのような視線を投げる。
はいはい、しばらく見ないであげますよ~、聞かないであげますよ
「あーあーあー」
「アーモンドの花が綺麗だな~」
「桜餅食べたいな~」
「アーモンドチョコ食べたいな~」
海に向かって叫ぶ。何も聞こえませーん。
3回繰り返したところで、クリスに「もういいから」と止められた。
帰りにリンさんの農場に寄る。温泉で汗を流す。
「クリスとロバートが?メデタイ!お祝いしなきゃ」とリンさん
「祝い事には餅!もち米は無いわよね。ジャガイモ餅?せめて片栗粉が」と言うと
「片栗粉ならあるわよ」とリンさんが出してくれた。
リンさん!神!
お祝い事。贅沢にいきたい。
リンさんに手伝って貰い、お祝いの準備をする。
市場であったルークさん達に、お祝いの件を伝える。
市場で尾頭付きの鯛を買う。
鱗、内臓をとって塩を塗って下処理をした鯛を、泡立てて塩を混ぜた卵白で包む。
卵白に魚の絵を書いて、イメージは魔女の宅急便のお魚。
オーブンで焼き上げる。
ジャガイモ餅を作る。
茹でたジャガイモを熱いうちに潰して、片栗粉と少量のミルクを混ぜる。
一口大の大きさに分けて丸め、フライパンで焼く。
プレーンとビーツを加えた赤い餅を準備した。紅白餅だ。
ビーツとジャガイモでスープを作る。生クリームものせる。
紅白餅を食べたクリスが「不思議な食感だけど美味しい」と喜んでくれた。
ルークさん達がお酒をもってお祝いにきてくれた。
お祝いなので少し頂いて機嫌よく飲んでいたらふらふらして、布団に放り込まれた。
ルークさん達が手際よく片付けている物音が聞こえる。
布団の中で、これからの事を考える。
いつかはこうなるだろうとわかっていたけど、実際にその日が来るまでは何も考えていなかった。
いずれはクリスがここを出ていって、ロバートと一緒に住む事になるだろう。
1人で生活するのは寂しい、心細い、不安だと真剣に考えかけたんだけど、
今日の疲れと、お酒も手伝ってすぐに眠り込んでしまった。




