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夕食屋  作者: プリン
10/32

新たな転生者

「はあ、この世界で温泉があるなんて、幸せ~」

「ベルが変な旗を辿って先に歩いて行った時には驚いたけどね」

旗を辿って歩くこと30分、そこには温泉付き民宿があった。


ノックすると怖い顔の男の人が出てきた。

住人と同じ食事しか準備出来ない。

設備や食事に文句を言わないという条件で宿泊できる事になった。


「床が温かい!」とクリス

「温泉を利用した床暖房?」

「食事はパンに卵に、この溶けかけた白い物体はなんだ?」とロバート

「温泉卵に温泉湯豆腐、昆布だし…酢醤油が無いから塩なのね」

「裏の畑の野菜?予想以上にこの家の奴らは良い食事を食べているわね」

「建物は小さいけど、この辺一帯は全部ここの家のものなのね」

「風呂だけ利用する客が多かったな。王都にこれがあれば、羨ましいよ」


食器をまとめて部屋の外に出す。

寝ようかと思っていたら、先ほどの男の人が声をかけてきた。

「お休みのところすみません、オリビア様…当家の主人が話をしたいと」


建物中央の部屋に通され、板敷きの間に通される。

そこには20歳ぐらいの若い可憐な女性が座っていた。違う、この人は…

「美咲さん!」

「鈴ちゃん?」

兄貴の前世の嫁だ。顔は全然違うのになぜかわかった。

今世では貧乏な名ばかり貴族の娘に生まれ、金で買われるように前領主の後妻になった。相手はよぼよぼの老人、実質介護だったと。

未亡人になった後に、温泉が出る事に目を付けた姉は、現領主(夫の前妻の息子)に交渉、この土地の自治権を得た。時々、旗をみて宿にたどり着く客も居るらしい。

「意外と前世もちって居るのよ。日本人は風呂好きだから温泉マークを見ると食いつきが良いの」

「私も釣られました。」

「鈴ちゃんに会えた、そのうち昇さんにも会えたりしてね」

「実はそれが」

今までの経緯を義姉さんに話す。

「鈴ちゃんを捨ててビッチに走ったあげく彼女に捨てられかけている。バカね。あの人ったら。ざまぁ展開じゃないの。笑いが止まらない」とケラケラ笑っている。

笑っているのが逆に怖い。

「会ったらからかってあげたいけど、王子様だと不敬罪に問われてしまうわね」

その晩は美咲さんと同じ布団に寝て、一晩中語り合った。


「鈴ちゃん、この先も気を付けてね」

「美咲さんも!この先の宿の情報ありがとうございます」

「全部うちの系列だからね、この紹介状で融通してくれるわ」

「美咲さん、素敵!」


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