1.始まりは同窓会で
50歳の記念に行われた中学校の同窓会。参加した聡はかって心から愛した女性 佐山真理と30数年ぶりに再会する。そして二人はいつしか心惹かれるようになっていく。
ご多分に漏れずご都合主義で作成しておりますので細かい齟齬はご容赦願います。
また心理描写を書こうとしたため動きがなくてテンポが悪いと思います。申し訳ありません。
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桐山 聡50歳。大学を卒業後、地元の私立大学病院の庶務課に勤務している。妻 伸江 48歳。現在は化粧品販売会社の販売員。長女 泉 24歳。大学を卒業後東京都内でOLをしている。一人暮らし。北関東のとある小都市にある自宅は築15年の一軒家でローンはあと15年残っている。宅地は80坪あるが敷地が200坪あるような周りの農家からすれば猫の額のような自宅である。
9月の半ばを過ぎた土曜日、50歳になった記念の中学校の同窓会が行われる。中学を卒業以来35年ぶりに初めて行われる同窓会だった。地元の成人式に出席していない聡にとっては地元にいるといっても道ですれ違ったり役所でばったり出会った数人しかわからないのが現状だ。
一学年が約200人いる同級生のいったい何人の名前を思い出せるか、誰ちゃんはどんな大人になったか、それを考えるとわくわくして眠れない毎日だった。
同窓会のある土曜日は普段飲まないお酒を飲む可能性もあるため妻の伸江に頼んで会場である会席料理屋まで送ってもらった。18時に間に合うように仕度をして一応おめかしをして出席した。
聡は駐車場で車をおり会場の店に着くと部屋の前の受け付けで幹事の女性に会費を支払い名札をもらった。その時にあんた誰?という幹事の女性からの視線を感じたが、平気なふりをして桐山だと名乗った。ぼっちでも伊達に仕事で鍛えられていない。ポーカーフェイスで乗り切ることができた。
部屋の中に入ると座敷に3列にローテーブルが並べられており、入り口から見て右側のあまり人のいないテーブルの一番入り口の席を確保した。すると隣に一番仲の良かった森山が座ってくれた。向かいには大学は別だったが夏休みに一緒にドライブにいったりよく遊んだ内山=通称うっちゃんが座ってくれたので聡は安心した。そうでなければぼっちのまま誰とも話さずに一人で料理を食べることになっただろう。
生徒会長やら幹事の挨拶が終わり乾杯をして食事になった。最初はみなグループ毎に固まっていたが、調子の良い人たちがこっちのテーブルあっちのテーブルへと別れていき場が盛り上がってきた。
式次第には各人の挨拶とあったが、そんなものは飛ばされてしまっていて各人がかってに話に盛り上がっていた。
隣に座った森山は地元のN協の金融融資課長をしているせいか皆が話しにきて森山の席はにぎやかだった。聡の正面のうっちゃんは地元の市役所に勤務しているため皆から声がかかってワイワイ楽しそうに酒を楽しんでいる。のんべぇのうっちゃんは楽しそうだった。
隣の森山達がうるさくなってきたので聡は会場を見渡しサッカー部で一緒だった小宮山がいる一番左のテーブルに移動した。30年数年ぶりに会った小宮山は中学の体育の先生をしているためか多少上から目線の話し方になっていたが、それでも昔と同じように話をしてくれてほっとした聡だった。
小宮山とその周りの人たちとの話を終えて真ん中のテーブルを見るとそこには学年一美少女だった三田明美とその親友の佐山真理がたしか女子バスケ部だった中田なんとかと飲んでいるのが目に入った。
聡はしばし悩んだがもう自分は昔のように臆病ではない、結婚もしたし子供も育てたのだという自信を胸にかっての憧れ恋い焦がれた女性のいるテーブルへと足を運んでいった。
「よぉ久しぶり!元気だっった?」
聡がまず声を掛けたのは三田にだった。何故か聡は三田とは昔からフランクに話ができた。学年一番の美少女であったが、その少しというかきつい毒舌に対して平気で話すことができたのだった。却ってその親友の佐山とのほうがぎくしゃくしてしまう状態だった。
恋い焦がれていた佐山真理がそこにいると思うだけで胸が痛くなってくる。
「あ!久しぶり。元気だよ。あんたどうしてんの?」
「俺は○○大学病院の庶務課でしがないサラリーマンしてるよ。三田は?」
「あたしもにたようなもんだよ。国立○○大学の事務員してる」
「へぇ。結婚は?」
「してないよ。未だに戸籍は綺麗なままさ」
「ええ!?まじで!三田みたいな綺麗な人が未だに独身なんて信じられないなぁ。俺だって結婚して子供もいるのにさ」
「しかたないでしょ。こんなだからさ。ずっとお一人様だよ(苦笑)」
「なんで結婚しないんだよ」
「うーん、嫌いなんだよね。他人がさ。一人で居たいんだ。楽でいいよ」
「ということはあれか。まだ両親と実家に居るわけか?」
「そうだね。昔と同じ家に住んでるよ。もう古いからね。立て直ししたいんだけどさ」
聡の右に並んで三田が座っていたのだが左側にいた佐山真理が話しかけてきた。一緒に話していた中田はどこかへいってしまったようだ。
「久しぶり。桐山くん」
「おう、久しぶり。佐山さん。元気にしてたかい?」
「うん…元気と言えば元気だけどねぇ…」
「何?どうしたの。よければ相談に乗るよ。昔一緒の塾にいった仲じゃないか。おじさんに相談してごらんよ」
「えっありがとう。そうだよね。一緒に塾いったんだよねぇ。懐かしいなぁ」
気を利かせたのか三田は佐山がくるとすーっとどこかへ消えていった。
「佐山さんは今どこに住んでいるの?」
「あたしは埼玉のK市にいるよ。旦那と高校生の子供と三人で住んでるんだ」
「そうか佐山さんは結婚したんだね。三田が結婚してないってきいて驚いちゃったよ」
「みたんご(佐山達が呼ぶ三田の愛称)はねぇ。いろいろこじらせちゃってるから。難しいのよ」
「そ、そうか。人生いろいろだからな」
「うん、ほんとに人生色々だわ」
「なんだ佐山さん、難しい顔しちゃってまじで悩んでるなら俺でよければ力になるよ。話せることだけでも話してみれば?」
「うん、ありがと。そうだねぇ。昔みたくさ真理って呼んでくれたら話すかも…」
「えっ。いいのかなぁ?まりちゃんって呼んでいいなら昔みたく呼ぶよ」
「それでいいよ。高校受験の時、一緒に通った塾の仲間だもんね」
「そうだな、それと大学は別だったけど一緒にドライブにもいったしな」
「覚えてくれてたんだ。嬉しいなぁ。懐かしいね」
「引っ越しのときさ。どっかにいっちゃったと思っていた写真が色々でてきたんだよ。その中に三田と真理ちゃんとうっちゃんと森山とかと一緒に海にいった時の写真がでてきてさ。なんか俺がいつも真理ちゃんの家に迎えにいっていたような気がしていたけどね」
「よく覚えてるねぇ。そうだったよね。楽しかったなぁ」
ふと聡が周りを見てみると中央のテーブルは女性が多かったせいか皆がばらばらにばらけてあちこちのテーブルに移動して昔話に花を咲かせいるようで聡と真理の周辺には誰もいなくなっていた。
「なぁ。なんで悩んでいるかそろそろ教えてくれよ。幸い周りには人が居ないし今なら大丈夫じゃないか?」
「うん、えっとね、言いだしにくんだけど。そのぉ、旦那のことなんだよね。どうも浮気というか本気というか女性がいるようで今揉めているんだ。」
「なんか証拠があるの?」
「今のところ何もないんだ。女の勘としかいいようがないけど。結婚してから夫からの束縛がきつくなってあたしもきつく当たったりしてたからだと思うんだけど、最近家に帰るのが遅かったり休みの日でも携帯を手放さないでしょっちゅう弄っているし。どうやら不倫しているようなんだよね」
「そうかぁ。まずは証拠固めないとな。それからもらうもん貰ってお別れしたほうがお互いの為だと思うよ。まあ、別れるかどうかは二人の問題だから俺は口だしできないけど。何か力にはなるよ。真理ちゃんが困ってるなら俺はとことん味方になるから。元気だしてくれよな」
「ありがと。証拠とは言えないけど3年前に性病移されたことがあるんだ。あたしは夫以外とはしてないから性病は夫から移されてしまったんだろうって病院の先生もいってたから間違いないと思う。それと最近暴力的になってきたんだよねぇ。直ぐかっとなるし、離婚だってすぐ怒鳴るようになってきたんだ。子供がいるから我慢しているけどいなかったらとっくに離婚してたよ」
「ひどい話だな。俺だったらそんなことは絶対しないけどなぁ。真理ちゃん一筋だよ」
「……ほんと?」
「ああ、実際にかみさん以外としたことないし……」
「……うらやましいなぁ」
「まあ、なんだ。まず証拠だよ。興信所使って証拠をとろう。お金ある?だいたい50万以上かかるみたいだよ。まあ時間と日数にもよるんだろうけどね。ひどいと200万とかなるケースもあるみたいだけど…」
「そんなには払えないけど…お金かぁ」
「メールとかから具体的に会う日にちを特定してピンポイントでやってもらえばそうはかからないはずだよ。最悪俺がカメラでとってもいいし」
「それはやめよう。興信所に頼むよ。桐山くんに頼むのはなんか違う気がするし…」
「そっか。じゃあ、まず真理ちゃんがすることは興信所に依頼することと弁護士を探すことだね。弁護士は宛てがある?」
「まったくないよ。弁護士なんて人生で係わったことないもの」
「興信所から仲の良い離婚専門の弁護士を紹介してもらうのもひとつだし、地元で評判の人に頼むのもありっちゃありだよ。とにかく30分5000円とかの法律相談があるからそこで何件か相談してみたら?最悪、法テラスっていう弁護士仲介してくれる組織があるからお金なくても分割払いにしてくれるし一度電話で聞いてみるのもいいかもしれないよ」
「わかったわ。まず興信所に依頼して証拠をとって、弁護士さん探してみるね」
「うん、それでわからないこととかあったら俺にメールなり電話なりしてよ」
そういって聡は自分の名刺の裏に携帯番号とメールアドレスを書いて真理に渡した。
ちょうど会の時間も終わりに近づいてきて記念撮影だといって皆が集まることになったので話はそこで終わりになってしまった。
同窓会で何かが起こると楽しみにしていたが、世間で言うように昔の彼女と再燃することもなくあっさり一次会は終わってしまった。
近くの居酒屋で二次会があるとの幹事の説明を受けて聡はお店の玄関前の駐車場で二次会にいくメンバーのうっちゃん達とだべっていた。すると三田と一緒に佐山真理が玄関からでてきた。
聡は折角ならもっと話がしたいと思って佐山たちに声をかけた。
「佐山さんたちは二次会いかないのかい?」
「うん、みたんご(三田)に乗せてって貰って実家に泊まるからこれで帰るね」
「そうか。残念だよ。一緒にいきたかったけど…」
聡は周りの目を気にして小さい声で佐山に伝えた。
「昔みたく一緒にいたかったな…」
「うん…ごめんね。今日は帰るから、またあとで連絡するから。ごめん…」
三田に聞こえないように小声で返事をする真理だった。
「じゃあ、また-」
「うん、またねー」
最後だけ元気な大声で別れを告げると小走りに三田の待つ車に走って行く真理をじっと見つめる聡だった。
その後、近くの居酒屋で二次会となりさきほどの半分ほどの参加人数であれこれと色々な話でもりあがった。中学の時さして仲のよくなかった女性ともフランクに話が出来た聡だった。
さらに中学時代に好きだった人を皆の前でいうという遊びで盛り上がった。聡は中学2年生のとき生まれて初めてラブレターを渡したひとつ上の学年の女性の名前をいったがサッカー部の小宮山が、そんな人いたいたーと言ってくれたがそれ以外はそんな人いたっけ?しらなーいという反応でいまいち盛り上がらなかったわけだが。
三次会では駅前の居酒屋で15人になったが、二次会以上に濃い内容でもりあがった。
もう孫がいる人も何人もいたし、まだ子供が中学生の人もいたし、奥さんとの夜の生活は10年もしてないって人が多く居た。
特に驚いたのは学年一のイケメンでバスケ部の人気者だった飯山の話だった。奥さんとは家庭内別居で子供の面倒や家のことは全部自分でやっていること。愛人なんかつくる余裕はない。子供が成人したら離婚すること。それまで奥さんは浮気しようが何しようが自由にさせている、という話だった。これには本当に皆が驚いた。仮面夫婦がこんなに身近なところに居たのだ。
三次会は幹事をしてくれて発起人の二人の女性もお酒を飲んだので次回の開催などのことも含めてあれこれと盛り上がって結局深夜2時30分まで飲むことになった聡だった。
聡の自宅は丁度今居る駅の反対側で歩いて帰れる場所にあるので、タクシーで帰る連中を見送ってから駅の中央連絡通路を通って反対側の自宅のあるほうの出口へ行き、歩いて5分で家にたどり着き、酔っ払ったまま着替えもせず寝てしまった。