出会い
Dear 裕也
改めて手紙書くのは恥ずかしいね。
裕也と出逢ってこんなに笑えたのも幸せなのも初めてで正直いつか終わるんじゃないかって悲しくなるときもあるよ
誰よりも友達想いで 誰よりも私を想ってくれて…
そんなあなたがいつか私の前からふと消えるんじゃないかって…
でもそんなわからない将来のこと考えてもしょうがないよね!
好きなものは好き!
それは昔も今もこれからも…
リンリンリン… ジージー…
星の見えない蒸し暑い夜に、どこにいんのかわからない虫達が、時おり静かになりながら鳴いている。俺は、自分の部屋の窓に腰かけ、クシャクシャになったタバコを一本取り出し火をつける。
フー…
「明日から学校か…」
ため息まじりに吐いた煙が 一筋の白い道を作り流れた。
俺の人生もこの田舎とも都会とも言えない街で毎日学校行って 就職して結婚して、それでいていつかふと消える…そんな平凡でなんの変哲もない日々なんだろぅな。 なんて考えながら。
タッタッタ…
誰かが階段を上がってくる。 やばい…
一つのため息分しか減っていないタバコを窓から投げ捨てると同時に木製のドアが開いた。
「裕也ただいまー ってあんたまだ制服着てたの?
……ってかあんた またタバコ吸ったでしょ!
未成年が何かっこつけてタバコなんて吸ってんのよ。 あと2年くらい我慢しなさいって言ってるでしょ。
あんたが小さい時はタバコなんてって…」
ほら、また始まった…
ユウヤ「もぅ!わかったよ!!
すみませんね!
ちょっと出かけてくるから」
止まらない説教に言葉を投げ捨て
母親を横目に部屋を出る。
「ちょっと 何時だと思ってんの!
ごはんはー?…もぅ。」
背中ごしにかけられる言葉から逃げるように家を飛び出す。
別に親と仲が悪いわけじゃない。
ただちょっとイキがってタバコ吸ってみたりたまに夜遊びしてたりするだけだ。
至って平凡⁇…まぁ 少しはモテる方だと思う。
中学の時は後輩にファンクラブがあったらしいし! ……数人らしいけど。
そんなことを考えながら 携帯を片手に自転車のペダルを漕ぐ。
誰か遊べる人いないかな。
あてもなく飛び出したことを後悔していると
プルルルル プルルルル
タイミングを計ったかのようにイツメンの健太から着信。
ユウヤ「うぃー どしたー?」
ワクワクを悟られないよういつも通りのトーンで携帯を耳にあてる。
ケンタ「おー 裕也。
今日てか今暇か?
遊ぶぞ! 家いるわ!
イツメンみんな呼んどいたから!」
ユウヤ「ちょっ…健太そんな急に」
ガチャ プープープー
行くとも行かないとも確認する前に切りやがって。テンションも声も相変わらず高いし
まぁ いつものことか…
そう呟きながら Uターンして今来た道を引き返す。
なんだかんだそれでも行く俺も いつものことか…
クスっと面白くなりテンションも上がってきたところで健太の家に着いた。
「お邪魔しまーす」
返事はない。いつものことだ…
健太の両親は仕事で夜家にいないことも多く、イツメンの溜まり場によくなってる。
玄関に散らばる靴の数的にもぅみんなきてんな。
「っよ!」
「おぅ!」
みんなが一斉に答える。
部屋に入るとリーダー的存在の美哉が向かい側で口を開く。
ミヤ「なにするー?
どっか出かけるか
このまま麻雀でもする?」
かな「ゲームしようゲームしよう」と子供みたいに騒ぐ奏太。
それに黙って頷く 普段からクールな心。
いつもの光景だ。
ただ 違う…
ユウヤ「だ…誰?」
あまりに可愛くて声が裏返りかける。
一目惚れだった。
でも、その恋が終わるのは ほんの3秒後。
ミヤ「あぁ 俺の女の紗夜!」
美哉が彼女に肩を組んで笑顔でこっち見てる。
サヤ「は…はじめまして」
軽く会釈し 胸辺りまである黒髪が顔にかかり赤くなった頬を隠す。
……なんとも早い失恋にショックでそのあとの話しが耳に入ってこない。
その日何して遊んでどうやって帰ったか、あまり覚えてない。
気が付いたら自分家のリビングにいた。
テーブルにあがっている 冷めきったごはん。
[お母さん先に寝ます。 温めて食べてね]
の書き置きに無性に胸が締め付けられたのだけは覚えてる。