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鬼っ娘温泉へようこそっ! ~ 高校生若ダンナとオニヨメ候補たちがナンバーワンへ成り上がります!  作者: Swind/神凪唐州
第二章 ユウマ、鬼っ娘たちと宿の営業を準備する

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6 役割分担を進めていきます

 気絶しそうな痛みから回復した俺は、さらに役割分担を続けていった。

 三姉妹を連れて宿の入口にあるフロントへと向かった俺は、、帳場の仕事内容について説明を始めた。


「ええと、先ほども話した通り、帳場の仕事は主に2つ。このカウンターでの予約確認や会計、それと裏方としての帳簿付けになる。まぁ、帳簿付けについては税理士さんに大部分を頼んでるから、伝票や領収書などの整理が出来れば十分かな」


「うーん、これってパソコン使う仕事よね? 私は正直苦手かも……」


 自信なさげにつぶやくユモト。

 まぁ、ユモトは力仕事全般を任せた方がいいだろう。

 些細なことで暴力を振るうぐらい筋力が有り余ってるみたいだし。


 それはさておき、調理や営繕と違って頭を使う仕事であることは確かだ。

 また、仲居の仕事が表のメインであれば、帳場の仕事は裏方の要にあたる重要な仕事。

 地味な印象とは裏腹に、責任重大なポジションなのだ。


 さて、どうやってスキルチェックしようか……と俺が思っていたところに、アワラが声をかけてきた。


「ユウマさん、帳場のお仕事で使われる台帳とか帳簿とかを一通り見せて頂けませんかしら?」


「あ、は、はいっ。だいたいはこのパソコンの中に入れてあるシステムを使ってます」


 いつも控えめなアワラさんが前に出てきたことに若干驚きつつも、俺はパソコンを起動して旅館管理システムを立ち上げた。

 予約管理からフロント業務、バックヤードでの管理資料の作成まで使える優れもののシステムだ。


「ちょっと触らせてもらっていいかしら?」


「ええ、どうぞどうぞ」


 俺の許可を取ってから、アワラさんがPCの前に座る。

 すると、次々と画面を開いては、ここはこうですね、これがこうなっているのですね、と俺に確認してきた。

 俺は目を丸くする。


「すごいっすね。 正直俺も良く使う機能以外はあんまり詳しくなかったんですが、パッと見ただけでわかるもんなんですか?」


「以前にパソコンを使ったお仕事をしていましたので、何となく勘が働くのですわ。それに、このシステムが良く出来ていますので分かりやすいのも助かりますわね」


「アワラねーたまは、しゃちょーひしょをやっていたのです!」


 なんだと! お姉様は美人秘書だった……だと……。

 思わず喉をごくりと鳴らしてしまう俺。

 すると、すかさずユモトから突っ込みが入る。


「ちょっと! おねーちゃんでエロい妄想しないでよ! この変態!」


 いや、仕方が無いだろう。美人秘書だぞ、美人秘書。

 人生経験17年の俺には刺激的すぎる言葉だぜ!


 ってあんまり妄想してても失礼か。

 反省して頭を下げると、アワラさんはクスクスとはにかみながら応えてくれた。


「小さな会社でしたので秘書といっても経理関係から電話応対、スケジュール調整まで何でもやっていましたわ。でも、その時に似たようなお仕事の経験がございますので、このお帳場の仕事ならある程度のことはできると思いますわ」


 おっと、これは本当に妄想している場合ではなかった。ものすごい重要な戦力になってもらえそうじゃないか。

 俺は今度こそお詫びの気持ちを込めながら、しっかりと頭を下げた。


「それは助かります。正直、経理は苦手分野だったので、ホントに助かります」


「いえいえ。あと、Webサイトの更新作業とかもしていましたので、多少であればそちら方面もお手伝いできると思いますわよ」


「それはすごい !じゃあ、帳場についてはアワラさんに全面的にお願いさせていただきたいです。それに、営業関係についてもぜひ力を貸してください」


「分かりましたわ。精一杯努めさせていただきますわ」


 微笑むアワラさん。やっぱり大人のお姉様は素敵だ……。

 こんな人が美人秘書、いや、美人女将さんになったら……妄想が頭の中を広がっていく。。


「また顔がエロくなってるし。さすがは筋金入りの変態ね。お姉ちゃんも気をつけてね!」


 俺の表情の変化をいち早く察知したユモトが、呆れ顔を見せた。

 いかんいかん。さすがに妄想がだだ漏れすぎるな。


 でも、仕方ないよね。健全な17歳の男子たる者、美人秘書には弱いのは自然の摂理という者なのだ。




―――




「さて、残るは接客だけど……そろそろ来るんじゃないかな?」


 フロント周りの説明を終えた俺は、スマートフォンを手に取って時刻を確認する。

 その時、ちょうどぶーっ、ぶーっとスマートフォンが震えはじめた。

 待っていた相手からの電話だ。


「おー、着いた? じゃあ、昨日話していた段取り通りよろしくな」


 手短に通話を終えた俺は、画面上のボタンを押して通話を終える。

 すると、電話の内容が気になったのか、ユモトが声をかけてきた。


「ん? 今のは誰?」


「ああ、この後の接客の確認は、幼馴染に客役を頼んでいたんだ。 俺がやってもいいと思ったんだけど、正直やりづらいだろ?」


「まぁ、アンタみたいなしょーもない変態相手じゃ、本来の力の二割も出せないわね」


「うっせぇ。俺はいたって普通な健全男子だっつーの」


「でも、確かにユウマさん相手よりは、私たちの面識のない方にお客様役になっていただいた方が、照れは少なそうですわね」


「ミササもそう思うのです! ユウマお兄ちゃんだと、つい頭なでなでしてもらいたくなるのです」


 ユモトはさておき、アワラさんもミササちゃんも意図を理解してくれたようだ。

 って、ミササちゃん? 確か頭なでなでって、オニ族では人生ゴールになるやつって今朝言ってなかったっけ?

 さらっと怖いことぶち込んでくるとは、全く持って油断ならないな……。


「じゃあ、とにかく出迎えにいけばいいのね。一人ずつ?それとも三人揃っていけばいいの?」


「本来なら一人ずつと言いたいところだけど、今日のところは三人一緒に行ってもらっていいかな?」


「分かりましたわ。もう行ってもよろしいのかしら?」


「ええ、お願いします。しばらく待っていたら俺のツレが玄関から入ってきますので、荷物を預かってこの部屋まで案内してください。チェックインは省略してもらって構いません」


「わかりましたなのです! がんばるのです!」


 ミササの言葉を合図に、三姉妹が部屋を出て玄関へと向かっていった。

 数分後、廊下の方から賑やかな声が聞こえてきた。

 どうやら首尾通りやってくれているようだ。


「では、こちらのお部屋になります。どうぞこちらでお履き物を脱いでお上がりください」

 

 客役の友人に声をかけているのはアワラさんのようだ。

 ミササちゃんは扉をあけたり、靴を並べたりとちょこまかと動いている。

 旅行鞄に見立てた荷物を運んでいるのはユモトだ。うん、やっぱりその姿が一番しっくりきてるね。


「よっ。お疲れ! ありがとな」


 俺は部屋に入って来た友人に声をかけた。

 磨き抜かれた輝く頭に、まるでボールペンで書かれたような開いているか閉じてるか分からない細い目をしたそいつは、柔和な微笑みを浮かべながら言葉を返してくる。


「いやー、これはなっかなか贅沢なもんやねー。こんな別嬪さんたちがいれば、たちまちこの宿も大繁盛、ようやくお前の苦労も報われるんちゃうかいな?」


「まぁ、そうなってくれればいいけどね。あ、コイツは俺のツレのクラマね。ハゲてるけど、根は良い奴だから」


「剥げちゃうわ。これはファッションやっちゅーねん! っと、改めましてこんにちわ。城崎(きのさき)鞍馬(くらま)といいます。この近くの料理屋の息子で、ユウマとは幼稚園時代からの同級生という間柄です。どうぞよしなにー」


 クラマはそういうと、三姉妹の一人ずつに片膝をついて手の甲を取ってキスをする仕草を見せる。

 三姉妹は、それぞれに三者三様の反応を見せる。


「あらあら、ご丁寧なあいさつ、恐れ入りますわ」

「ちょっとっ! なにすんの!」

「くるしゅうないのです。我にひざまづくがいいのです」


 ……えーっと、ミササちゃん? どこでそんな言葉づかい覚えたのかなー?

 そっちはほっといて、俺はあらかじめ用意しておいたスリッパで、クラマの後頭部をはたく。

 ペシーン。 うん、さすがは磨き抜かれた頭。今日も良い音だ。


「ってぇ! 何すんのや!」


「ったく、お前はホストか。相変わらずの女好きめ。見境いなく口説こうとしてんじゃねーよ!」


「いやいや、俺ってほら、博愛主義者だからさー」


 そう言って不思議なポーズを決めだすクラマ。

 背景になんか花が浮かんでる気がするのは気のせいか?


「まぁ口説くのはいいけどさ。この三姉妹のオヤジさん、なかなかの強面だから気を付けた方がいいぞ」


「いやー、これほど素敵なレディにはちゃんと挨拶をしないと思ってだね……」


「それより、どうたった?」


「ぶった切りかい。まぁ、三人ともいいんじゃないかな。言葉遣いも問題ないし、対応も丁寧、ソツなく出来ていたと思うよ。まぁ、あの重い荷物を一人で軽々運ばれたのはびっくりしたけどね」


 そういうと、クラマは俺にユモトが運んできた荷物を差し出した。

 見た目は普通のスポーツバッグなのに、異常に重い。


「重っ! いったい何入れてきたん?」


「ん? 分厚い辞書数冊とおっきい水のペットボトルを5本ぐらい。 いやー、運ぶの大変だったわー」


 うげ、軽く2~30kgはありそうだな……。

 てか、ユモトのやつ、これを事もなげに運んで来たよな。

 俺がオニ族の力ってやつか?


「ところで、お前、趣味変わった?」


「ん?いや? 何で突然?」


「だって、こんな素敵なレディたちの頭に変わったアクセサリーをつけさせるだなんてどうしたかと思うぜ? それとも、何か古いアニメのキャラにでもはまったのかダッチャ?」


「だっちゃ言うな! って……あ、しまった!」


 俺は言われて気づいた。額に冷や汗がダラダラ流れる。 

 そんな俺の様子をクラマがニヤニヤながら見つめてくる。

 状況が呑み込めない三姉妹はキョトンとした表情だ。


「さーて、事情を話してくれるよねぇ?」


 っちゃー。これは黙ってやり過ごすというわけにはいかないだろうな……。

 さて、どこから説明したものかと悩む俺であった。


お読みいただきましてありがとうございました。

ここまでは毎日更新を続けてまいりましたが、今後は2~3日に1回の更新とさせていただきます。

次回は2/16(火)の更新予定です。


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