街
止まないホワイトノイズに目が覚めた。
覚醒していない頭でぼんやり周囲を見渡すと、自室でないことに気付く。
見事な年輪が浮かぶ飴色の将棋盤、覆いがかけられた琴、硯と筆の入った蒔絵の箱、水辺で遊ぶ二羽の鷺があしらわれた屏風――黒い漆塗の枠の角には金細工があしらわれている。
「目が覚めました?」
そしてイ草――濃い畳と女の匂い。
「ああ……」
けばけばしい白牡丹柄の掛け布団をゆっくりと横にのけ、目の前で小指から順に両手の指を折り曲げていき、正常に動くかどうかを試してみる。
異常はなさそうだ。
しかし左右で指の長さと太さが違う――が、大したことではない。
「雨……」
障子を開け放ち、ぼんやりと外を眺める女は言った。
女は赤・紺・紫・金を使ったドットやヘキサゴン等の幾何学模様のパターンが散りばめられた着物をまとい、ボリューム豊かな髪をまとめた髷からはべっ甲の櫛が放射状にのびていた。
男は床の間に飾られた、水を張った盆にいけられた花ひらく桜の枝を見て思った。
寒くないのだろうか。
「雨――降ってますけど、お仕事には行くんですか?」
「ああ、仕事だからな」
艶やかな朱の唇から漏れる息が白い。
男は起き上がり女のそばに立ち、ホワイトノイズの正体を見やる。
雨――重酸性雨が降りしきる屋外に、数えるほどしか人は歩いていない。
誰の頭の上にも等しく降りかかるそれは、一粒一粒が鉛の質量をもって注がれるかのようで、重苦しい。
吐く息が白くなるほど気温は低く、強い雨脚はベールとなって遠くの高層ビル群の輪郭を曖昧にさせるが、それぞれの室内から漏れる黄金色の輝きと脈打つ赤色の航空障害灯を際立たせる。
屋外にいては誰一人、武術の達人でさえそれを避けることはできない、皆に等しく降りしきる。
しかし一時しのぎは可能だ。
社会的地位、顔の良し悪し、預金残高により内容の程度に差はあるが――。
さて、ひとつ断っておくことがある。
重酸性雨はまったくの嘘、ちょっとしたジョーク、モノのたとえだ。
そんなものは過去の人間たちが語る小話の中で見られる空想のひとつでしかない。
西暦2115年の4月、時刻は逢魔が時、東京に降る冷たい雨は春だ花見だと騒ぐ浮世との乖離が激しく、今も昔も人間の生活に大した変化はない。
そう、大した変化はないのだ。
「そろそろ行くよ」
男はジーンズに太い脚を通しながら言った。
「弾造さん、次はいつ?」
「さあ? また派手に壊れたら来るよ」
男の背ははすらりと高く、体つきは逞しいの一言。
後方へ撫でつけられた短い針金のような黒髪は、風に抵抗するすすきのようだ。
太い首、四角い顎、濃い眉は優しげな印象を与えるが、鬼の面のような激しさも持ち合わせている。
弾造はポロシャツをかぶると、片腕を通した。
半袖のポロシャツの袖口は、曲げた腕の膨らみではち切れそうだった。
概してみれば人間と同様のシルエットだが、三角筋・上腕二頭筋などはそれぞれ各部位で色が異なり、筋肉の膨らみは人のそれとはやや異なっている。
裸といえども厚い大胸筋に乳首はなく、首から下は逞しい筋肉質の体躯を強調するような薄手の全身タイツかウェットスーツを着ているようだ。
だがどこかちぐはぐだ。
それもそのはず、腕や脚の各関節ごと、身体の部分部分ごとで色はおろか太さや質感が異なっている。
首から上は人のそれと変わりはなかったが、よくよく瞳を覗きこんでみれば、カメラのレンズのようないくつものリングの重なりをみることができる。
男は全身サイボーグだった。
だが各パーツに一貫性はなく、つぎはぎだらけ、有り合わせのパーツで組み上げたおもちゃのロボットのようだ。
唯一顔だけは人間との差は見当たらない。
ただ日に焼けたように肌の色は褪せ、細かい傷が至るところに見られた。
「いつでも来てくださいね」
女はニコリと笑って言った。
「人気者なんだろう? のけ者にされた誰かの恨みを買うのは嫌だな」
「『おいらん』ですから」
女――きらびやかな着物をまとった少女は、ふふんと自慢気に言った。
少しふっくらとした顔に大きな黒い瞳、母性豊かな胸のふくらみは着物で隠している。
年の頃は十八か九に見えるが、笑ったときの顔にはまだ幼さがあった。
そんな年頃の娘が、『おいらん』と名乗る人間が働く場所、それは――。
つぎはぎの全身サイボーグ・弾造は、東京に復活した遊郭の一室で目が覚めたのだった。
「もう行くよ」
弾造は合成皮革の黒い革ジャンを羽織りながら言った。
「お車まわしましょうか?」
「いや、電車の方が早いから」
金色の背景に雉のつがいが描かれたふすまを開けて玄関口に降り、弾造は預けていた手荷物と布に包まれた長物を受け取ると、降りしきる雨を恨めしそうに眺めた。
「はい、傘を貸してあげます。近いうちに返してくださいね」
少女は自ずから傘を手渡した。
「そのうちな」
「うちの金利は高いですから、早い方が良いかと思います」
弾造があからさまに嫌な顔をしたが、少女はニコニコと笑ったままだ。
「こりゃまた派手だな」
開いた番傘はほおずきのような朱色だった。
「また来るよ」
弾造は微笑み、背をむけて店を後にした。
少女は、弾造の広い背中というよりも肩口にむけて手を振っていた。
垂れる袖に手をあてて、透き通るような白い手を一生懸命に振っていた。
JR山手線・新宿駅に車両が停車しホームドアと連動して扉が開くと、終点駅でもないのに大勢の乗客が下車し、ほぼ同数の乗客が乗り入れた。
『新宿ダンジョン』の名で有名なこの駅は、複数の路線が入り乱れているために駅の構造は複雑、年を重ねる度に増改築を繰り返し多層化、整理またはゼロへの刷新を求める声が多数上がるも、そこで商売をする者や無断で駅で寝泊まりする浮浪者等々それぞれが勝手な権利を叫ぶために刷新計画は遅々として進まず、日々カオスが熟成を重ねる。
やつれる新宿駅再生プロジェクトの責任者は、ここが一夜で更地になることを心の底から願っていた。
放火でも天変地異でもなんでも結構、手段は問わない、口を開けば文句しか述べない有象無象とともに消し飛んでしまうことを切に願っていた。
そういったわけで肥大化した新宿駅は朝のラッシュ時は言うに及ばず、いついかなる時間であっても人で溢れていた。
サラリーマン、観光客、駅ビル内のテナントで働く者、物乞い、外国人、明らかに堅気でないものも混じっている。
すれ違う人々のすべてが、パーセンテージの多寡に差はあれど、機械と融合していた。
パーセンテージのゼロ又は一桁台は補助デバイスを身にまとって心労と重量を増やし、融合率の高い者は老化とほとんどの病から開放されるが定期メンテナンスの問題を抱え預金残高を減らす。
水泳ゴーグルのような視覚装置を顔に埋め込む者など珍しくもなく、バケツを被ったような頭部やアニメに出てくるようなスタイリッシュなロボットヘッドの者もいるが、『個性』の一言で片付けられ、それらを指さして笑う者はいない――表向きは。
前世紀に比べれば、美男美女が多く見受けられるような気がするものの、時代時代における生活様式で人の体格や顔つきなどは変化するため、時代の潮流に身を置く者は誰一人それを不思議に思わなかった。
弾造はそういった分子で構成される雑踏の波をかきわけ、やっとのことで駅構造物から空を見上げことができる外縁部に到達するも、下車してから半時間以上経ってのことだった。
脳から指令を下し、溜息のモーションを再現する。
全身サイボーグには必要性のない行為だが、脳機能と精神の安定には欠かせない。
空を見上げれば、
「まだ降っているな……」
誰に語りかけるでもなく独り言が口から自然と漏れた。
バサバサと無遠慮に展開される傘の羽ばたきが、そこかしこから上がると、派手な番傘の赤が土砂降りの灰色の景色をかき分けていった。
酷い雨だ。
ちょっと歩いただけでジーンズはふくらはぎまで濡れそぼリ、すれ違う人々の傘から流れる雫が肘や肩口を濡す。
立ち小便、宵越しの冷たくなった嘔吐物、ストレス解消でポン引きにひっぱたかれた女の涙、いきがった若者達が喧嘩に負けて流す涎や鼻水、通り魔が投げつける出来たてホヤホヤの精液、取った取られたと目に見えぬ境界線をめぐるチンピラの小競り合いが生む流血――。
そういったモノが蒸発して天に昇り、気圧の変化によって雨粒となって地表を叩く。
戒めよと乱舞する竹篦返しのようだ。
気分が落ち込んでしまうのも無理もない、ここがどこであるかを思い出してみるといい。
ほら、見えてきた――納得するに足る印籠的なアイテムが。
二匹の毒蛇がうごめいているようなけばけばしい電飾がなければ、超高層ビルに挟まれた鳥居にも見える赤い二重反転アーチ。
それは来訪者への感謝と歓迎を表すモニュメント。
『歌舞伎町一番街』
掲げられた大きな看板にはそう書いてあった。
どうだい、説得力十分だろう?
ちなみに看板を掲げるアーチは入り口であるが、それが真に意味するところは別にある。
神社を象徴する鳥居は門ではなく、俗世と神域との境を示す境界線だ。
ここ歌舞伎町においても、その先が俗世とは異なる特別な場所であることを、来訪者に光るネオンでメッセージを絶えず送り続けているが、それに気づくものは少ない。
悪徳栄えるこの街は、あらゆる暴力と不道徳がつまったジャンク品のアソートメント。
不浄極まりない穢れた地に集まる人間がさらなる穢れを生み、魔を呼び込み倍加させ、テクノロジーが加速化し、大容量インターネット回線が拡散と侵食に喜んで手を貸す。
それがここ新宿歌舞伎町だ。
夕食をとるには早いこの時間、すでに日が落ちており、天を仰げば灰色がかった紫の空から止めどもなく雨粒が落ちて頬を濡らす。
視線を地上に戻せば周囲は光に満ち溢れている。
今が夜であることを否定するかのように。
照明が誰もかれをも包み、顔の皺がつくる陰影を吹き飛ばす。
しかし道向かいに目を移せば、光の洪水の中を横滑りするシルエットに閉じ込めてしまう。
連続するタクシーのテールランプ、趣向を凝らした看板のネオン、漏れだす店内の照明、携帯電話で話す男の腕時計が反射する光が蒼穹となってサイバーアイを射る。
弾造は合成皮革の革ジャンから色の濃いミラーシェードのサングラスを取り出すと、世界をハードモノクロームに塗りつぶした。
全身サイボーグなのだから、視覚装置の明度を下げて眩しさを和らげることは可能であるが、それを良しとしなかった。
アーチをくぐればその理由がすぐ解る。
光、光、光、街は光に溢れていた。
街に、人に、仄暗いものなどない一切ないと主張するかのように。
だがそれは精一杯強がっているようでもあり、強い光で目眩ましをしているかのようでもあった。
そう、光には仕掛けがあった。
建物から生える袖看板に条例無視の立て看板、店に貼られた料金表、呼び込みの男女がもつ小さなメニュー、サンドウィッチマンが語る店舗名や今日のオススメの品などはの広告という広告には、すべてAR技術が用いられ、カラフルな動く立体映像が人々を魅了する。
サイバーアイを持つものならば、セクシーなホステス達が脚を組み直す姿や板前が産地直送の魚をおろす姿を目の前で楽しむことができる。
しかしそれらAR広告には、サブリミナルなどの催眠効果のある演出が組み込まれており、規制されているにもかかわらず違法性・中毒性の高いものが使用されていた。
たとえサイバーアイがバーコードなりを読み込まないような設定をしていても、特定の角度からみればホログラムが浮かび広告をうつ仕組みになっており、サイバーアイを持っていない者に対しても有効だった。
当然それにも催眠効果は付属していた。
弾造のサングラスはそれらを断ち切るためであったが、効果が半減しているようだった。
去年の夏に新調したばかりというのに、技術はいつでもイタチごっこというわけだ。
街は光とともに、人に溢れかえっていた。
濁流のように容赦なく襲いかかってくるが、常にそれは眼前で開け、背を打つこともない。
意思をもつ濁流は常に対向者を、トラブルを自動回避する。
その回避行動の巧みさはセンサー満載のお掃除ロボットのように正確で、紙一重で接触を拒むその技術は武芸者のようだ。
「とつぜんスゥイヤセーン! チャンス下さーい!」
ダークスーツの若者が弾造の行く手を阻んだ。
純白のハンカチーフを胸ポケットに入れ、三秒おきに七色に変化するネクタイを締めており、髪は犬のようにボサボサで、犬のようなくせ毛の茶髪だ。
が、それを無視して弾造は歩き続けた。
「チョット無視しないで下さいよー!」
いかにも軽薄で頭の悪そうな面構えの若者は、通り過ぎようとする弾造の前を躓くこともなく器用に後ろ歩きでつきまとった。
「あ、言葉解らない系ですか? 早く言って下さいよ~」
その時、ダークスーツの若者の眼球が小刻みに痙攣した。
「ヘイミスター! ユーキャンテンタクルファック! オーケー? ユーライキッ?」
若者は触手プレイが可能である旨を英語・中国語・スペイン語などでまくし立てた。
外国人観光客が多く訪れるために外国語を涙ぐましい努力で憶えたのではなく、単に電脳にインストールしたフリーの翻訳ソフトウェアを使っているだけである。
電脳化さえしていれば、彼のようなボンクラでも五カ国語を操ることができる。
しかし残念なことに知能指数に応じた範囲内でしか応用がきかず、社会的地位の向上の改善がなされる見込みは低い。
弾造がだんまりを決め込み歩き続けると、その広い背にダークスーツの若者の罵声が突き刺さった。
しかし本人は全くの無視、ミラーシェードの奥で睨みつけることさえなかった。
過去三週間で弾造はあの若者と十回以上出会っているが、彼に学習機能がないのか、何度も何度も声をかけてくる。
さらに遡れば、その数は眩暈がするほどだ。
こちらの顔を覚えようとしないその低能さに腹を立てたこともあったが、最近では彼の常套句にも慣れ、なんとも思わなくなった。
――アイツは人間じゃないんじゃないだろうか? まさかの客引き専門ロボットか?
そんな疑問さえ生まれてくるほど彼の行動・発言は固定化している。
ぶん殴ってしまえば二度と寄りつかなくなるだろうが、傷害または器物破損の罪でしょっぴかれる可能性がある。
しょっぴかれるならまだマシで、有象無象が仲間を召喚し、一晩中でも追いかけてくるだろう。
そういったときの彼らのネットワークは強力で、一人ひとりは無能でもひとたび一致団結すると、狩りをする肉食獣の如き連携を見せる。
弾造はそういった客引きや立ちんぼ、小遣い稼ぎの女子大生ドラッグディーラーの誘いを無視し、歌舞伎町の中心部へと歩みを進めた。
太古の昔からある雑居ビルを囲むように、超高層ビルが建ち並ぶ歌舞伎町の中から天を仰ぎ見れば、星はおろか夜空を拝むことも叶わない。
雨粒が頬を濡らすこともない。
いつも間にか雨はやんでしまったのだろうか――否。
通りを埋め尽くす人々の活気、四方を囲む高層ビルから放射される照明、背骨の突起のような袖看板のネオンの強烈なRGBが、自由落下に遊ぶ雨粒を灼き尽くして蒸発させ、天に返してしまうのだ。
気づけば傘をさしているのは、ミラーシェードで表情を隠す弾造ただ一人だけであった。
しかしそんなことを気にすることもなく、借り物の番傘をさし、全身サイボーグは夜の街を闊歩する。
22世紀となって久しく、電脳化技術に成功し経済速度を加速させ、身体機能を機械で代替可能となった現在、人間の腐敗に拍車をかけ、蝕む存在があった。
魔が実体をともなって現れ、人の醜い争いの中で蟲毒のように濃縮されていき、人に害をなす。
生きる価値のないゴミ屑どもの数が減るならば、それはそれで結構なことなのだが、世の中そう甘くない。
人に仇なす存在を狩るために、弾造は、不夜城新宿の歌舞伎町を征く。
予感。
脳内に直接ひびく子供の声。
携帯電話とは異なり、電脳化した者同士の脳内通信と異なる、耳元でささやくようなクリアな音声。
[ねー、お腹へった]
猫が甘えるような間延びした声には、不満の色が混じっていた。
「メシは仕事が終わってからだ。我慢しろ」
[ひぃちゃんもそう言ってるよ]
弾造は耳をそばだててみたが、そんな声は聞こえなかった。
[ちゃんと聞いてる?]
「さち、耳をひっぱらないでくれ」
弾造の盛り上がった肩の人工筋肉の上に、ちょこんと座る雛人形のような幼子の姿があった。
『さち』と呼ばれたおかっぱ頭は、弾造のもつ太刀の付喪神。
弾造以外にその姿を視ることはできないが、時々浮浪者が悲鳴を上げて逃げていくこともあり、視える人には視えるらしい。
しかしこれまでの経験からいえば、そういう場合は大抵『さち』が腹を空かせているときだ。
『ひぃ』ちゃんとは、バッグに詰め込んだ喋るリヴォルバー式のハンドキャノンのことだ。
[空也のモナカが食~べ~た~い~]
[ヒ……ヒヒ……]
喋るといってもカタコトで、駄々をこねるさちに比べれば無口に等しく、気味の悪い薄ら笑いを漏らす程度だ。
「無茶言うな――って、おい、耳の穴に手を突っ込むな」
[だってぇ~]
[ヒヒヒ……]
「ひぃも笑ってんじゃねえよ」
[お腹がへったら力がでないモン]
「わかった、わかった。仕事が終わったら美味いもの食おう。頼むから手を抜くなよ、死んじまったら御馳走には二度とありつけないんだからさ」
[やた! えっとねー、天麩羅でしょ、釜飯でしょ、箱ウニでしょ、それから……あ!]
弾造は聴覚装置をオフにして一切の音を遮断するが、
[寒いね! どぜう、どぜう食べよう! 鍋、鍋! それから苺のミルフィーユでしょ、バナナサンデーでしょ、トルコアイスでしょ……]
[ヒ……ヒヒヒ……]
直接脳内に彼女たちの声が響く。
魑魅魍魎が跋扈する新宿歌舞伎町セントラルビルにむかう全身サイボーグの弾造は、独りではなかった。
ガラクタに近い骨董品の太刀に宿るハラペコ付喪神と、大口径マグナムを放つ泣き虫魔銃が常に傍らにあった。
そして彼の神経をすり減らしていき、かつそれに反比例してエンゲル係数は高まっていく。
機械化された身体の代わりに、預金残高がやつれていった。