表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛しのmyDole

作者: 有栖川紗菜


人は必然的に恋に落ちる。

まるで魔法にかかったかのように人が好きになり、その人しか見えなくなって、その人の全てが愛おしく思えて。その人の全てが欲しくなって。その人の周りの人が邪魔になって。死ねばいいと思って。いや寧ろ殺してしまえばいいと思って。それで………。


「やめて、やめて、やめて、やめてっ…いやぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

初めはこの甘ったるい匂いが嫌いだった。苺みたいに真っ赤な戦慄。事切れたように膝を折る少女。穴の空いた天井から染みだす月明かりがその姿を照らし、まるで何か儀式的にも見えた。これで何人目?どうだっていっか。私は真っ赤に染まった鉄パイプを左手で引き摺りながら動かなくなった物体へと歩み寄る。

「ねぇ、痛い?」

そんなにあちこち傷だらけで血だらけでやっぱり痛い?

「辛い?」

私に追い詰められてどんな気持ちだった?

「悲しい?」

たった16年間人生送っただけで死んじゃってどんな気分?

「……へぇ、無視するんだぁ」

手にした鉄パイプを思いっきり振り上げ少女の頭部を狙う。

ーードスッ…ボトッ…!!

そんな鈍い音が響き、薄汚れた地面に気に食わない顔が転がる。許しを乞うかのように解くことのなかった手がついた体から離れ、気持ち悪く歪められた顔がこっちを向いた。…気持ち悪い。気持ち悪い。

「あのね、貴女が悪いんだよ?同じクラスだからって、立場乱用して仲良くしちゃうんだもぉん…誰だって怒っちゃうよぉ~…だから、当然だよねぇ?」

優しく優しく問いかけて、その顔を踏み潰した。まずは、いつもあの子を見つめていた目を踏みつぶそうかな。そんな事を呟きながら、靴の爪先を眼球へと突き刺す。ぐちゅっと、まるで茹で玉子を手で潰すような感覚。白い何かが靴にへばり付くが、気にしない。それじゃあ次に、あの子と話していた口を切り裂いてやろう。閉じた口を爪先で無理矢理こじ開け、口内で靴を踏み躙る。バキバキと、何かが折れる音。顎骨かな。それとも歯?どちらにしろ、生きていたら痛かっただろうね。あの子の匂いを嗅いでいた鼻も、あの子の声を聞いていた耳も、丁寧に丁寧に砕いていく。そうしていくと、先ほどまで気に食わない少女だった顔がただの肉の塊へと変貌していた。

「わぁ、腐った性格にピッタリな見た目ぇ!!腐れ肉…ってとこかなぁ?ふふふっ…それじゃあね?次に会うときは…んん~…土に還った姿かなぁ?わぁ、生きてて価値がなかったのに、肥料になれるんだってぇ!!すっごぉい!!」

使われなくなった工場であるココに、私の拍手と笑い声が響く。その塊を最後に踏み付けて、そこを後にした。



帰り道にある川に靴を流す。それは直ぐに姿を無くした。完全犯罪…ってとこかな?

いつからだろう。こんな風に、人を殺めるようになったのは。ううん、人じゃないからいいんだ。罪人だもん。そう…


私から、芽紅(めぐ)ちゃんを奪った大罪人。


死んでも構わない人達。




芽紅ちゃんは私のヒーローだった。女の子だけど、カッコイイ芽紅ちゃん。私がいじめられている時に止めてくれたヒーロー。あの時から、ずっと、私は芽紅ちゃんが大好きで。女の子同士だからいけない?そんなこと、私の掟ではないもん。私が世界で私が掟。それが基本でそれが常識。

でも、芽紅ちゃんは大きくなるごとにもっともっと魅力的になった。お友達もたくさん増えた。去年まではずっと私が傍に居られたのに。クラスが離れたことでそうすることが出来なくなった。そうすると、芽紅ちゃんの周りが人で溢れかえり、無駄に仲良くする人が増えて。


ああ、私の芽紅ちゃんと手を繋いだ。

ああ、私の芽紅ちゃんと腕を組んだ。

ああ、私の芽紅ちゃんと抱き着いた。


そんな光景を見ていると、どうしようもなくイライラして。胃がムカムカして。それで、それから……


「…深紅(みく)ちゃん!!な、なんで、こんなっ……ゴフッ!!」


「やだぁ、ゴミクズが私の名前なんて呼ばないでよぉ…きっもちわるぅい…」


うーんと甘い声で最高級の言葉をかけてあげる。そうやって、ゴミを排除してきた。さて、あとは………



ーーーピーンポーン♪


芽紅ちゃんは高校生になると、親元を離れて一人暮らしを始めた。芽紅ちゃんが寂しくないように、と私はいつも仕掛けた監視カメラの芽紅ちゃんに話しかけている。でも、やっぱり、直接あった方がいいもんね…


ーーーピーンポーン♪


「…芽紅ちゃん?」


ーーーピーンポーン♪ピーンポーン♪ピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンピンポーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「なんで、出ないの…?」


ーーーガチャッ…ガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッガチャッ!!!!!!!!!!!!!!


「ひっ…!!」

部屋の中から芽紅ちゃんの悲鳴が聞こえた。どうして悲鳴なんてあげるの?会いに来たんだよ?私が。

「だ、だれ…!!こんな夜中に……」

怯えたような声。話しても通じないかも。仕方ないなぁ…芽紅ちゃん、案外、怖がりだもんねぇ…


ーーーバキッ!!!!!!!!


「ひぃっ…!!な、んで…深紅…ちゃん?」

「芽紅ちゃぁん…よかったぁ、なんで出てくれないのかなぁ…ってぇ…………………………」

顔を上げると芽紅ちゃんが生まれたままの姿で震えていた。時刻は深夜2時。芽紅ちゃんがお風呂に入る時間はいつも夕方6時頃。こんな時間にお風呂に入る筈がない。それに…



白くて細い身体に無数の跡。蚊に刺されたような赤い跡。


「…芽紅、ちゃん…?」


「ねぇ、芽紅、どうした?俺、続きしたいんだけど…」

部屋の奥から同じ様な姿の男の人が出てきた。知らない人。ううん、もしかしたら同じ学校の人なのかもしれないけど、男の人なんて興味ないから誰一人名前と顔を覚えていないから。


一瞬、整理がつかなかった。でも、少しするとピースがひとつひとつ組み合わさり……。


「芽紅ちゃん…この人と、えっちしてたの…?」

「おい、芽紅、この女、だれだよ、なんか、すげぇ匂いするし、さ…」

「芽紅ちゃん、この人とどういう関係なの?」

「芽紅、ほら、携帯、警察……!!!!」

ーーーベキッと不吉な音と共に携帯画面を割り、その破片を男の人の顔に突きつける。そのまま押し倒し、持っていた折りたたみ式ナイフで足と足の間を突き刺し、何度も何度も身体のあちこちを突き刺す。悲鳴が聞こえた気もしたが穢い声は耳に入った気もしない。なるべく、早く済ませた私はナイフを地面に捨てたまま、立ち上がる。


…芽紅ちゃんが、いない…


でも、廊下の先。芽紅ちゃんの部屋から物音がする。逃げちゃったのかなぁ?芽紅ちゃん、ホラー好きなのに、血は苦手だもんね。怖かったのかぁ。でも、大丈夫だよ。もう、終わったから、さ。

自然と緩む頬をそのままにして、廊下の先へと足を進める。白いシーツの敷かれた清潔なベッドがこんもりと膨らんでいた。震えるそこから時折、「助けて、助けて…」と声が聞こえる。可哀想に。そんなに血が怖かったかぁ。大丈夫だよ、もう、血はないからね?でも、でも、でも…


ーーーガバッ!!!!!!!!!!!!!!


「ひぃ!!んむっ…!!んん!!あ、んっ…!!」

桜色に色付いた唇を奪い取り、舌を絡めとる。そのまま私もベッドへと倒れ込み、芽紅ちゃんを押し倒す形となった。甘い声を唇から漏らす彼女は美しくて可愛くて…

「はぁはぁ…消毒、しなくちゃ、ねぇ…?」


「み、く…ちゃん、やめて…こんなこと、して、も、なん、にも…いいことなんて…」


「…あの人とどこまで行ったの?」


「ふぇ…な、んで、そん、な…」


「どこまで行ったの?」


「ど、こ、までって…」


「言ってくれないなら、仕方ないね」


「ひゃっ…!!あ、いやっ…んっ…」


膝で彼女の足と足の間を付く。ぬるっとした感覚が心地良くて癖になりそうだ。彼女を抑えていた手を解き、空いた手で胸を触る。着やせするタイプなのか、予想していたよりも柔らかい胸。


「…気持ち悪い…」


そこにも、ここにも、あの人が触れて。

消毒、しようにも、あいつと同じ匂いがする。

こんなの、こんなの……


「芽紅ちゃん、じゃない。」


「えっ…きゃんっ…!!ん、ぐ、あ、んっ…」


可愛く聞こえた声も気持ち悪く聞こえる。首を締め付け、息を止めようとする。だってこんなの、私のヒーローじゃない。私の好きな人じゃない。こんなの、こんなの…


ゴミ、だもんね。



サヨナラ、愛した人。



サヨナラ、愛しき人。





…ああ、芽紅ちゃんの匂い。

私以外の人と仲良くしない芽紅ちゃん。

私が思い描いた芽紅ちゃん。

私以外の匂いがしない芽紅ちゃん。


「…深紅ちゃん、最近、鉄っぽい匂いがする…」


「えー?ずぅっと、お人形さん抱いてるからかもぉ~」


「やだぁ、深紅ちゃん、かぁわいい!!でも、そんな変な匂いのするお人形、捨てなきゃ不清潔だよ?」


「…ううん、大好きなお人形さんだから!!」




…捨てないよ。絶対に、ね?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ