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カンナとタロー

 このジムは、規模が地域最大級を誇るだけあって…会員フォローにも力を入れているみたいだった。


「プール利用のオリエンテーションにご参加頂き、ありがとうございま~す」

 今日は、初めてのプール利用に伴っての説明会。


 入会したとき、「泳力確認」もやってるんだって。

 まず希望の無料スイムレッスンへ参加するように言われて。わたしが希望したのは、30分程度のクロールのレッスン。

「クロールを100m以上泳げるようになりたい方向け」だって。25mは泳げ、る、んだけどな。

 どきどきしながら、指定された日と時間にプールへ向かったら…そこには、「競泳やってます」「ガンガン泳げます」の「ざ・すいまー」ばっかりがいた。

 みんな、バリバリの競泳水着。わたしは…スポーツクラブの入口で売っていたタンキニの…

 わーん、レッスン間違えたー!


 帰りたくなった気持ちで、柱の影から動けなくなっていると、「片倉さーん」インストラクターに早速見つかってしまった。


「そんな陰にいないで、こっちですよー こっち!」

 呼ばれて、ノロノロでるなり、インストラクターさんが始まりの合図。


 帰りたい…


「今日は、お二人の初めての会員さんがいるんで、皆さんどうぞ宜しくお願いいたしまーす」

 あー気が重い。一応、礼儀正しく一礼したけど…周り、どう見ても水泳部の人って感じばっかり… 確実に参加するレッスン間違えた。


 せめて、「初めてのケノビ」とか「優しいクロール」とかにすれば良かった。

 わたしの落ち込みをよそに、参加してる人達が、ぱちぱち…と拍手している。


 とどめは、もう一人の新人会員さんは、な ん と。 超マッチョなお兄さん。

「いや、自分、これ、見せ掛けの筋肉なんで…」

 いやいやいや…ミケランジェロのダビデ像ですから!アナタの身体。学校の美術室に置いてありそうだったデッサン模型みたいな、完璧なマッチョ。

 

 わーん、やっぱり帰りたーい!

 わたしのレッスンデビューは、最初から散々だった。


 けど。


 このジム入って、やっぱり良かったかも。


レッスンの皆は全員親切で。

「キツかったら、休んでいいんだからねー」とか、「今の説明、わかった?大丈夫?」とか、いろいろ気を使ってもらえた。

 そして、ちょっと救われたのは…ダビデ像のお兄さんは 実はぜんぜん泳げなくて。水しぶきは、立派だったけど クロールは呼吸が出来なかったり、背泳ぎはクネクネ曲がって、コース中が「んー 曲がってるねー」失笑しては、黙って避けてくれたりと、優しく見守っていた。


 ちょっと…気が軽くなったかな?



 このジムは、皆がある程度和気あいあい仲がいいらしく、レッスンが終わっても、いろいろ話しかけられた。

 人の良さそうなオバちゃまが「カンナちゃん~」と、隣のコースで黙々と泳いでいた女の子を呼び止めた。そして、続けて「たろーくん~」たまたまプールサイドを歩いていた男の人を手招きで呼ぶ。


 …全然関係ないけど、「タローくん」って名前、凄いね…アダナかな…


「カンナちゃん」「タロー」と呼ばれた二人は、私と同年代の人だった。

「歳が近そうな子が入ってきたから」、と引き合わせてくれた会員さんがいうと、二人は礼儀正しく会話に加わってきた。


 二人とも、ザスイマーって感じ。

特に「カンナちゃん」と呼ばれた女の子は、身体がガッチリしていて…みるからに速いんだろうなって、感じの人。


 思い切って聞いてみた。

「わたし、バタフライ、泳げるようになりたいんです」

 4泳法の中で、唯一泳げないのがバタフライ。どうすれば進むのかすら分からないんだけど…

「この前、すっごくキレイな泳ぎ方する人お見かけして…わたしにも出来るかなって思っちゃったりしちゃって」

 憧れたんだよね、ストレッチみたいな、気持ちよさそうなバタフライだった。


 ダビデ像なお兄さん(早くも「ヤマトさん」って呼ばれてた)もまた、その人とは会ったことがあるみたいで。


「…自分も知ってるかもしれません…その方。若い方ですよね、この前、土曜日の夕方にずっと一人で泳いでいらした気がします」

 そうヤマトさんが話すと、カンナちゃんとタローさんは顔を見合わせた。


「ごんちゃん、だね」「ごんちゃん、っすね」

そして頷く。

「そのうち会えると思いますよ。」

 カンナちゃんが言った。

「来たら紹介しますね」

 やったっ!


 カンナちゃんは、このプールの中で「一番速い女の子」なんだそうで、

「カンナさんに逆らったら、このプール出入り禁止ッス」と、タローくんがおどけて言った。

「そんな人聞きの悪い…」

 カンナちゃんは、気にしてなそうに笑ったけど、確かに 見た目から納得の体格だった。

「カンナさんに逆らえるの、ごんちゃんだけッスよ」

 えーっ、怖い人なの??

「タローくん、ホント 有ること無いこと言わないでよ…」

 カンナちゃんは笑ってタローくんを叩く

「まあ、わたしも入会したとき ごんちゃんに初めて声を掛けられて、ここに馴染めたから。」

 …気さくな人なんだ…良かったあ


 あれから少しだけ別な話をして、「じゃあ、また いつでも声を掛けて下さいね」と二人は、それぞれ自主練を始めに泳ぎだした。


 わたし、やっぱり このジムだったら馴染めるかも

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